ディランの帽子
ボブ・ディランを最初に認識したのは忘れもしない。
大学生の時,「アイデン&ティティ」という映画を観たのがきっかけだ。
ゴーイングステディの峯田和伸,中村獅童がダブル主演。メジャーデビューを目の前にして,ロックの本質と売れ線との間を揺れ動くバンドマンの葛藤を描く,みうらじゅん原作の青春活劇。
この作品で主人公の前に時折姿を見せる怪しげな男が誰あろうボブ・ディランだった。無論本人出演ではないが。
しかし,作品の中でディランが主人公に語りかける言葉に力があるのだ。
「愛が全てだ。他には何もない。」
「できることをやるのさ。だからうまくいくのさ。」
本当にディランが語った言葉かどうかは不明だが,当時大学生だった私の中にもこれらの言葉ははっきり刻まれ,窮地に陥るたびに復唱して自分を鼓舞してきた。本当にディランが語った言葉かどうかなんて,もはや問題ではない。
結局主人公のバンドは空中分解するが,主人公は自分の言葉でロックを紡いでいくことを決意する。
そんな話だった記憶があるが,ラストに流れたディランの「ライク・ア・ローリングストーン」がもう衝撃で,すぐに同曲が収録されているアルバムを買いに走ったのを覚えている。
このジャケ写を見て,「ディランってお洒落なんやなー」と思ったのを記憶している。
そんなディランの若かりしき頃からのポートレートが,前回紹介した2014年4月の「ロッキンオン」に掲載されていた。
どこを切り取っても男前。同じ男として嫉妬を通り越して諦めの境地に達するくらい男前。
ディランって,公の場に姿を現す時にはたいてい帽子を被ってるけど,あれってディランクラスにならないと様にならないわな。
若手(もう若手ではないかも)では,リバティーンズのピーターあたりのハット姿はなかなか格好いい。着崩し方にセンスを感じる。
日本代表は野田洋次郎?
・・・なんか違う気がする。
そのスタイルとともに,時代の変化に囚われずシニカルな言葉を綴ってきたボブ・ディラン。
彼の音楽は一貫して,彼自身やリスナーに向けてこう問いかけている。
「How did it feel?」