Shine a Light
ここ数日,iTunesをシャッフルモードにして通勤中に聴いている。
私は大体アルバムを買ったらすぐにiTunesに入れて,2〜3週間リピートし続けるが,飽きてきたらシャッフルにする。
シャッフルにしていると,たまに引っかかる曲があって,久しぶりにそのアーティストを聴いてみようとなることが多い。
それで,数日iTunesのシャッフルでいろんなアーティストを聴き返す中で,なんだかじんわりと染みてくるな。。と改めて感じたのが,ローリング・ストーンズの楽曲群だ。
何だろうか,漠然とした安心感のようなものがそのサウンドにはある。今のモードにはちょうどマッチしたのだろう。
ストーンズといえば,先日,ドラムのチャーリー・ワッツが亡くなった。
チャーリーのイメージは,悪たればかりのバンドにあって,お洒落で穏やかで知的な紳士といったところか。
彼はバンドの創世期にはデザイナーを志していたらしく,有名なバンドアイコンのベロマークもチャーリーのデザインだとか。
ストーンズにまつわる思い出で忘れられないのは,2008年に公開されたドキュメンタリー映画「シャイン・ア・ライト」だ。
マーティン・スコセッシがメガホンを取り,アメリカはビーコンシアターで敢行されたライブの一部始終が収められている。
私は当時まだ20代で職場でも新人だった。
毎晩遅くまで残業で残っていたが,この映画が近くの映画館で封切られると聞いて,仕事後のレイトショーに駆けつけた。
そして,始まりから終わりまで圧倒された。
圧巻だった。
ミックの圧倒的な声量,運動量。
キースとロン,チャーリー,サポートのダリル・ジョーンズも含めたバンドが生み出す津波のようなグルーヴ。
キースがニヤリと笑みを浮かべ,煙草をくわえたまま観衆を指差す。
なんだこれ。
本当に全員60過ぎの爺さんなのか。
詐欺だろう。
格好良すぎる。
エンディングの「シャイン・ア・ライト」の音が消え,客電が点いてもしばらく立ち上がれなかった。
ようやく席を立ち,ふらふらと外に出ると冷え冷えとした空に吐息が白く浮かんだ。
映画館の出口横の自販機で缶コーヒーを買い,映画館脇に植えてあるプランターの横で一服していると,自然と涙が溢れてきた。
何の涙だったのが,今でも分からない。
今でも,ビーコンシアターで躍動するミックの姿が脳裏に焼き付いている。あのときミックは,シンプルな白のドレスシャツに,黒のタイトパンツといういでたちだった。
キースは,いつものバンダナ。
チャーリーは,きっちり撫でつけた髪に無地の黒Tシャツ。
ロンは,羽根のデザインがプリントされたロンT。
チャーリーの死に際して,あの日,ビーコンシアターでの四人の姿を思い出さずにはいられなかった。
一度でいいから,この目でローリング・ストーンズが演奏している姿を見たかった。
その夢は,残念ながらもう叶うことはない。
でも,ありがとう!チャーリー。