音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

「今年もあと少しだよ」

今週のお題「秋の歌」


「『今年もあと 少しだよ』と

 ほかに何か 言いたかったかい?」 

毎年,年末が近づいてきて,寒気が強くなってくると,この歌詞が沁みるようになる。


グレイプバインの「公園まで」。


飾り気のない歌詞だ。

グレイプバインも,お世辞にも華のあるバンドとは言えない。


でも沁みるんだこれが。


「ここにある全てに ただのラブソングを

 余計な言葉よりも 余計なラブソングを

 口ずさむよ」


歌詞だけ書き出しても,なんだか陳腐に見えるのだけども。


これに歌を乗せた,ボーカル田中和将の鼻にかかったような声で聴いてごらんなさい。

絶妙なメロディラインで慕情を掻き立てるアニキのギターで聴いてごらんなさい。


きっと,大切な人を思い浮かべて

もしくは,ほろ苦い思い出が蘇って


その場に立ち尽くすでしょう。


私はただただ,浸りたくなります。

夜道に,曇り空を見上げながら聴いたら気持ちよさそうな。

うん。

絶対気持ちいい。

この後電車降りたらやってみよう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


グレイプバインを聴き始めたのが中3の時だから,もう20年以上になる。

当時デビューしたてだった彼らのキャリアも既に20年を超えているのだから,私もアラフォーになるわけだ。


厚い曇り空の切間からわずかに差す一筋の光。


彼らの曲はそんなイメージ。

わかりやすいポップさはない。


重苦しかったり,少し毒があったり。

一筋縄ではいかない曲ばかりなのだけど,訴えかけてくるものは確かにある。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大学生の頃,失恋をした。

今振り返るとそんな大層なことではないのだけども,自分を支えているものが少ない頃だったから,ガタガタに崩れてしまった。


慰めてくれる友達もいたし,気を遣って飲みに付き合ってくれる奴もいた。


だけど不意に一人になりたくなって,真夜中のキャンパスに忍びこんで,一人ベンチに座り,ポータブルCDでグレイプバインのミニアルバム「Everyman,Everywhere」を何度も聴いた。

しみったれた失恋小僧にも優しく寄り添ってくれたグレイプバインの楽曲たち。


そんなこんなで彼らの楽曲には世話になりっぱなしだ。

直近の2作品「All the Light」(2019年),「新しい果実」(2021年)も掛け値無しに傑作だった。


変わらずにいいものを作り続ける彼らの真摯な姿勢には,いつも感動させられる。


また,気持ちよく浸れる曲を待っています。



ちなみに,電車を降りて,曇り空を眺めながら「公園まで」を聴いて帰る予定だったが,駅に降り立つと生憎の土砂降り。

傘は無し。

やむなく,全力疾走で自宅まで駆けることに。

浸るも何もそれどころではなかった。


まあいいや。


金曜日だし。


みなさんもよい週末を。