音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

僕の見たビートルズはテレビの中

洗濯機が壊れた。

 

脱水ができなくなった。

排水フィルターの汚れを取っても,排水ポンプと排水口の汚れを取っても水が抜けない。

 

購入して6年。

毎日2回ずつ,家族五人分の洗濯物を洗い続けてきたのでガタがきたか。

 

仕方がないので,早朝からコインランドリーに行くことに。

今朝に限って三男がおもらしをしていて,毛布とシーツが加わって,しかも脱水できてない状態なので相当な重さだ。

台車に洗濯物を山のように積み,車に押し込む。

つけたラジオからは聴き覚えのあるイントロが。

 

斉藤和義の「僕の見たビートルズはテレビの中」だ。

 

欲しいものなら 揃いすぎてる時代さ

僕は食うことに困ったことなどない

せまい部屋でも 住んじまえば都さ

テレビにビデオ,ステレオにギターもある

夜でも街は うっとうしいほどの人

石を投げれば 酔っ払いに当たる

おじさんは言う「あの頃はよかったな」

解る気はするけど タイムマシンはない


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思わずハンドルを握りながら口ずさんでしまった。

そして,「あの頃はよかったな」と言うおじさんに自分がなってしまってないかと振り返って,どきりとした。

 

特に,コロナ禍になって以来,

「また昔みたいに温泉に行きたい」

「飲みに行きたい」

「旅行に行きたい」

などとぼやくことが増えた。

 

自分でも意識しないうちに,コロナ以前に思いを馳せていたことに気付く。

しかし斉藤和義が歌っているように,「タイムマシンはない」のだ。

 

昔を振り返ることはいくらでもできる。

でも,今しかできないこともあるよね。。

と,息子たちを遊ばせながら思う。

 

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「おじさん」が言う「昔」が,「ビートルズが活躍していた頃」だとすると,私もまたビートルズはテレビの中でしか知らない。

 

余談だが,私が初めてビートルズに興味を持ったのは,2000年にビートルズのベスト「1」が発売されたタイミングだった。

 

THE BEATLES 1

THE BEATLES 1

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当時久米宏がキャスターを務めていた情報番組「ニュースステーション」で,「1」の発売に合わせて約2週間にわたってビートルズ特集が組まれたのだ。

そこで,収録曲のPVが毎日1曲ずつ紹介されていった。

 

高校生だった私は,その特集を毎日貪るように見た。

「I feel fine」のPVなんて今風にスタイリッシュに編集されていて,思わず唸ってしまった。

 

しかし一番衝撃的だったのは,「Get back」だ。

アップルレコードの屋上で突如敢行されたゲリラライブ。

ビートルズは65年から四年以上ライブをしていなかった。

そんな彼らが街中のビルの屋上で歌っているのだ。

PVには突然のビートルズ来襲に隣のビルや通りから屋上を指差して騒ぐ人々の姿も克明に映し出されている。

 

更に圧巻だったのはその演奏だ。

髭を伸ばしたポール・マッカートニーはマイクスタンドに噛み付かんばかりの迫力だ。

トレードマークの丸眼鏡に長髪のジョン・レノンはやや俯き加減に。

ジョージ・ハリスンは淡々と。

真っ赤なコートを羽織ったリンゴ・スターは,軽やかに正確なビートを刻む。

時期的には空中分解寸前のバンドの,渾身の演奏は確かに高校生だった私の心を打った。

 

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「僕の見たビートルズはテレビの中」。

 

このビートルズ原体験が,その後様々な洋楽アーティストへの興味につながり,毎年のようにフジロックに行くようになったことを考えると,より人生を豊かにしてくれたと断言してもよいと思う。

 

 

今を大切にするために。

今を精一杯生きていくために。

そんな「今」を積み重ねていくこと。

 

そんなシンプルな気持ちを思い起こさせてくれた一曲。

 

また新しい1週間が始まる。

できることを一つずつ,着実に正直に。

 

訳の解らない流行りに流されて

浮足立った奴等がこの街の主流

おじさんは言う「日本も変わったな…」

お互い棚の上に登りゃ 神様さ!

 

「僕の見たビートルズはテレビの中」斉藤和義