音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

ビートルズのファッション遍歴と音楽性の変化についての考察

 

リボルバー

リボルバー

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先日,ソファーの上に置きっぱなしにしていた「ロッキンオン」のディスクレビュー本を,長男が私のところへ持ってきた。

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そして,帯に出ているいくつかのジャケット写真のうち一つを指差して

「これ今日先生が聴かせてくれた。」

と言うので,どれどれと指差しているジャケ写を見てみると,ビートルズの「リボルバー」。

 

ビートルズが好き」と言う人は多いけど,「リボルバーが好き」と言う人は本当に好きなのだと思う。

ちなみに私も一番は「リボルバー」か「アビーロード」かでいつも迷います。

 

それにしても,教室で「リボルバー」をかける先生。

いいじゃないですか。

しかも相手は小学二年生ですよ。

素晴らしい情操教育をしていただき有難いです。

 

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このブログを開設してから2ヶ月が経過し,様々なアーティストを取り上げてきたが,ビートルズについて深く言及したことは実はまだ一度もない。

 

ビートルズは嫌いか?

いやいや。嫌いではないです。

むしろ,かなり好きです。

仕事休んでポール・マッカートニーの単独公演を観に行ったことがあるくらい好きです。

 そもそも,ビートルズが嫌いなロック好きには会ったことがない。


じゃあ,なぜこれまで取り上げてこなかったかと問われると,ビートルズに関しては語り尽くされているというのがある。

今更私が講釈を垂れる余地などない。

 

しかし,やはり避けては通れないというか,彼らについて語らないことには,何だか喉の奥に小骨がつっかえているような感覚もあって,今回取り上げることにした。

 

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テーマは,当ブログの基本コンセプトに則り,「ビートルズのファッション遍歴と音楽性の変化には関連があるのか?」だ。

 

ウィズ・ザ・ビートルズ

ウィズ・ザ・ビートルズ

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1963年にリリースされた「With the Beatles」だ。

彼らの活動期間は1960年代の8年弱と短いが,初期の作品と言えるだろう。

この頃,彼らはブライアン・エプスタインのプロデュースのもと,同じ髪型,揃いのスーツで活動を行っていた。

丸襟のシャツにタイトめのジャケットで演奏する姿は皆様になっている。

 

当時の曲を聴いてみると半分はカバー曲ではあるが,ポップさとバラードでの感情の込め方はさすがと言ったところで非凡さを感じさせる。

 

この頃のビートルズの面々はよく「似ている」と言われていたらしい。

確かにジョンなんて後年と比べると,ふっくらした印象だし,同じ格好していたら見分けがつかないという人がいても不思議はないだろう。

レノン・マッカートニーによる作曲も,まだ後年ほどジョンとポールの個性が色濃く出ているとは感じられない。

正直何度も聴き返したアルバムではないけど,いい曲も多いですよ。

「All My Loving」とか好きです。

 

 

 

Abbey Road -Box Set-

Abbey Road -Box Set-

  • アーティスト:Beatles
  • Universal
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後期を見てみましょう。

1969年リリースの「Abbey Road」。

 

ひと目で分かるのはまず,メンバーの服,髪型の変化。

ジョンは長髪に全身真っ白のスーツ。

リンゴは黒いタキシード。

ポールはネイビーのスーツに煙草をもってる。何故か裸足。

ジョージはデニムのセットアップ,立派な髭も蓄えている。

 

67年にプロデュースを手掛けていたブライアン・エプスタインが亡くなり,そこから少しずつメンバー間の溝が深まっていったと言うのが一般に言われる説だが,果たしてどうだったのだろうか。

 

4人もこの頃は30代前後の大人。

それぞれに主義主張があって,ファッションでも好みが別れてくるのはある意味当然と思うけど。

 

ただ,他の写真も見ていると,ジョンとジョージは結構お洒落に気を遣っている。

ポールとリンゴは,実はお洒落にはあまり関心がないのではと思うのだが実際のところはどうだろう。

 

音楽の方はというと,この時期の彼らには魔法がかかっている。

1965年の「ラバー・ソウル」から69年の「アビーロード」までは魔法がかかっているとしか思えない。

この期間にリリースされたアルバムの中でも特に「リボルバー」と「アビーロード」がすごい。

 

リボルバー」は「Taxman」の天才的なイントロから始まり,「And Your Bird Can Sing」などこの時期にしかない煌きの曲で聴かせ,最後に「Tomorro Never Knows」という圧倒的な名曲で締めくくる。

無慈悲なほどに格好いい。

 

アビーロード」は,前半,ジョンやジョージの名曲でじっくり聴かせる。

余談だが,ジョンの曲というのは非常に知的で味わい深いものが多いが,どこか不気味なところもある。

以前友人がジョンの曲を聴いて「幽霊が出そう」と評していたが,言い得て妙だと思った。

後半は,ポールのセンスが爆発する。

ポール・マッカートニーという人はポップセンスもだが,曲構成のセンスも本当に秀でていて,このアビーロード後半(B面)の短い曲をつないだメドレーの魔力はロック史上最強だと断言できる。

そして,聴けば聴くほどその魔力の虜になる。

この曲構成能力は,後のソロ活動にも生かされている(ウイングスの「Band On The Run 」の始まり方と終わり方など)が,後年のアーティストに与えた影響も大きい。

 

オアシスの「Be Here Now」でノエルが取り入れた,一度使った曲の一部をリプライズする手法や,最後に足音が消えてドアが閉まる音でエンディングの演出をする手法などは,ポールの影響を受けていると勝手に考えている。

Be Here Now

Be Here Now

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ノエル自身もビートルズからの影響は公言していますしね。

ちなみに,2000年代後半のオアシス後期には,サポートドラマーとして,ザック・スターキーが参加していた。

ザックは,リンゴの息子である。

パワフルなドラミングが売りのいいドラマーでした。

 

話が逸れたが,この「アビーロード」B面のメドレーが後世に与えた影響は図り知れないのではないか。

一般に知られるような有名な曲は一つも入っていないが,私はビートルズの魅力はこのメドレーに凝縮されているとさえ思っている。

 

逆に,この後(解散後)に出たアルバム「Let It Be」には,一般的に認知度が高い名曲(「Let It Be」「Get Back」など)が多く収録されているのだが,不思議なことに何度も聴く気にならない。

きっと,もう魔法が切れていたのだろう。

 

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以上の諸々の理由から,テーマ「ビートルズのファッション遍歴と音楽性の変化には関連があるのか?」に対する答えは「ある。多分。」ということにしておく。

 

インド音楽に傾倒したジョージのファッションと音楽性の変化は明らかだし(実は嫌いではないです),ジョンに関してもヨーコとの出会いに受けた影響が一番だろうが,よりソリッドになっていく歌詞と出で立ちは自意識の強烈な目覚めと言えそうだ。

 

変化を求めるメンバー同士のケミストリーが最大限,そしてギリギリ発揮されたのが69年の「アビーロード」だったのだろう。

そして,膨張し続けたケミストリーは,きっとそこで弾けてしまったのだ。

 

とまあ色々と書きましたが,ビートルズのことはすごく好きです。

 

ちなみに,ジョン派かポール派かと聞かれれば,完全に「ポール派」と答えます。

だってポップで聴きやすいんだもの。

いいですよ,ソロもウイングス時代も。

今度取り上げようてみようと思います。

 

ではでは。

良い休日を!