それでも私がCDを聴く理由
我が家には古いチボリのオーディオがある。
もう15年以上前のモデルだと思う。
CDの差し込み口には,長男や次男が小さい頃悪戯でキャラもののカードやシールを入れて遊んでいたので,今ではCDを取り出す時にすんなり出てきてくれない。
それ以外は特に問題なく,しっかりと音を出してくれている。
このチボリ,もともとは私の実家にあったものだ。
まだ20代前半,私の就職が決まった頃のこと。
実家を出て行く準備をしていて父母の部屋から偶然見つけたものだ。
このチボリオーディオは未開封の箱に入ったまま部屋の片隅に積まれていた。
当時父は輸入雑貨屋で働いていた。何度か私も見に行ったことがあるが,そのお店ではチボリオーディオが売られていたことを思い出し,きっとお店にあったものを引き取ってきたのだろうと思った私は,父にそのオーディオを譲ってくれないかと持ちかけた。
父も昔からオフコースやユーミンが好きでよく聴いていたが,CDの収集癖があるわけではなく,音響にも特段の執着があるほうではなかった。
部屋の隅で埃を被っている,さして使い途のなさそうなオーディオくらい,すんなり譲ってくれるとばかり思っていたが,意外にも頑として譲ってくれない。
仕方なくチボリは諦め,一人暮らし先には私がもともと使っていたアイワのステレオを持って行くことにした。
程なく私は一人暮らしを始めた。
狭い六畳一間ではあったが,仕事も覚えたてでそれなりに忙しくして充実した毎日を送っていた。
ある日母から実家から荷物を持って行きたいという旨の連絡が入った。
母から日時を言われたが,その日は別の用事があったので,勝手に開けて荷物置いていってもらえたら,ということを伝えた。
鍵は以前に渡していた。
父と母が荷物を置いていくと言っていた日になった。
私は用事が終わり,一人暮らしをしていたマンションに戻ると,部屋の真ん中に見覚えのある箱が積んである。
もしや・・と息を呑んで,恐る恐る近づくとそれはやはりあのチボリだった。
その日からチボリはいつも私の部屋にいる。
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CD棚も一人暮らしを始めたタイミングで買い求めた。
これは,ある家具屋でセミオーダーで購入した。
奥行きや色などを選ぶことができたし,棚の仕切りの高さも調整できた。
一番上の段は面出しスペースに使えたのもよかった。
ベルベッツの1stはレコードではなく「でかジャケ」のCDで(このシリーズはまだ続いてるのだろうか?),ほぼ観賞用。だいぶ色褪せた。
ストーン・ローゼズの今のところの最新作,「All for One」はレコード。
これ,タワレコのCDコーナーに普通に置いてあったので買ったのはいいが,開けてびっくり。
おかげでまだ聴くことができていない。
こちらもすっかり観賞用になってしまった。
このCD棚も全部で300枚は収納ができるキャパがあったが,もう何年も前にキャパオーバーし,今は上に積んだり,無印の壁掛けCD棚シリーズを買い足して凌いでいるが,何とかしないといけないだろう。
妻には「部屋の景観に合わないからリビングから移して」と度々言われるが,オーディオのない部屋に移すのは忍びなくて,おかげで今ではリビングの隅に申し訳なさそうに佇んでいる。
結構な買い物だったんだけどな。
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定額いくら払えば月何曲でも聴くことができるし,YouTubeでは手軽に好きなミュージシャンの楽曲を聴いたり動画を観たりできるし,本当に便利な世の中になったと思う。
実際,私の音楽好きの友人も定額サービスを利用しているようで,何度か勧められもした。
でも何故だろう。
あまり,そうやって音楽を聴こうという気が起こらない。
何故か,と考えてみた時に,自分は音楽体験を大切にしたいのだろうと思った。
要は,音さえ聴ければそれでいいとは思っていないのだ。
CD屋に行って試聴してみる(タワレコの試聴機,物凄く音がいいですね。何度か「これは」と思い,買って家で聴いてみると「あれ?なんか違う。。」となったことも)。
CDを買って,ジャケットや歌詞カード,ライナーノーツを眺める。
オーディオにCDを入れて聴いてみる。
初めてCDをジャケから取り出す時の「パキッ」という乾いた音が好きです。
この一連の行動そのものが音楽体験になっていて,私の中で「音楽を買う」というのはそういうことなのだ。
そのアーティストが動いて歌っているところを観たいと思えば,ライブを観に行く。
その行動も,上の音楽体験の延長線上にある。
これ,読み返してみたら凄い頑固爺いみたいになってますね。
でも,私より少し上の世代が,レコードを盤で聴いている姿にも憧れるんです。
レコードの音質はCDが出せない周波数まで出しているというのも聞いたことがあります。
いつかはレコード収集してみたいです。
とまあ散々古き良きを気取りながら,私自身も皆さんが紹介していただく動画でちゃっかり楽しませてもらっていますので。
今後ともよろしくお願い致します。