「バンド・オン・ザ・ラン」よ永遠に
昔の「ロッキング・オン」をめくっていたら,ウイングスの記事が出ていた。
「バンド・オン・ザ・ラン」の頃だから,40年以上前のポール,リンダ,デニーのポートレイトだ。
先日の記事で,「ポールはあんまりファッションに興味がなさそう」とか失礼なことを書いてしまったが,この時代のポールのファッションは結構いかしてる。
ごめん・・・ポール。
ポール率いるウイングスの「バンド・オン・ザ・ラン」は思い出深い作品だ。
私はこのアルバムのスタートを告げる表題曲「バンド・オン・ザ・ラン」が好きで,何度も聴いて空でも口ずさめるくらいだった。
この曲,一曲の中で組曲形式の三部構成になっている。
曲調の変化は激しいが,不思議と統一感がある。
スコーンと抜けていくような清々しさがあって,組曲形式なのに5分そこそこでさっと終わり,すぐさま名曲「ジェット」のイントロが入る…。
完璧な流れだ。
さらに,胸に沁みる「ブルーバード」,そしてクライマックス感のある「西暦1985年」で大円団を迎え,最後に「バンド・オン・ザ・ラン」のリプライズが入るという周到さ!
ここで本編終了。おそらくポールのイメージはそう。
最後にアンコールの2曲(「ヘレン・ウィールス」「カントリー、ドリーマー」)で口直しをして,さりげなく終わるのもお洒落だ。
ポールの遊び心にあふれた秀逸な作品。
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ところで冒頭でも書いた通り,「バンド・オン・ザ・ラン」が好きだった私は,この曲を自分の結婚式のオープニングにした。
結婚式の曲と映像の構成は全て任せてもらえたので,スライドも全て音楽とピタリ合うよう編集した。
かなり時間をかけただけあって,クオリティーの高さには自信があった。
ところが結婚式当日,出席してくれた上司のTさんは,何だかプリプリしている。
「何考えてんだよ,sisoaくん。あれは脱獄の歌だぜ!」
どうも私がオープニングでかけた「バンド・オン・ザ・ラン」が気に食わないらしい。
ちなみにTさんは,ポールの単独公演のチケットを取ってくれた生粋のビートルマニアだ。
「バンド・オン・ザ・ラン」が脱獄をテーマにした曲だということは知っていたが,そこまで歌詞を深く読んだことはなかった。
私はただ,あの曲の盛り上がりと抜け感が好きだったのだ。
後で歌詞を見てみたらこんなだった。
俺たちバンドは逃げる
俺達バンドは逃げ回る
看守や船乗りサムは
脱獄した俺達バンドを
探しまくってんだ
俺達バンドは逃げる
俺達バンドは逃げ回る
俺達バンドは指名手配中
一体,私は何から逃げようとしていたのだろうか。
これだけならまだ良かったのだが,もう一つオチがついてきた。
退場時のBGMはボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」にしていたのだ。
歌詞はこんなだ。
どんな気持ちなんだい?
どんな気持ちなんだい?
家が無いというのは?
誰にも見向きもされなくなったというのは?
まるで転がる石ころのようになったというのは?
一体,私はどんな結婚生活を夢見ていたのだろうか。
家なき子にでもなるつもりだったのか。
幸い,今のところ家もあるし牢屋にも入っていません。
それにしても,普段は歌詞とか全然気にしないで音楽を聴いているけど(特に洋楽は),人の祝い事で曲を使う時なんかは気にしないと,大変なことになりますね。
でも,洋楽の歌詞というのは,読んでしまうと曲のイメージが損なわれることもままあるので,やっぱりこれからもあんまり気にしないのかなあと思います。
何はともあれ,「バンド・オン・ザ・ラン」。
いいアルバムですよ。
それでは,よい週末を!