「NANA」に憧れた男
先週日曜の「サザエさん」を観られただろうか。
最近のサザエさんは,結構時代に即したテーマが多くて,わりに楽しめる。
先週の場合は,「少女漫画なんて恥ずかしくて読めない」という価値観を持っていたカツオが,花沢さんらと少女漫画の話題に興じる級友の中島らの姿を通して,自身の価値観を問い直していくという,多様性を意識した内容だった。
結局はカツオも,ワカメが購読している少女漫画の熱心な読者になる。
この話を観ながら,自身のことを振り返らずにはいられなかった。
私にも妹がいるので,昔はよく家に置いてあった「りぼん」を読んだものだった。
おかげで今でも同世代の女子と,吉住渉先生や椎名あゆみ先生らの代表作に関する話題で盛り上がれる。
吉住先生も椎名先生の作品も素晴らしいが,当時抜群のカリスマ性を誇っていたのが,矢沢あい先生だ。
彼女の絵はとにかく情景描写がきれい。
たまに「写真ですか?」と聞きたくなるくらい緻密な風景画が現れて,これどうやって描いてるんだろうといつも驚愕していた。
そして,お洒落。
「ご近所物語」なんて登場人物皆お洒落過ぎて子ども心にわくわくしながらページを捲っていた。
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矢沢あい先生の作品の中でも,社会的な影響力が大きかったのが「NANA」だろう。
ストーリー概要についての話はもろもろのサイトに載っているので割愛するが,「ナナ」という同じ名をもつ女の子二人とブラスト(ブラックストーンズ),トラネス(トラップ・ネスト)という二つのバンドをめぐる物語。
いやー,しかし。
喫煙率高いですね。
煙草はいかんという世の風潮も分からんでもないけど
単純に格好いいなと大人になった今でも思うのだけど。
どんな話だったかなと調べてみたけど,記憶よりなんかドロドロしていて,若干引いてしまいました。
ストーリーの中で強烈に記憶しているのが,とある雪の夜,ライブがはねた後にナナが恋人のレンとバンドのメンバーと外を歩いてる場面。
「カッコつけてても寒いもんは寒いんだ!」
と叫ぶレン。
それもそのはず,レンはセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスに憧れていたから,いつも黒のライダースに下はタンクトップ一枚という格好。
雪が降る日だって同じ。
そんなレンに,ナナはファンからもらった長いマフラーを一緒に巻きつけ,笑い合う二人…というエモいシーンでした。
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少年だった私にはその日から,「ライダースの下はタンクトップ一枚が格好いい」という間違えた概念が刷り込まれてしまい,
「大人になったら絶対ライダースが似合う男になる!」
と誓ったのである。
強い思いは現実化する。
その後,社会人になった私は,某有名セレクトショップで憧れのライダースを購入した。
結構いい値段だった。
初任給の四分の一は食ったのではなかろうか。
ちなみに言わずもがなだが,私はバイクには乗らない。
ライダースの下は勿論,Millerのタンクトップ。
今振り返ればアホじゃないかと思うコーディネートだが,その頃は格好いいと固く信じて疑わなかった。
「お洒落は我慢」
と語ったと言われる神田うの氏の言葉を何度も復唱しながら,寒い冬も下はタンクトップ一枚だった。
ライダースが似合う男になれたかは分からないが,痛い男になれたことは確かだ。
アナーキー・イン・UK。
尖ってたなあ。
ちなみに,このとき買ったライダースは結構品がよかったので,今でもたまに着用する。
勿論,下はタンクトップ一枚ではない。
タートルネックセーター,シャツにカーディガン。
黒に肩部分だけが革素材なのでわりに汎用性が高い。
だいぶくたりましたね。
ところで。
シドに憧れたレンのコーディネートに憧れてライダースの下にタンクトップを着て青春を謳歌した私ですが,実はピストルズはそんなに聴きません。
むしろ,同世代ではクラッシュのほうが好みです。
だって「No Future」だなんて,刹那的過ぎて辛い。
持続可能な未来を目指して,もがきながら走り切ったジョー・ストラマーに憧れます。
格好悪くてもださくても,前を向こう!
最後はSMAPの歌みたいになりましたが,今年ももうひと頑張り!
それではまた。