音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

人は理由もなく再訪などしない~レッチリ帰還に寄せて~

レッチリが還ってくる!

 

rockinon.com

 

2019年にレッド・ホット・チリ・ペッパーズへの復帰が発表されていたジョン・フルシアンテが合流後,初のアルバムリリースが発表された。

 

「Unlimited Love(無限の愛)」というタイトルがつけられた最新アルバムは,2022年4月1日にリリースが決定!

 

同時に配信された新曲「Black Summer」を聴いてみた。


www.youtube.com

 

不思議なもので,バンドが完全に「ジョン・フルシアンテのいるレッチリモード」になっている。

 

アンソニー・キーディスの肉体性,バンド全体のサウンドを包み込むような歌声。

 

クレバーなギターソロに,十八番のコーラスで暴れまわるフルシアンテ。

 

フリーのベースはそこまで前面に出てこないが,チャドのドラムと共にメロディアスなレッチリサウンドを支える。

 

懐かしい感覚だ。

私がまだ大学に入りたての頃,「カリフォルニケイション」「バイ・ザ・ウェイ」を初めて聴いた頃の感じを思い出した。

 

私にとって,その頃のレッチリは,豊饒な海のような存在だった。

喜びも,切なさも,痛みすら包んでくれる海のような。


当時のレッチリは,薬物依存でバンドを脱退していたジョン・フルシアンテが復帰した直後。


彼らはそこに至るまでにも,前途多難なバンドヒストリーを歩んできていた。


鳴かず飛ばずだったデビュー後の期間。


当時のバンドの中心だったギタリスト・ヒレルとの死別。


ジョン・フルシアンテの加入と,アルバム「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」での世界的ブレイク。


ジョンの,薬物依存によるバンド離脱。


オルタナバンド,ジェーンズ・アディクションのデイヴ・ナヴァロを新ギタリストとして迎え入れるも,バンドとシンクロせず,約2年で脱退。


このような紆余曲折を経て,ジョン・フルシアンテが復帰した後リリースされたのが,名作「カリフォルニケイション」だった。


仲間の死,別れ。

そして再会。


喜びも哀しみも全て呑み込んで,再び四人で歩み始めたというレッチリのストーリーと彼らの奔放で慈しみ深いサウンドに,学生だった私は魅せられた。


「カリフォルニケイション」はバンド史上最高の売り上げを記録したアルバムであり,私にとってもレッチリを聴くきっかけとなった思い出深いアルバムだ。


以後,ジョンが在籍した10年間は,レッチリが最もバンドとして安定していた時期であり,私が初めてのフジロックで彼らを目撃したのもこの時期のことだ。


 その時のエピソードについては,過去記事に詳しい。

sisoa.hatenablog.com

 

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ところが,フジロックで怪演を見せた3年後の2009年。

突然,ジョンの脱退が発表された。

理由は「自身の音楽を探求したい」ということだったし,他のメンバーも彼の意志を尊重しているというので一応は納得したものの,後発ファンである私にとってフルシアンテはオリジナルメンバーのようなもの。

一抹の寂しさはやはり残った。


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ジョンの穴は若きギタリスト,ジョシュ・クリングホッパーが埋めた。


彼が在籍した期間,レッチリは2枚のアルバムをリリースしているが,どちらも愛すべき作品だ。


ジョシュのプレイは良くも悪くもクセがなく,バンドサウンドにはすんなり馴染んでいるようにも聴こえた。



ただ,2016年のフジロックで10年ぶりにレッチリのステージを観た時には,「あれ?」と感じたのは覚えている。


ジョシュのプレイがどうとかではないが,アンソニーの歌声にいつもの伸びやかさが感じられない。


最初に感じた違和感は最後まで拭えなかった。


「なんか噛み合ってないな。」


というのが正直な感想だった。


直近の「ザ・ゲッタウェイ」がとても完成度の高いアルバムだっただけに,残念だった。


2016年フジロックの大トリだったレッチリ

その年は,今のところ私が参戦した最後のフジロックとなっている。


そんなエピソードがあったので,何だかフジロックに忘れ物をしてきたような心境になっていた。


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人は理由もなく再訪などしない。


このタイトルは,昔何かの雑誌(多分「ロッキング・オン」)のディスクレビューで見かけて印象に残っていた言葉だ。


いつかブログ記事のタイトルに使おうと思っていたが,今回レッチリがフルシアンテ再復帰後に6年ぶりのアルバムをリリースするというニュースに接し,このタイミングしかないと思い,使わせていただくことにした。


コロナによって世界が変わってしまった今だからこそ,彼らがシーンに戻ってくる意味がある。

フルシアンテが復帰し,レッチリは還るべき場所に還ってきた。


アンソニー,フリー,チャド,そしてジョン。

この四人でのレッチリの未来が開けているという事実。

それだけで勇気をもらえる。



人は理由もなく再訪などしない。


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追記。


同時に2022年の世界ツアーも発表された。

なんと。


なんと!


サポートアクトが,ザ・ストロークス


凄いな世界一の前座だぞ。


それにしても,レッチリの前とはいえよくサポートアクトなんて呑んだな,ジュリアン。


日本にも来てほしいけど,今のところは日程に入っていません。


何はともあれ,新作は4月1日。

震えて待ちます!