同じ時代を生きた仲間たちへ~「音楽と服」の観点から~
私事だが,今年に入ってからテレビを買い替えた。
前使っていたのがビクターの液晶で,妻が独身時代から所有していたものだった。
買った当時かなり高額だったそうで ,画面もまあまあ大きかったので,15年ほど使い続けたが,三人の息子たちがそれぞれ1歳前後の頃に食べ物やらいろいろ付いた手でペタペタやったものだから,画面上は手垢でいっぱいになってしまっていた。
そろそろ買い替えるかという話になり,電器屋へ行ってソニーのプラズマに買い替えることにした。
そして今回は壁掛けにした。
三男はまだ1歳で,ペタペタしたがるので,壁掛けなら届かないだろうと目論んだのだ。
しかし,実際に壁に掛けてみると,1歳の三男でも余裕で手の届く高さであった。。
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ということで,当初の目論見からは少し外れてしまったが,新しいテレビはなかなか良い。
何が良いかと言うと,まず当たり前だが画質と音が良い。
テレビが来た日に試しに,プライムビデオでPerfumeのライブを観てみたら,その映像の美しさと音の明瞭さ(それと相も変わらず「ポリリズム」の素晴らしさ)に感動してしまった。
そして,プライムビデオやYouTubeなど様々な映像コンテンツを視聴できるということ。
これは,我々大人にとってよりも,むしろ息子たちにとって喜ばしい機能のようだ。
好きなアニメを観たい時に観れるのだから(勿論時間制限した上でのことだけど)。
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プライムビデオにはかなりの量の映画やドラマ,アニメが収録されている。
先日休みの日に,どんな作品があるのかとチャンネルをいじっていると,ふと目が留まった。
「SUNNY強い気持ち強い愛」。
なんか聞いたことがある。
数年前に妻が観たいと話していた映画ではないだろうか。
90年代のヒットチューン満載でお届けする…みたいな宣伝をしていたような。
結局当時は観に行く暇なんてなく,そのまますっかり記憶の底に沈んでいた。
ひょんなことから,数年前の記憶が蘇り,少し観てみようという気持ちになった。
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予め言っておくと,この記事は映画「SUNNY」のレビューではない。
勿論,所々に映画の内容について感じた独り言のようなことは出てくる。
しかし基本的には,この映画のコンセプトを触媒にして「世代とカルチャー」に言及した記事だと思ってもらえたらいい。
なんだか難しそうですね。
シンプルに言えば,タイトル通り「同じ時代を生きた仲間たちへ」ということです。
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さて,「SUNNY強い気持ち強い愛」だ。
ストーリーは,高校生の娘をもつナミ(篠原涼子)が,ひょんなことから高校時代の旧友と再会するところから始まる。
その旧友が末期癌で余命1ヶ月宣告を受けており,死ぬ前に高校時代の仲良しグループ「SUNNY」のメンバーで集まりたい…という希望をぽつりと漏らす。
そこから,ナミは当時の記憶を探りながら,もと「SUNNY」のメンバーを探していくという話。
ナミがメンバー探しを始めたところで,場面は90年代のナミが通っていた高校の風景に切り替わる。
そこには,浅黒い肌にピアス,短いスカートにルーズソックスを履いた女子高生たちが登場する。
彼女たちが,久保田利伸のヒット曲「ラ・ラ・ラ・ラブソング」に合わせて踊るのだ!
しかも,踊っている子の半数ほどは,肩からショップバッグをかけていた。
このショップバッグを見た時には思わず唸ってしまった。
当時は現在のようなファストファッション文化は皆無に近かったので,私ら中高生も含めた若者たちは,ブランド志向が強かった。
アバハウス,トランスコンチネンツ・・・。
友人と数人で街へ繰り出し,ビームスなどのセレクトショップで買い物をすると,品物をショップバッグに入れてくれていた。
このショップバッグが欲しかったのだ。
これに部活の着替えなどを入れ,肩に掛けて学校に背負っていく。
田舎の高校生だ。
ショップバッグを持っているということは,
「街で買い物をした」
という証明になる。
今から考えれば取るに足らないことだけど,当時の私たちにしてみれば,それこそが「ステータス」だったのだ。
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そんな回想をしながら「SUNNY」のひと場面を観ていた。
もう一つ印象的だった場面がある。
それは,広瀬すず扮する高校時代のナミが,憧れの先輩(三浦春馬)の後を追って,クラブに紛れ込んだ場面のことだ。
この場面で,ナミは飲んだことのないビールに口をつけて吐き出した後気持ち悪くなり,おろおろと盛り場を彷徨っていたところで,突然後ろからヘッドホンを被せられる。
被せたのは勿論先輩(三浦春馬)。
その瞬間周囲の喧騒が消えて一瞬の静寂があり,ヘッドホンの音楽が流れ出す。
曲は,「やさしい気持ち」(CHARA)。
というアラフォーは漏れ無く叫んでしまうであろう場面設定。
これは,はっきり言って反則だ。
CHARAのこの曲は,90年代のポップシーンを象徴するような曲なのだ。
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「カルチャー」という言葉のもつ一つの意味は,
「人間がその精神的な働きによって生み出した,思想・科学・宗教・芸術などの成果」ということらしい。
流行によって生み出された,時代を象徴するような音楽や服などは,ポップカルチャーとして,誰が過ごした時代にも存在するのではないだろうか。
何年も聴いてなくても,久しぶりに聴けば当時の心象風景を思い出すというのはよくあることだ。
私が先程久保田利伸やCHARAの曲のくだりで書いたような感覚や時代の空気感は,同世代の方なら「分かる」と頷いてもらえるはずだ。
では,同世代でなかったら全く響かないかと言えば,そういうわけではない。
私が購読させてもらっているブロガーさんたちの中には,年配の方もおそらく一回り以上年齢が離れた若い方もおられる。
私はこの方たちが紹介してくださるそれぞれの世代の音楽を聴くのがとても好きだ。
おかげで,堂々としていてクライマックス感に溢れるアリスの音楽の魅力を知ったし,w.o.dのソリッドな演奏の魅力も発見することができた。
自分世代の音楽ばかり聴いていたら出会えなかったであろう楽曲ばかりだ。
そういう意味で音楽は,世代と世代をつないでくれる一つのコミュニケーションツールとも言えるかも知れない。
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たった一つの映画をきっかけに,思いがけないところに話が飛んでしまったが,「SUNNY強い気持ち強い愛」はなかなかいい映画でした。
懐かしさも勿論ですが,昔の友達に会いたくなりました。
同じ時代に生きた仲間たちに。
会いたい時に会っておかねばな。と思います。
それでは。