再現不可能な煌めきは,確かに存在する。
朝から動画編集をやっていた。
勿論仕事として。
オープニングBGMを探してて,今回はMr.BIGを使うことにした。
「Lean into it」から「Green-Tinted Sixties Mind」。
懐かしい。
これは高校時代によく聴いていた曲だ。
高校時代には,ボン・ジョヴィやMr.BIG,あとグリーンデイを愛聴していた。
ロックへの入り口は大抵そこらへんのポップでパンキッシュなところから入る人が多いのではないだろうか。
少なくとも私の高校時代はそうだった。
メロコアがブームで,ハイスタ(Hi-Standard)やモンパチ(MONGOL800)は音楽好きなら誰もが一度は通ったはずだ。
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そうやって朝から高校時代の愛聴盤を懐かしんでいるところに,ブログの購読欄をチェックしていると,Kataruさんの記事(※1)に目が留まった。
Kataruさんは毎朝記事を更新されていて,お気に入りのバンドやアーティストの紹介についての記事が中心のブログだ。
とてもシンプルで読みやすく,毎回何らかの気づきを与えてもらえる。
今朝の記事は,バンドメンバーが変化しても歩みを止めないバンドについての記事だった。
この記事を読みながら,バンドメンバーを脱退などで失っても,残ったメンバーで活動を存続させるバンドもあれば,解散の道を選ぶバンドもあるなあ…ということをボンヤリ考えていた。
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GRAPEVINEはメジャーデビューして3年後に,当時のバンドリーダーが持病を悪化させて脱退してしまったが,その後も3人(+固定化されたサポートメンバー)で活動を続け,現在も名盤をつくり続けている。
一方,同じ時期に解散の道を選んだバンドとしてはJUDY AND MARYがいる。
バンドとして絶頂期にあった2001年,リーダーだったベーシスト恩田快人の脱退をきっかけに解散を発表した。
私は当時高校生だったが,彼らが解散発表後にリリースしたオリジナルラストアルバム「WARP」を聴いて,遅まきながら彼らのファンになった。
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JUDY AND MARYといえば,「そばかす」や「Over Drive」が有名で,90年代後半には音楽ファンでなくともその名は知れ渡り,ボーカルのYUKIは当時の女子中高生のファッションアイコンだった。
彼らに最も勢いがあったのは「そばかす」がリリースされた96年前後だと思う。
私はその頃は小学校高学年くらいだったが,その頃彼らの音楽を聴いても特に何とも感じなかった。
高校生になって最初の体育祭の時に,先輩たちが踊るフォークダンスの演目があり,その時の曲がJUDY AND MARYの「ハロー!オレンジサンシャイン」だった。
「へえ,ジュディマリってこんな曲もあるんだ。」
と意外に思ったことを覚えている。
「Over Drive」などの疾走感のある曲のイメージが強かったけど,この曲のようにキャッチーなメロディーは嫌いじゃなかった。
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私がようやくJUDY AND MARYに興味を持ち始めたころ,彼らの解散が発表された。
既にシングルとしてリリースされていた「Brand new wave upper ground」がとんでもない名曲であることに気づいていた(CDTVでチェックしていたので)私は,解散の報に接した後リリースされた最後のオリジナルアルバム「WARP」を迷わず購入した。
この「WARP」。
それまでの「JUDY AND MARY」像を完全に打ち砕かれたアルバムとなった。
ポップなのにサイケデリック。
タイトルのように,まるでワープしているような感覚になる。
とても失礼な言い方だけど,私はこの時初めて,彼らがこんなにクールな作品をつくるバンドだと知ったのだ。
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解散ツアーは全国のドームクラスの会場を回る大規模なものだった。
私もチケットを取りたかったが,当時人気絶頂の国民的バンドの解散ツアーだ。
ファンクラブにも入っていないファンには到底手の届かないプラチナチケットだった。
ただ,解散ツアーから数か月後,NHKで彼らのラストライブの様子がドキュメントで放送されたのだ。
私はその放送を録画して,しばらくの間何度も繰り返し観た。
このライブが本当に素晴らしかった。
YUKIも,TAKUYAも,恩ちゃんも,公太さんも全て出し切っていた。
最後の「Over Drive」のイントロで,TAKUYAが金髪を振り乱しながらギターをかき鳴らすシーンは,今観ても震える。
動画探したらありました↓。
このライブで彼らが見せてくれた輝きは,唯一無二と言ってよいものだった。
もう20年以上前のライブだが,まだ私はこの時の彼ら以上の輝きを放つアーティストには出会えていない。
このラストツアーを終えた後,TAKUYAがインタビューの中で
「これが人生で最高の瞬間だったとは思いたくない。」
と語っていたけど,もうTAKUYAの人生云々ではなく,ロック史を見渡してもこれ以上の場面なんて,そうそう出会えないだろう。
それくらい圧倒的なステージだったし,培ってきたスキルとメンバーそれぞれの思いが最高沸点で嚙み合った,この時の彼らにしかできないライブだったのだろうな,と今となっては思う。
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今週のお題は「復活してほしいもの」だったと思う。
天邪鬼かもしれないけれど,私はJUDY AND MARYに復活してほしいとは思っていない。
「WARP」というアルバムを聴いていた頃の記憶であったり,ラストライブで彼らが見せてくれた最後の煌めきは,いつまでも胸の中にしまっておきたいから。
そして再結成ライブを散々期待した挙句,その期待を無残にも砕かれた経験(※2)があるからというのも否定はできない。
とは言いつつも,万一(ないだろうけど)彼らの再結成が発表されようものなら,諸手を挙げて祝福するんでしょうけどね,きっと。
※1 Kataruさんの記事
【つぶやき】バンドの歩みに想いをはせる / 曲:cune カノン(2003) - 語る、また語る
※2 フジロック2012でのTHE STONE ROSES