音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

ベスト盤は好きですか?

私は正直,あまり好きではない。

ベスト盤のことである。

 

じゃあなんでわざわざ記事にしたのか。

理由がある。

 

昨日,仕事が休みだったので,三男を保育園に,妻と次男を病院に送った帰りに例のCD屋に立ち寄っていつも通り物色していた。

 

sisoa.hatenablog.com

そこで,キリンジのベスト盤を見つけてしまった。

私は迷った。

ベスト盤はあまり好きではない。

 

それは,私自身がアルバムに物語性や,何らかのテーマで貫いたコンセプチュアルなものを求めていることに影響している。

 

だからオリジナルアルバムが好きだ。

その時期にアーティストが影響を受けていたこととか,考えていたことなどが音になって表現されるのを聴くのが楽しい。

 

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例えばビートルズを例にとると分かりやすい。

私が初めてビートルズに触れたのは,高校生の時にリリースされたベスト盤「1」によってだった。

この「1」はビートルズがリリースしてきたシングルで全米・全英で1位を獲得した曲ばかりを集めたアルバムだ。

「Get Back」や「Let it be」など誰もが知る名曲も当然入っていて,夢中になって聴いた覚えがある。

 

しかし,後年ビートルズが発表しているオリジナルアルバムを買い揃えていったとき,ベスト盤を聴いた時と全く印象が異なるバンドであることが分かった。

 

ポップでキャッチーなバンドのイメージが強かったベスト盤に対し,特にライブ活動を辞めた66年以降のビートルズは,風貌もそうだが音楽性も大きく変化している。

実験的で革新的で,アバンギャルドで尖っていて,それなのにポップで・・・。

 

リボルバー」に漂うサイケ感(特に「Tomorrow Never Knows」の逆回転再生は圧巻)。

「サージェント・ペッパーズ」の寓話性。

アビイ・ロード」B面メドレーの遊び心。

 

一枚ごとに表情を変え,高次元のケミストリーを生み出し続けたビートルズのオリジナルアルバムを聴かずには死ねない,と個人的には思う。

 

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横道にそれた。

 

それで,ベスト盤はあんまり好きではないのだけど,結論から言うと私はキリンジのベスト盤を買ってしまった。

そして,これがまたよかったのだ。

 

きっと,センスの問題なのでしょうね。

ベスト盤というとどうしても統一感に欠けるものが多いけど,これは聴いていてとてもスリリングでした。

 

ベスト盤っていうのは難しいと思う。

私はハンドルネームに使うくらいオアシスが好きだが,彼らが出した2枚のベスト盤は好きになれない。

 

最初のベスト盤である「ストップ・ザ・クロックス」はベストというより,選者のノエルが気に入っていた曲群というイメージが強く,かなり癖のある選曲になっている。

2枚目のベスト盤「Time Flies…1994-2009」は曲が多すぎて統一感がない。

 

やはりオアシスの本質は「ディフィニトリー・メイビー」の中にあると思うし,彼らの鳴らすロックを本当に楽しみたいと思うなら「モーニング・グローリー」を聴くべきだ。

 

その一方で,「これは素晴らしい」と心からお薦めできるベスト盤も確かに存在する。

今回はそれを紹介したいと思います。

 

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まず一枚目は,ブラーの「the best of」。

The Best of Blur

The Best of Blur

  • アーティスト:Blur
  • Emi
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ブラーというのは,キャリアの中で音楽性が大きく変化していったバンドなのだが,初期の皮肉交じりの曲(「Parklife」)や,アメリカを意識した「song2」などのハードロック,愛について歌った名曲「Tender」など多種多様な曲が,奇跡的なバランスで共存している。

 

ブラーだけは,まだ生でお目にかかれていない。

デーモンのソロは一度観ることができたけど。

 

フジロックで「Tender」が聴けたら,本当に涙が出るだろうなあ,と思います。


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2枚目は,モービーの「Go~the very best of Moby~」。

モービーに関してはあまり詳しくないし,正直このベスト盤で満足してしまって,他のアルバムには手を出していないのが現状。

逆に言えば,一枚で満足できる,それくらい秀逸なアルバムだということです。

 

何がいいって,アルバム全体にいい意味での緊張感がある。

冒頭2曲でパリッとした雰囲気を漂わせておいて,3曲目には静謐なピアノの旋律とささやくようなモービーのボーカルが美しい響きをもたらす「Porcelain」を投入するセンス。

 

特にコーラスの使い方とか,芸術性が高め。

初期のプライマル・スクリーム(「スクリーマデリカ」「Give out but Don't give up」あたり)を彷彿させる世界観。


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3枚目は,アンダーワールドの「1992-2002」。

文字通り,アンダーワールドの1992年から2002年までの代表曲を集めたベスト盤。

2枚組になっている。

アンダーワールドと言えば,「トレイン・スポッティング」で使われた「ボーン・スリッピー」のイメージが強いと思うが,それだけでない強固な名曲の数々が脇を固めている。

 

ラストを飾る「Two month off」なんか絶妙なクライマックス感を発揮している。

 

繰り返される規則的なビートの裏から微かに聴こえ,徐々に存在感を増してくる新たなビート。

そこに乗せられる,カール・ハイドのボーカル。

 

いやあ,クールです。


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こうして好きなベスト盤を並べてみると,やはり構成能力というか編集力というか,そういう能力に秀でてる人たちなのだろうなあ,という気がする。

 

そういう意味では,星野源あたりもベスト盤つくるのが上手そう。

何となくだけど。

 

皆さんはどんなベスト盤が好きですか?