音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

音楽業界のこれからについて勝手に想像してみた

先日,夕方カーラジオを聴きながら帰宅していると,パーソナリティーが音楽業界の今後について,私見を述べていた。

 

「僕は最終的には音楽ってライブという形態だけが残ると思うんですよね。最終的にはですよ。」

 

ミュージシャンでもあるそのパーソナリティーは「あくまで個人的に」と前置きをしたうえで,そう語っていた。

 

ハンドルを握りつつ,それを聴いていた私は思わず「本当かよ」と,呟いていた。

 

世はサブスク全盛。

 

音楽配信によって「音楽を聴く」という行為の敷居は下がり,多くの人がスマホやPCでも気軽に音楽に触れているではないか。

 

・・・まあ,私はいまだにサブスクを試したことがなく,CD一辺倒でラジオを愛するアナログ人間なのだけど。

 

ライブという形態だけが残るっているのは,つまり大昔に戻るっていうこと?

 

と,いろいろと「?」が残る「私見」だったのだが,そのパーソナリティーの「私見」を裏付けるような記事が数日後の読売新聞に出ていたのだ。

 

以下のような内容の記事だ。

 

この25年間,音楽市場はCD中心からライブ中心へと大きく様相を変えた。日本レコード協会によると,国内のCDなど音楽ソフト生産額は1998年の6075億円をピークに下落に転じ2019年に2291億円に落ち込み,音楽配信も706億円にとどまる。一方,コンサート市場は同研究所が統計を取り始めた00年の1243億円から19年の4237億円に急成長。多数のライブに触れられるフェスが体験型の音楽聴取への移行を促したといえよう。

「『フェス』コロナ禍越えて」 編集委員 西田浩 7月13日付読売新聞

 

この記事を読んでまず驚きだったのが,音楽配信の収益は,現在もCD生産額の三分の一程度しかないという事実。

とっくにCDを抜き去っていると思い込んでいたが,考えてみれば単価が安いので,アルバム単位で買われていくCDにはまだまだ追いつかないのだろう。

 

CDの生産額が減っているのはまあ間違いないと想像していたが,現在はピーク時(6075億円)のこれまた三分の一程度。

ピーク時の1998年と言えば,ビーズのベスト盤が2枚出てCD売り上げ日本一の記録をつくった年だ。

 

当時,私は中三だったけど,毎日のようにCD屋の視聴機に貼りついて予告映像を観続け,少ない小遣いの中から捻出して2枚とも購入した。

ビーズのベスト盤「Pleasure」

「Pleasure」が出た5月から夏にかけて,ひたすらこればかり聴いて過ごし,秋に「Treasure」が出たらまた,ひたすらこればかり再生して年末まで過ごした。

 

学年に一人熱狂的なビーズファンの友人がいたので,二人でファンクラブ(B‘z PARTY)に入り,翌年のライブにも足を運んだ。

 

sisoa.hatenablog.com

 

この98年前後と言えば,まず前の年にGLAYがベスト盤「Review」を出してアルバム売上日本記録をつくり,そしてこの年ビーズが2枚のベスト盤であっさりとその記録を抜き去り,さらに翌年には宇多田ヒカルが1stアルバムでこれまたあっさりと,しかも驚異的な売り上げを記録して抜き去るという凄まじい「アルバムバブル」の渦中にあった数年だ。

 

私はどっぷりと,その潮流に乗っていた。

 

98年の「6075億円」という生産額も,そのうちほとんどをビーズの2枚のベスト盤の売り上げが占めるのかと思いきや,「Pleasure」「Treasure」2枚のトータルセールスは375億円(この数字はこの数字で凄い)であるとされ,この年の生産額中では約6パーセント程度に留まっている。

 

つまり,それだけ群雄割拠だったというか,CDが売れた時代だったのだ。

 

洋楽で言えば,セリーヌ・ディオンが映画「タイタニック」のタイアップでシングルヒットを飛ばし,エアロスミスも「ミス・ア・シング」で世界的に再ブレイクした(これも映画タイアップ)。

 

邦楽ではGLAY(「誘惑」),ラルクの勢いがすごかった。

ラルクは夏に3週連続シングルリリースという離れ業をやってのけ,スマップは「夜空ノムコウ」を出した。

 

 

それも,今は昔。

CDは昔ほど売れなくなり,音楽配信はさらにその半分にもいかないのが、昨今の状況だ。

 

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それでは,これから音楽業界はどうなっていくのか?

別に業界の人ではないが,一介の音楽好きである私は想像してみた。

 

1 「パッケージ」としての音楽

私と同世代の人々(40歳前後)は,先ほど挙げた「アルバムバブル」の時代に青春時代を過ごした人々である。

当時は少ない手持ちの小遣いをやりくりして好きなアーティストのCDを買っていたが,今はそれなりに自由に使えるお金はある。

 

そして,今でも音楽好きの中には「サブスクやっているけど,CDも買います」という人は意外に多いのではなかろうか。

 

となると,今後さらに増えそうなのは,そうした世代へ向けての「プレミア感のある商品」だ。

sisoa.hatenablog.com

先日YOASOBIの「THE BOOK Ⅱ」を紹介したが,あのCDのように多少高くても,好きなアーティストの,曲づくりの背景や思いが見えるような作品なら是非手に取ってみたいと感じるのがファンの心理ではなかろうか。

 

何だろう,これは好みかもしれないが,よくある「写真集付きブックレット」や「DVD付き」とは少し違うのだ。

もっと,そのアーティストの深層に迫るような,ちょい厚めのライナーノーツでもいいし,YOASOBIみたいにアートワークに力を入れてみてもいい。

 

これは「作品」なんだ!という意識で手に取りたいと思うのだ。

 

だから,曲だけをダウンロードして…というのは抵抗があるんだな。

 

sisoa.hatenablog.com

 

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2 「体験」としての音楽

私が初めて体験した外タレのライブは,確か2000年前後のグリーンデイだった。

高校3年くらいだったと思う。

 

それまではドーム級のライブにしか行ったことがなかったのだけど,初めてのライブハウス(Zepp)での生音源は凄かった。

ドラム・ベースはブンブン腹にきて地面が震えてるし,何より、アーティストが近い。

 

だって,あのビリー・ジョー・アームストロングが数m先に立って歌ってるんだぜ?

 

さらに,このライブで衝撃だったのが,終盤ビリーが

「この中でギター弾ける奴?」(勿論英語)

と観衆に呼びかけ始めたこと。

 

前方で数人が手を挙げると,ビリーが一人を指名した。

そしてその客をステージに上げ,自分のギターを渡すと,なんとバンドと一緒に演奏させたのだ。

 

当然観衆は大盛り上がり。

突然ギターを渡された少年も当初緊張しまくりだった(マイク・ダーントとジャムってるんだから当然だろう)けど,そのうちほぐれてきたのか,しっかりノイズを響かせていた。

 

セキュリティ上は課題も多いだろうけど,ビリーには「ライブは観衆と一緒につくる」という意識が強かったのだろうと思う。

好きなアーティストと一緒にステージに立てるなんて,それこそ夢でしょう。

 

こんな「体験」ができるライブって,素敵だと思いませんか。

 

 

「体験」と言えば,以前紹介したコールドプレイのライブも面白いアイデアだった。

sisoa.hatenablog.com

これは,観衆が自ら自転車やトランポリンで発電をして,ライブで使用する電力を賄うという斬新な「体験型ライブ」だが,これからの社会の在り方に非常にマッチしたアイデアだと思う。

 

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最近は,カセットテープ人気が再燃しているという情報もラジオで聴いた。

 

何でも,カセットテープの音はCDやPCで聴く音と比べると,角が取れていて優しい感じになるのだという。

昔カセット録音で音楽を聴いてきた身からすると,分からないでもない。

 

どんなに音楽業界が衰退し縮小していっても,音楽が好きな人はいつの時代にもいるし,名曲はずっと聴き続けられるものだと思う。

 

どんな形であれ,「音楽を聴く」という行為は続けていきたいと思う。

 

私にとっては,通勤中にラジオから聴く「音楽」も,ライブに行って体験する「音楽」も、どれも大切な「音楽」だから。

 

ちなみに今は,早朝に自分の部屋で,愛用のチボリ・オーディオの音量を絞って宇多田ヒカルの「BADモード」を聴いています。

 

3連休の中日ですね。

心地よい音楽を聴いて,よい休日をお過ごしください。

 


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