音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

2000年以降の音楽ムーヴメントとファッショントレンドについての考察

 これまで,当ブログでは,60年代後半のヒッピー・ムーヴメントや,90年代前半のブリットポップ・ムーヴメント等とファッショントレンドの関係性について記事にしてきた。

 

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 言わずもがな,音楽のムーヴメントとファッションというものは,大体の場合において深く結びついている。

 

しかしながら,2000年代以降のムーヴメントについて,あまり触れてこなかった。

2000年代以降は,私自身が10代後半から20代を過ごした時代であり,リアルタイムで,当たり前に過ごしてきたためにそこを見つめ直そうという気にならなかったのが一番の理由だ。

 

ところが,気づけば2020年代に入っていた。

この20年の間に,音楽のムーヴメントもファッションも様々なものが現れては,消えていった。

 

今回は2000年代以降の音楽ムーヴメントと,ファッショントレンドの変遷について考察したい。

 

検証するアーティストについては,それぞれの時代において20代であることを条件とした。

 

ベテランアーティストになると,多少はトレンドの影響も受けるだろうが,自分たちのスタイルがある程度確立されている。

逆に若者ほど時のファッショントレンドの影響を受けやすく,検証しやすいからだ。

 

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1 ガレージロック、ポストパンク・リバイバル(2000年代前半)

ガレージロック,ポストパンク・リバイバルとは,2001年のストロークスのデビューから始まるムーヴメント。

 

厳密に言えば,ガレージロック・リバイバルとポストパンク・リバイバルは違うのだけど,ここでは一括りに説明させていただく。

2000年代に入るまで音楽シーンにおいて隆盛を極めていたのは,リンプビズキットやスリップノットなど,ヒップホップ,メタル勢だった。

ブリットポップは遥か昔,アメリカのマッチョなムーヴメントに押され,ロックは死にかけていた。

 

そんな折に奇しくもアメリカはニューヨークから彗星の如く現れたのがザ・ストロークスだ。

60年代のガレージロックのように隙間が多い音ながら,スタイリッシュにまとめたサウンドで若者の心を掴んだ彼らの人気はイギリスで火がつき,一気にスターダムへと駆け上った。

 

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Bloc Partyロッキング・オン2006.2)

上の写真はブロックパーティー

2003年デビューの彼らは,ダンスミュージックを取り入れたポストパンク・リバイバルに分類されることが多い。

 

エモーショナルな歌声,跳ねるビートで踊らせる1stアルバム「サイレント・アラーム」は確かな名盤。

 

そんな彼らのファッション。

ボーカルのケリー(中央)やギターのラッセル(左)が着ているように,タイトなTシャツ,スキニージーンズが主流だった。

 

ラッセルのようにベルトが見えるようにしたり,ケリーが履いているジーンズのように穴をあけたり。

 

この時代は,タイトなスタイルこそがクールだった。

 

オーバーサイジングが主流の現在のトレンドとはだいぶかけ離れているが,現在40代前後の方には懐かしいファッションではなかろうか。

 

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2 ニュー・レイヴ(2000年代後半)

続いては,ニュー・レイヴ。

先述のポストパンク・リバイバルの流れを受け,ロックにダンスミュージックを取り入れたスタイルが進化したムーヴメント。

 

代表的なアーティストとしては,語源の発信者となったクラクソンズやMGMTやドラムスなど,浮遊感のあるサウンドが特徴。

 

Razor Light(ロッキング・オン2009.2)

写真はレイザー・ライト。

ニューレイヴ世代ではあるが,音はもっとロック寄り。

 

ボーカルのジョニー・ボーレル(中央左)は黒のタートルネックでシックな印象だけど,ベースのカール(左端)はフードを被り,派手なプリントTシャツを着てベルトのバックル見せという,もろにトレンドを意識したスタイル。

ギターのビヨルン(右端)は,タイトなシャツに中折れ帽。

こんな帽子もこの当時よく流行った。

 

日本ではこの時期,チェックのシャツが流行っていた。

わりと派手目のトレンドだったのだなと,いま振り返ると思う。

 

30代半ばの方には懐かしいスタイルなのでは。

 

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3 EDM(2010年代前半~半ば)

 EDM。

エレクトロ・ダンス・ミュージックの略。


こちらもニュー・レイヴの流れを受け,音楽シーンを席巻した。

もともとはコーチュラやサマソニなどのフェスで,ダフトパンクが披露したピラミッド・ステージが始まりとされるそうだが,アヴィーチースクリレックスなど,若手の台頭で息の長いムーヴメントとなった。


The Chainsmokers(ロッキング・オン2017.2)

写真はザ・チェインスモーカーズ。

白Tシャツ,白シャツでまとめたシンプルなスタイル。


「侘び寂び」を感じさせる彼らのサウンド同様,華美にならずに質実剛健な印象。


同世代ならアヴィーチーあたりもそうだけど,モノトーンコーデが中心だ。


こうしてみると,2000年代初頭に比べると,音楽のムーヴメントもファッショントレンドも,かなり変化してきているのが分かる。


ただ,一般のカルチャーと異なるのは,ロックシーンにおいては,あまりワイドシルエットのスタイルは主流にならなかった点だ。

やはりロックは細身じゃなきゃ様にならないのですかね。

 

sisoa.hatenablog.com

 今年出た新作もクールでした。

 

4 EDM以後

現在の音楽シーンで,何かムーヴメントを表現する言葉があるだろうか?

YouTubeやTictokなどを通して,自ら音楽を世界に発信できる時代だ。

これまでシーンの 中心だったイギリスやアメリカ以外から多種多様なアーティストが世に出るようになってきた。


とまあ,ここまで書いておきながら紹介するのはハリー・スタイルズなんですけどね。

Harry Stylesロッキング・オン2022.8)

彼が「ロックの人」か,はまあ置いておいて,現在の音楽シーンにおいてかなりの影響力をもつ人物であることは間違いないだろう。


そんな彼のファッションは,ご覧の通りピチピチのシャツ(しかもハート柄)にこれまたピチピチのレザーパンツ!


シルエットは2000年代前半を彷彿とさせるが,もう少しレトロな感じ。

ファッショントレンドとしても,モノトーンコーデが落ち着き,少し派手目なスタイルが再評価されているのだろう。


もう一つ。

ここ数年のシーンはBTSに代表されるダンスグループ,または個性の強いソロのシンガーなどが多いようで,バンドは正直下火のようだ。


最近は洋楽も邦楽も,BTSの「ダイナマイト」の二番煎じのようなカラフルでポップな印象のMVばかりだ。

シーンはコアなダンスシーンから,ポップでわかりやすいダンスシーンへと変化しできているようだ…


ストパンクから約15年以上も,ロックはダンスミュージックと深く結びつき続けてきた。

そろそろ,シーンは「肉体的」な強さを欲しているはずだ。


それは,ギターロックが持ちうる強さと言い換えることができる。


その先には,きっとロックの未来が開けていると信じたい。