音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

ジョンに憧れたリアム

オアシスはいくつかライブDVDを出しているが,2000年夏にウェンブリースタジアムで行われたライブの様子を収録した「ファミリアー・トゥ・ミリオンズ」は同名でCD化もされ,オアシスファンにとっては最も馴染み深いライブ盤と言えるのではないだろうか。

 

このライブの冒頭はなかなか凄い。

オーディエンスの熱気はのっけから最高のヴォルテージ。

インスト曲の「ファッキン・イン・ザ・ブッシーズ」が鳴り響く中,ノエルはじめメンバーが位置につくのを割れんばかりの歓声と拍手で迎える。

 

アラン・ホワイトのドラムスでスタートしたのは,「ゴー・レット・イット・アウト」!

 

カメラは,ようやくフロントマンのリアム・ギャラガーを映し出す。

 

「Paint no illusion,try to click with whatcha got…」

(幻を描くんじゃない お前が手にしたもので何とかうまくやっていくんだ)

 

例の如く,自分の身長より高いマイクスタンドから見上げるように最初の歌詞を空へ放つ。

Liam Gallagher(Summer of 2000 at Wembley Stadium)

初めてこの映像を観た時に,私は衝撃を受けた。

 

オーディエンスの熱気にではない。

これくらいのテンションは,オアシスのライブではもはや「当たり前」である。

 

衝撃を受けたのはリアムの姿形だった。

 

ジョン・レノンじゃないか…。」

 

長く伸ばした髪,丸いサングラス,デニムのカバーオール…。

どこをどう取っても,ジョン・レノンなのだ。

 

勿論,似ているのは見た目だけで,相変わらずのガニ股だし,タンバリンを後ろ手に持って空を見上げるように歌うのもいつものリアムなのだけど。

 

結局,ライブの最後までリアムはサングラスを取ることはなかったし,カバーオールを脱ぎ捨てることもしなかった。

 

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リアムが「参考」にしたと思われるジョンのスタイルは,おそらく下の写真のジョンだろう。

John Lennon「Power To The People The Hits」ブックレットより

70年代半ばのものと思われる。
ビートルズの解散後,70年代前半は精力的にソロアルバムをリリースしていたジョンだったが,息子のショーンが生まれると,「ハウスハズバンド」宣言をして5年の長い育休生活に入る。

 

1980年に暗殺されたのは,彼が音楽活動への復帰を宣言して間もない頃だった。

 

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ところで,そんなジョンへの憧れを語っているリアムの貴重なインタビュー資料が残されていた。

 

俺的に言うと,もうジョン・レノンがすべて,以上!そこらへんにいるふつうのやつと同じだってのは頭でわかるけど,あのメロディとボーカルはふつうじゃないじゃん。ビートルズは毎日聴いてるよ。

初めて聴いたのは17の時かな。よく5歳でビートルズに目覚めたとか言ってるのがいるけど絶対見栄張ってるだけだぜ。そんなガキのときに音楽がわかるやつがいるかよ。俺なんかクルマのおもちゃとかで遊んでただけだしよ。

最初にハマったのはストーン・ローゼスで,そのあとちょっとサイモン&ガーファンクルがいいなと思って,そのあとビートルズでドッカーンていう。そのままいまでもドッカンきてると。

ジョンの揺り椅子も持ってるし,マハリシに会いに行ったときのネックレスも一揃い持ってる。自分でつけるかって?つけねえよ,そんなもん,もったいねえじゃん。あとジョンのしてた腕時計もあるし,ジョンが描いた絵もけっこう集めた。(中略)

ダコタ・ハウスにも行ったよ。ヨーコとお茶飲んだ。あそこにいる間ずっと変な気分で,『なんだなんだ,何が起こってるんだ?』ってかさ。ヨーコは最高だったよ。オアシスを好きだって言ってくれたけどホントかね?曲ってより俺たちのことが好きなんじゃないかな。

ジョンの曲は全部好きに決まってんだろ,ビートルズのもプラスティック・オノ・バンドのもさ。でも一番グッとくるっていったら,”アクロス・ザ・ユニヴァース”だよな。全体のノリが好きなんだよ,ナイスでスイートじゃん。

インタビュー:Liam Gallagher 「rockin'on」2013.01より引用

 

これを読んでいると,ただの追っかけじゃんかと疑いたくなるが,何とも単純でリアムらしいエピソードだ。

 

持ち物やファッションへの影響に加え,音楽面でもジョンからの影響は伺える。

 

私はソロ時代のジョンに関してはあまり詳しくないが,ビートルズ時代のジョンについては,リアムが言ってるように「アクロス・ザ・ユニヴァース」や「オー・ダーリン」などに代表されるようにピュアでシンプルなラブソングを歌っていたイメージがある。

 

その反面,「フール・オン・ザ・ヒル」や「レボリューション・ナイン」など代表されるように,「幽霊が出そうな」不気味な曲も多いなという印象。

 

私としては,ジョン・レノンと言えば後者のイメージが強い。

特に「ホワイト・アルバム」のディスク2に関しては,「レボリューション・ナイン」が入ってるばかりに,他の曲がいかによくてもあまり積極的に聴こうとは思わないくらいである。

 

リアムはオアシス後期,ビーディー・アイ期,ソロの初期では自身でソングライティングをしていたが,彼が書いた楽曲を聴いていると,前者のシンプルなラブソングを歌うジョンに強い影響を受けていると見受けられる。

 

あくの強いキャラクターとは裏腹に,リアムのつくる曲は頰撫でる風のように柔らかく,胸に沁みる名曲も多い。

 

「ソングバード」は,彼の曲の中でも私が特に好きな,美しい曲です。

 


www.youtube.com

 

どこかに,ジョンの魂が生きてるんだろうな。