音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

トム・ヨークって実は物凄くお洒落だったという話

私が大学生の頃,レディオヘッドは世界一影響力のあるバンドだった。

 

村上春樹の小説「海辺のカフカ」でも,家出したカフカ少年は「レイディオ・ヘッド」を愛聴していた。

 

だから私も彼らの音楽を理解したいと思って,当時代表作とされていた「OK Computer」を買って通学の時にずっとポータブルCDで聴いていたけど,なかなか理解できなかった。

 

まだ小僧だった私には,彼らの音楽が持つ深遠さを「難解な」音楽としか捉えることができなかったのだ。

 

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数年後,私が社会人になって間もない頃,レディオヘッドは「In Rainbows」というアルバムをリリースした。

とてもシンプルでいて,情感たっぷりの深みのある世界に惹き込まれ,私はこのアルバムを何回も聴き返した。

 

その時のことについては,以前記事にしています。↓

sisoa.hatenablog.com

 

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ところで,私はレディオヘッドや,そのフロントマン・トム・ヨークのサイドプロジェクトであるアトムズ・フォー・ピースのライブを数回目にしている。

「rockin'on」2010.10

ライブでは,レディオヘッドとして2012年フジロックのトリを務めた時の素晴らしいパフォーマンスと演奏が強く心に残っている。

 

しかし,インパクトという点では,2010年にアトムズ・フォー・ピースとして来日した時のほうに軍配が上がる。

 

何がって,まずはトムの衣装に度肝を抜かれた。

上の写真を見てほしい。

 

トリコロールカラーのヘッドバンドに,ブルーのタンクトップだ。

それでマラカス片手にクネクネ踊るのだ。

 

世間でいうところの「ロックン・ロールバンド」と呼ばれる人たちをこれまで数多く目にしてきたが,こんな格好でステージに立つ人は初めて見た。

 

トム・ヨークという人は,音楽的センスもかなり常人とはかけ離れているが,ファッションセンスという点でも,突き抜けたところがあるのだということを実感する体験であった。

 

ちなみに,ベースのフリー(レッチリ)はピンクのタンクトップだった。

 

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2013年11月に新木場スタジオコーストでライブをした時の衣装もなかなか個性的だ。

「rockin'on」2014.02

なんとスカートである。

 

まあ,イギリスにおいては伝統的な民族衣装として男性の着用もアリという文化的背景があるにせよ(マニックスのニッキーなんかはよく履いてますね),なかなかシックに着こなしている。

 

全体的にダークトーンで抑え気味にしているが,オレンジの靴下と靴紐の色味を合わせ,色調のバランスを取っている。

 

スニーカーは,アディダスの「キャンパス」だろうか?

 

品のいい「抜け」の演出の仕方だと思う。

 

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トム・ヨークは奇抜な格好をする人,というイメージが先行してしまうかもしれないが,実は普段は「ちゃんとカジュアルな」格好をする人だ。

 

2012年にフジロックで観た時には,こんな衣装だった。

Fujirock2012 at Greenstage

黒のTシャツに黒のスラックスという,ごくごくシンプルなスタイル。

トム・ヨークと言えば,こういうシンプルな格好をする人,という印象の方がむしろ強い。

 

ひと頃のレディー・ガガのように,常に奇抜な格好をして世間を驚かすわけではなく,たまーに面白い格好をして「おっ」と思わせてくれるところに,トムのシニカルなユーモアを感じる。

 

 

ところで,下の写真は,私が最も好きなトムのスタイルだ。

「rockin'on」2014.02

下の方は文字で見づらくなっているが,Gジャンの下のインナーの丈であったり,黒のボトムスのサイズ感,全体的なシルエット・色調といい,白のアディダス(スーパースターか?)といい,とてもバランス感覚に優れている。

 

普通にお洒落ですよね。

 

でも,意外と音楽業界って,こんなふうにさりげなくカジュアルお洒落ができる人が少ないように思う。

 

ステージ衣装が映えるアーティストはいくらでもいるが,トムのように普段着感覚でさらっと衣装を着て,物凄いライブをして帰るアーティストはなかなかいない。

 

新たなプロジェクト・「The Smile」も気になるところです。

まだ聴けていないけど。

 

最後に一曲は,今聴いても革新的。

2001年の「Kid A」より「ナショナル・アンセムズ」。

 

初めて聴いた時には気づかなかったけど,これ,だいぶ1970年代のマイルズ・デイビスに影響受けてますね。

 

それでは,よい週末を!


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