「読書ノート」で振り返る,2022年に読んだ本の回想
以前,当ブログでも紹介したが,私は毎日読書ノートをつけている。
読書に限らず,仕事上のアイデアをまとめたり,プレゼンの流れを書いたり,会議の議事録や講演の記録,聴いたCDの感想など仕事に関することだけでなく,日ごろから考えたことや思ったことを書き残していっている。
そんな読書ノート,現在は今年の3冊目(累計25冊目)が終わろうとしている。
1冊につき100枚の方眼紙で構成されていて,残り15枚ほどだ。
年内に書き終えるのは無理だろうが,来年1月中には新しいノートに移行するのではないだろうか。
今年は,以前から持っていた本の読み返しも含めると50冊ほどの本を読んだ。
今年新しく購入した本で読了したのが30冊程度なので,読書家と自負するには,全く至らない数字である。
しかし,一年間を振り返って,どんな本の,どの部分が響いたのかを振り返るのも,それなりに価値がある。
私が今年読んだ本の紹介ついでに,読書ノートに書き抜きして引用していた部分を回想していきたい。
よければお付き合いください。
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2月 「エフォートレス思考」 グレッグ・マキューン
この本は今年初め頃読んでいた。
購入したのは,この前に出ていた同じ筆者の「エッセンシャル思考」という本がなかなかよかったので,続編となる「エフォートレス思考」も読んでみたいと思ったからだ。
読んですぐに行動したくなる,実践向きの本だ。
その中で印象に残った一節がこれ。
足りないものに目を向けると,今あるものが見えなくなる。
含蓄のある言葉だ。
人間,足りない部分ばかりに目を向けてしまいがちだが,今あるもののよさを忘れてはいけない。
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3月 「ポートレイト・イン・ジャズ」 和田誠・村上春樹
2019年に亡くなった,イラストレーターの和田誠さんと村上春樹によるジャズ・アーティストの紹介本。
ほんわかしていて,何やら示唆的な和田さんのイラストに,村上が自身の音楽体験を交えながら文章を添えている。
人間的には,ビューティフルな人であったに違いない。それは,音楽を聴いていればだいたいは想像がつく。しかし,真に優れた音楽とは(少なくとも僕にとってはということだけど),詰まるところ,死の具現なのだ。そして,その暗黒への落下を,僕らにとって耐えやすいものにしてくれるものは,多くの場合,悪の果実から絞り出される濃密な毒なのである。その毒がもたらす甘美な痺れであり,時系列を狂わせてしまう,強靭なディスとレーション(ゆがみ)である。
「真に優れた音楽とは,詰まるところ,死の具現」
と村上は書いている。
「死」を思う時,私はフジロックでのMy Bloody Valentineの演奏を思い出す。
彼らが生み出す轟音は,「快感」とは正反対で,暴力的で,歪んでいて,どこまでも落ちていきそうなカオスの極致だった。
そんなカオス的な演奏を20分ほど続け,オーディエンスを芯まで疲れさせたのち,不意に聴き慣れたビートが戻ってくる。
そこに,得も言われぬ「安心」を感じた。
なぜだか,「自分は今,生きている」と実感した。
そんな,麻薬的な音楽の在り方が果たして正しいのかどうかは分からない。
個人的にはあんな疲れる音楽体験はもう二度と御免こうむりたいが,忘れることはできない経験であることは確かだ。
「死」と向き合おうとする時,初めてその裏側にある「生」を感じるからこそ,音楽を聴くことはやめられないような気がする。
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3月 「ヒトの壁」 養老孟司
養老孟司さんは,私にとって,原点に返してくれる貴重な作家の一人だ。
そもそも,なんでそうなのか?
本当にそれでいいのか?
彼の著作の多くは,いつも私にそう問いかけてくる。
登校拒否児が増えていると聞くが,学校教育自体が対人に偏っているからではないかと危惧する。いじめの根源はそれであろう。
子どもたちの理想の職業がユーチューバーだというのは,対人偏向を示していないか。なにか人が気に入るものを提供しようとする,対人の最たるものであろう。人が人のことだけに集中する。これはほとんど社会の自己中毒というべきではないか。
「夢はユーチューバーです。」
という子どもは珍しくなくなった。
むしろ,なりたい職業ランキングでも上位に顔を出すほどだ。
別に,それが悪いということではない。
私がやっているブログだって詰まるところ,似たようなものなのだし。
だけど,どんなことをやるかは大切にしたい。
息子がもし「ユーチューバーになりたい」と言い出したら(今のところそんな気配はないが),
「ユーチューバーになって,どんなことを発信したいの?」
と問いたい。
重要なことは,たくさんの人と繋がることではなくて,自分がどんなことを学んで,人生にどう生かしていくのか,という部分に立ち返っていくことではないだろうか。
結果,少しでも多くの人に共感してもらえたら嬉しいけど,共感してもらえるかどうかなんて,自分ではコントロールできない。
そのことについて思い悩むのは時間がもったいないし心の健康にもよくない。
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6月 「人新世の『資本論』」 斎藤幸平
確か昨年ベストセラーになっていた本だが,ようやく今年になって読了した。
結論から言うと,早く読んでおけばよかった。
目から鱗だった。
自分なりに「価値がある」と考えていたことが,根底から揺さぶられた。
こういう本は,(痛みを伴うが)読むべきだ。
しかも,この無意味なブランド化や広告にかかるコストはとてつもなく大きい。マーケティング産業は,食料とエネルギーに次いで世界第三の産業になっている。商品価格に占めるパッケージングの費用は10~40%といわれており,化粧品の場合,商品そのものを作るよりも,三倍もの費用をかけている場合もあるという。そして,魅力的なパッケージ・デザインのために,大量のプラスチックが使い捨てられる。だが,商品そのものの「使用価値」は結局,なにも変わらないのである。
私たちの生活を成り立たせるために,経済政策を優先するのも分かるが,そもそも私たちが生を受けているこの地球がなくなってしまっては,元も子もない。
私たち人間はこの二百年ほどの間に,地球の資源を食い潰し,再生不可能なまでに搾取し尽くしてしまった。
目先のこと(今の水準の生活を維持すること)ばかりにとらわれ,犠牲を負って変化することを拒んでいるし,そのようなことを言う政治家は選挙では勝てないだろう。
結果,何も変わらず貴重な時間だけが無情にも過ぎ去っていく。
しかし,ここ数年の異常気象(特に夏の暑さ,集中豪雨)には危機感を覚える。
SDGsの実践では生ぬるいことは分かっているが,何も行動を起こさないよりは遥かにマシだ。
過度なエネルギー使用を避ける,パッケージは簡易なものを選ぶ。
私も,できることから始めている。
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8月 「激刊!山崎Ⅱ」 山崎洋一郎
「ロッキング・オン」編集長である,山崎洋一郎のコラムを書籍化した第二弾。
アーティストの自由とは,なんでも好きなことがやれて,なんの制約もないことが自由なのではない。嫌なことを乗り越えて好きなことを選び取る自由,制約を突き抜けて思うように貫く自由,それがアーティストの自由だ。だから人々を励まし,勇気と力を与えるのだ。だが,今の音楽業界はアーティストと真正面からせめぎ合おうとしていない。好きに作らせて,ダメなら切るのだ。
ここ数年,文科省がよく言っているのが「主体的」,「個別最適化」などのキーワード。
一人一人の個性を認めたり,集団の中での生きにくさを感じている子を支援したりすることは大切なことだ。
しかし,過度に「配慮」をやり出すと,社会全体が機能不全を起こす。
不登校児童,生徒の増加。
早期離職者の増加。
それらの問題は,おそらく根底で繋がっている。
これは養老さんも書いていたが,何でも便利になり過ぎていて,私たちの我慢や忍耐が効かなくなってきているのだ。
「主体的」というのは,子どもに好き勝手やりたいことをやらせることではない。
社会生活を送る上で,どんなルールがあり,なぜそれが大切なのかを教えた上で,自分で判断して学んでいくことだ。
前提として,不自由があるのだ。
そこを乗り越えていかないことには,自由に振る舞うことは出来ないのだ。
山崎は,そんなことを言いたかったのではないだろうか。
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9月 「超訳 ニーチェの言葉」 ニーチェ
待たせるのは不道徳
ずばり本質をついてくる。
たまに読み返して,足元を見つめ直す。
ちなみに私は,待つ時間はわりと好きだけど,人を待たせるのは嫌いです。
昔,必ず約束の時間から10分程度遅れてくる人がいたけど,正直,閉口した。
そんなふうにはなるまい,自分に言い聞かせてみる。
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12月 「呪われた腕 ハーディ傑作選」 トマス・ハーディ
教養本ばかりの選出になったが,小説も読んでました。
これは短編集だけど,翻訳小説家の柴田元幸さん,村上春樹が廃版になっている名作を選んで文庫化したシリーズ,「村上柴田翻訳堂」。
ハーディの短編は主人公が不幸になる作品ばかりだが,その不幸の成り立ちが,考えさせられるものばかりでついついページを捲らされる。
話の構成は「笑うせえるすまん」あたりに似ているかも知れない。
不幸になるのは分かっているけど,主人公にどんな運命が待ち受けているのか気になって,次が読みたくなる。
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私は音楽を聴くのも好きだが,本を読むのも同じくらい好きだ。
フジロックに行っても,一日の半分は自然の中での読書に費やしたことがあるくらい好きだ。
本というのは高くても数千円程度で,知らなかったことを知れるし,新しい世界を教えてくれる。
物語の世界に没入することもできる。
値段に対して圧倒的なコスパのよさだ。
年末年始くらいは,買い込んでいてまだ読めていない本を沢山読みたい。
皆さんの,今年の一冊は何ですか。
よかったら教えてくださいね。