音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

紅白2022出演アーティストのファッション・チェック

ここ数年,NHK紅白歌合戦が面白い。

 

特にここ2,3年は新型コロナの感染拡大による無観客開催が続いたこともあり,NHKも本気で,「どうすれば番組を観てもらえるか?」という積年の課題と向き合っていく姿勢が見受けられた。

 

そして,その努力はある程度奏功してきたように思える(視聴率云々ではなく,あくまで個人的感想としてだけど)。

 

ところで,私が「音楽と服」というコンセプトのブログをやっている以上,どうしても気になってしまうのが出演するアーティストの衣装だ。

 

以前ほどではなくなったにせよ,やはり出演アーティストにとって,紅白というのは一世一代の大舞台であるはずだ。

 

そんなここ一番ステージで,彼らがどんな服で歌い,自己を表現していたのか,チェックしていきたい。

 

※画像の引用元は全て2022年NHK紅白歌合戦です。

 

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1 SEKAI NO OWARIFukase

今年「Habit」で久々のヒットを飛ばし,日本レコード大賞にも輝いた彼ら。

その独特なダンスはSNSでも話題になった。

 

紅白では「赤」を基調とした衣装でのステージ。

Fukaseの衣装は,ストライプ柄のネクタイに,ストライプのジレ,ストライプシャツにチェック柄のボトムス。

 

文字にしてみるとうるさい感じだが,濃淡を巧みに使い分けた配色で,そこまでゴチャゴチャした印象はなし。

更に,真っ赤なジャージを着て相殺している。

 

曲と踊りがポップなだけに,飾りすぎず軽快な衣装だ。

 

セカオワは,メンバーのSaoriさんの名前をEテレ子供向け番組の作曲などで見かけるようになった。

彼女自身育休明けで復帰間もないが,今後はそうした「親の立場」を生かした音楽活動も増えていくのだろう。

 

同じく子育てする親世代としても,見守っていきたい今後の彼らの活動です。

 

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2 back number(清水依与吏)

back numberについては,実はあまり知らない。

 

ただ私が彼らの楽曲で唯一知っている「高嶺の花子さん」を歌ってくれたのが強く印象に残っている。

 

愚図愚図した情けない男の心の声をうまく歌詞にしているのだ。

私も学生時代に同じようなことをよく考えていたので,大変共感する。

 

back numberのメンバーの衣装についても,普段歌番組で見かける時同様,カジュアルで「いつも通り」を貫いている印象。

 

ボーカルの清水さんの衣装に関しては,大き目トップスに対してタイトなボトムスのシルエット「Yライン」。

 

サイズ感はともかく,真っ白なワークシャツ,薄いインディゴブルーのデニムという色使いも含め,いにしえのフォーク・シンガーっぽい印象を醸し出していて,非常に好感が持てる。

 

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3 あいみょん

カジュアルという面では,この人は完全に振り切っている。

 

「きみはロックを聴かない」を歌唱したあいみょん

 

「いつも通り」のジーンズにブーツ,上はオーバーサイズのブルゾンを肘まで捲し上げる,古着っぽいスタイル。

 

彼女が偉いのは,自分の言葉と自分のスタイルをきちんと持っているということ。

ステージが紅白だろうと路上だろうと,それを変えることはないだろう。

 

私よりだいぶ年下だが,その一貫したアティチュードは,素直に格好いいなと思える。

 

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4 藤井風

個人的に2022年ベスト・ドレッサーに選出した藤井風の衣装は一番の注目だった。

 

sisoa.hatenablog.com

 

出てきた彼を見て驚いた。

 

スカートである。

 

もともと中性的な印象もあるし,今回の歌唱曲「しぬのがいいわ」の歌詞も女性になぞらえて歌っているので,曲の世界を表現したということだろう。

 

まあ男だからスカートはちょっと・・・とか,そんな時代でもないということ。

 

これがファッションとして成立するには,まだまだ文化として成熟しきっていない感はあるが,昔から(特にイギリスでは)ミック・ジャガーデヴィッド・ボウイなんかはよく中性的な衣装を身に纏っていた。

 

ファッションの是非はともかく,曲の世界を完全に演じ切っていた今回のステージ。

表現者としての粋をしっかり見せてくれた。

 

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5 星野源

星野源は,自身の多様な音楽体験を曲作りに落とし込むことができる,バランス感覚に優れたアーティストだ。

 

sisoa.hatenablog.com

 

もともとは,コアな音楽的趣味を持っている人なのだと思うが,それをうまくポップ・ミュージックとして成り立たせているのだ。

そんな彼は,ファッションに関しても流行を意識したスタイルが多い。

 

今回の衣装は,グレイのオーバーサイズ・セットアップに,インナーはやはり大きめの白シャツ,足元がの丸っこいフォルムのブーツで全体のバランスを取っている。

 

トレンドのリラックス・シルエットを地で行くスタイル。

 

曲作りにせよファッションにせよ,うまく時代に合わせることができる器用さを持った人だが,「うちに帰ろう」の成功以降ミドルテンポの曲が多くなった印象がある。

 

その類まれなるポップ・センスで,そろそろぶっ飛んだ曲を聴かせてほしい。

 

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6 桑田佳祐と愉快な仲間たち

2022年の紅白,個人的な一番のハイライトはこの企画。

 

冒頭,「軽音楽部」の部室でギターをかき鳴らしているのが,世良公則野口五郎,Charの3人。

そこへ

「渋い親父が集まって,ギターを弾いている~。」

と言いながら現れたのは,桑田佳祐

 

4人とも黒・白ツートンのブルース・スタイルだ。

 

渋い。

 

この4人でアコギのセッションをした後,もう一曲・・・

ということになって登場したのが,佐野元春大友康平

 

さらにサポートとして,キーボードに原坊(原由子),ベースにハマ・オカモトを迎える超豪華布陣で桑田が作曲した「時代遅れのRockn’roll Band」を歌唱。

この曲が,お世辞抜きで素晴らしい曲だった。

 

私たち大人が,子どもたちにどんな未来を残せるのか,そんなテーマを明るく力強く歌った曲。

 

やはり桑田佳祐は国宝級の天才だ。

 

そして,結集した格好良すぎる親父たちの熱演がほとんど全ての判断基準となり,私に「白組」投票の青ボタンを押させた。

 

親父たち,ファッションは勿論格好良かったですよ。

 

でも,彼らが鳴らす音,その言葉一つ一つに表現者としての矜持が滲み出ていた。

だからこそ,音楽は素晴らしいのだ,と。

 

そう思わせてくれる珠玉のステージでした。

 

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ということで,2022年紅白出演アーティストのファッション・チェックでした。

 

音楽を語る上で,アーティストが着ている「服」にも注目したらより楽しめる,との思いでこのブログを運営しているが,最後はやはり「音楽の力」なのだなあ…と,今回桑田佳祐らのステージを観て改めて感じた。

 

子どもの命を全力で 大人が守ること

それが 「自由」という名の「誇り」さ

 

「時代遅れのRockn’roll Band」で,Charはこう歌っていた。

そのメッセージはダイレクトに,聴いている私の胸に響いてきた。

 

ブログコンセプトとしては身も蓋ない結論になるが,本質はやはり「音楽の力」なのだ。

 

そんな「音楽の力」(と,ファッションの面白さ)について,またゆるゆると記事をアップしていこうと思っています。

 

2023年もよろしくお願いいたします。

 


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