音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

カメレオン・ベック

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ベック・ハンセンと言えば,2000年代にアパレルブランド,ナンバーナインを身に纏い,若者のファッションアイコンとして日本でもわりと知られる存在になった。

 

そんなベックも40代になり,落ち着いた大人の雰囲気を醸し出すようになった

 

2014年4月の「ロッキン・オン」に掲載されたこの写真。サンローランのジャケットに,ハット,インナーと全て黒で統一,もうかっこいいの一言しか出ない,さすが。

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2016年フジロック グリーンステージにて

2年後,2016年のフジロックでベックを観たのだが,
この時にもおそらく同じハットにジャケットを着用している。インナーは黒地に白ドットのシャツ。相変わらずのお洒落さん。

本編の終盤に衣装替えして戻ってきた時には,白のハットに白ジャケット,白スラックスの全身真っ白コーディネート!しかも,しかもですよ。。シャツがオレンジ地に白ドットときた!さっきまで黒地に白ドットのシャツだったんですよ?その遊び心に脱帽降参。そして,そんな格好が大真面目に似合うのは古今東西探してもベックしかいない。

 

ベックといえば,「オデュレイ」が一番有名だが,2008年の「モダン・ギルト」,2014年のグラミー受賞作「モーニング・フェイス」,2016年の「カラーズ」と,ここ10年は秀作をリリースし続けている。

 

数年前,同業種だが研修等で一緒になることがあって知り合いだった先輩と,とある飲み会で同席し,たまたま2軒目に行くことになった。

そこで,お互いのことを話していたら,二人とも洋楽が好きなことがわかった。洋楽好きとはたまに出会うが,メタルだったりハードコアだったり,少し自分とは趣向が異なる方も多い。ところが,その先輩が好んで聴くのは,オアシス,ブラー,ベック!

ブラーに関しては,「コーヒー&TV」が好きなところまで一緒!こんなに気が合う人もいないねと随分深酒をしてしまった。

 

その先輩は,ベックについては「その生き方も含めて全て好き」と話していた。ただ,2000年以降の曲は聴いていないそうだ。

そこで,「モダン・ギルト」も聴いてみてくださいよ!と必死にお願いしたのを覚えている。

「モダン・ギルト」はイントロのベースの重低音や,無駄な装飾を省いたタイトな演奏が,ビートルズの「リボルバー」を彷彿とさせる。削ぎ落とした無骨なサウンドは,何度も聴くうちにくせになる。

「カラーズ」は一言で言えば「深みのあるポップ」。おそらく,2010年代にリリースされたアルバムの中で,1番聴いた一枚。何度聴いても,そこに新たな深みと発見を見出せる,まさしく「カラーズ」のタイトルに相応しい名盤。

 

一つのスタイルに縛られず,年齢や時代に合わせ,カメレオンのように楽曲やファッションのスタイルを刷新し続けるベック・ハンセン

楽曲だけでなく,そのスタイルを含めいつの時代でも格好よく生きるのは,簡単なことではないのは容易に想像できる。

ラップでもメロウでも,ストレートなロックでも。

ストリートでもアメカジでもモノトーンでも。

どんなスタイルも自分のものとして消化し,自分の表現として発信できるからこそ,ベックは30年以上もサバイブできたのだろう。

そして多分,これからも。