音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

00年代と90年代ファッション,どちらがお洒落?

ファッション90年代リバイバル化が叫ばれて久しい。

 

この間,職場の同僚と立ち飲み屋で一杯やっていたら,天神大名のあたりに最近また古着屋が増えているらしい。

 

私が学生の頃はちょうど古着ブームの真っ盛りで,大名にもスピンズをはじめとした古着屋が文字通り軒を連ねていた。

 

私も講義の合間に暇さえあれば天神まで出て古着を漁っていた。

同僚とは同い年だったので,学生時代のそうしたファッション事情でも盛り上がった。

 

ところで,私が10代後半から20代を過ごした00年代は青春真っ只中の時代と言い換えてもよい。

 

その頃に活躍したアーティストのファッションは記憶に新しいところだ。

現在のトレンドと比べてどうなのだろうか?

 

なんなら,00年代〜ポスト・パンクリバイバル世代と,90年代〜ブリット・ポップ世代のファッションを比べたらどんな違いが浮かび上がってくるだろうか?

 

そんな疑問が湧いてきたので,検証してみることにする。

 

00年代〜ポスト・パンクリバイバル世代

この世代では,世界中にギター・ロック復権を印象付けたストロークス,ホワイトストライプス以降,雨後の筍のように多くのガレージ・ロック・バンドが登場してきた。

 

その一つがこのドラムス。

「PORTAMENTO」THE DRUMS(2011)

浮遊感のあるそのサウンドは,一度聴いたら癖になる。
演奏は決して上手くなかったが,どこか朴訥としていて親しみがもてた。

 

そんな彼らのファッションは,古着を取り入れてカジュアルな印象だ。

ニューヨーク・ジェッツフットボールTシャツや,チェックのシャツは当時日本でも流行っていた。

 

ただ色合いが少しポップ過ぎて,現在のトレンドとは少し距離感があるか。

 

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続いては,この時代のムーブメントをつくり上げた張本人である,ザ・ストロークス

「ROOM ON FIRE」THE STROKES(2003)

私は,「ストロークスはお洒落」なもんだと言う先入観がずっとあって,それは今でも変わらないのだけど,この03年当時のファッションはいただけない。

ニック(左端)のざっくり中割れニットはまだいいとして,ジュリアン(左から2人目)は・・・。

 

シャツのボタンを上から3つ,4つ?くらいは外しているようだ。胸元が露わになっている。

露わ過ぎるだろう。

 

当時はタイトめファッションの全盛であったことを差し引いてもやり過ぎ感は否めない。

 

そして,現在のトレンドとの遠い距離感を感じてしまう。

 

 

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90年代〜ブリット・ポップ世代

この世代でまず登場するのは,ブリット・ポップ代表選手のオアシスだ。

「BE HERE NOW」Oasis(1997)

先のストロークスを見た後で,どこかほっとしてしまったのは私だけだろうか。

ノエル(右から2人目)やボーンヘッド(左から2人目)が若干オッサン臭いのが気にはなる(全員30前!)が,全体的なサイズ感はゆったりしていて,現在のトレンドと比べてもあまり違和感はない。

 

それにしても改めて見ると,当時のオアシスメンバーって,若い割に皆貫禄があって,リアム以外ミュージシャンというより,プロデューサー然としていませんか。

 

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最後に登場は,1989年のストーン・ローゼズ

THE STONE ROSESTHE STONE ROSES(1989)

厳密に言えば90年代ではないしブリット・ポップ世代でもないけど,その世代のアーティストに与えた影響は多大なので,よしとしましょう。

 

そんな彼らのファッションだが,不思議なほど現在のトレンドとの距離感を感じさせない。

 

マニ(右端)のフットボール審判風のTシャツや,イアン(左から2人目)のポロシャツ,ちょうど肘くらいまでの丈があり,ゆったりとしたサイジングだ。

 

奥のジョン・スクワイアも,上下ともゆったりしたスタイルだ。

ジョンに関しては,そのまま今月号の「メンズ・ファッジ」に載っていても多分違和感はない。

 

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最後に,本当に今月の「メンズ・ファッジ」で検証してみよう。

「メンズ・ファッジ」2023.12

この写真は,ブリット・ポップっぽく着こなそう的な企画ページのもの。

明らかにイアン・ブラウン風の髪型を意識しているモデルが小脇に抱えているのは,ブラーの名盤「パークライフ」!

 

こうしてみると,依然オーバーサイジングのトレンドは続いているようだが,シルエットに関してはもう五年以上大きな変化がないので,そろそろタイトめのブームがきてもおかしくはないのかも。

 

検証結果は,今のところ,90年代のほうがイケてるように見える。

しかし,トレンドは繰り返すもの。あと三年もすれば,ファッションに関する状況も様変わりしているかも知れない。

「やっぱり03年のストロークス最高にかっけえじゃん!」

なんてブログに書いているのかも知れない。

 

 

それでも,胸元露わにし過ぎるのは,やっぱりちょっとアレですけどね。

 

 

 

転がり続けると決めた男たちの勝利宣言

なんじゃこりゃ?

 

買い求めてから二週間,ずっとカーステレオでかけっぱなしにしてるけど,今日自分の中で何かが弾けた。

 

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この「二週間」というのは,新しく聴くアルバムの自分なりの評価が定まってくるタイミングだと思っていて,ほとんどはそれくらいのタイミングで「そろそろいいや」と思ってラジオに切り替えたりBluetoothにして聴き慣れた別の楽曲を流したりするものだ。

 

春に出たブラーや夏のジェイソン・ムラーズ,秋口に出たケミカルブラザーズの新作も残念ながらそっちの仲間だった。

 

それなのに,このアルバムは何だ。

 

このアルバム。

 

バンドの屋台骨であるチャーリー・ワッツを失っても,60年の歴史を経てもなお転がり続けるロックンロール・バンド。

 

 

彼らの18年ぶりのオリジナル新作アルバム「Hackney Diamonds」を購入する際は,正直ちょっと躊躇いがあった。

 

"前作"である05年「a bigger bang」の印象があまりに薄かったのもある。

 

悪くなかったけど,彼らが音楽シーンの真ん中に燦然と輝いていた70年代(特に前半)の綺羅星の如き名盤群と並べると,どうしても見劣りがするのは仕方がなかった。

 

だから,昔の馴染みで買ったようなものだ。

 

馴染みといってもたかだか18年程度の愛聴歴は,彼らの全盛期を知る方たちからすれば,青二才同然であることもわかっている。

 

しかし,私だってそれなりの熱量で彼らの作品と向き合ってきたのは間違いない。

 

20代前半の独身一人暮らしの時代には,深夜まで仕事をした後,自転車を飛ばして近くの海まで行った。

砂浜に腰掛けて煙草をふかしながら缶コーヒーを飲みながら,頭の中を空っぽにしてストーンズを聴いた。

 

あの頃のBGMは大体「メインストリートのならず者」だった。

缶コーヒーは週末には缶ビールに変わることもあった。

 

対岸には海の中道にあるホテル・ルイガンスの灯りがぼうっと見えて,私は暗い夜空に向かって何度となく白い煙を吐いた。

 

煙草を2,3本吸うと「ならず者」を聴き終えていた。

私のリアル青二才時代の回想には,必ずストーンズの曲は登場する。

 

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今回の新作を聴いて最初に思ったのは,

「70年代の雰囲気に似てる」

だった。

 

焼き直しということではなくて,あくまで雰囲気。

「ホンキー・トンク・ウィメン」の奔放さ。

「ロックス・オフ」のいかがわしさ。

 

ストーンズが一番ストーンズであった時代の,あの雰囲気に近い。

別に無理してやってるわけではなくて,

「やっぱ俺たちにはこれしかできねえよ」

と開き直ってるような,そんな意思を感じる。

 

そんな曲の中でも,「Mess it up」は異色作。

ディスコ調のナンバーだが,不思議とミックの声音と合っていて,一度聴いたらなかなか耳から離れない。

 

車の中でかけていたら,三男が

「メセラ♩メセラ♩」

と口ずさみ始めた。

 

3歳の子供に即鼻歌を歌わせるなんて,名曲に決まってるじゃねえかと思いつつ,私の脳内でも「メセラ♩メセラ♩」のループが止まらない。

 

そうして,約8か月ぶりにブログを更新するに至った。

 

どうです。

名作に決まってるでしょう?

 

 


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フリッパーズの名曲MVは,あのヒット曲の元ネタか

最近,フリッパーズ・ギターを聴いている。

 

フリッパーズ・ギターと言えば,小山田圭吾小沢健二のユニットだ。

 

私はコーネリアスは聴いたことがないけれど,小山田が所属していたメタファイヴは大好きだし,小沢健二も個人的にかなり愛聴していたので,この二人が昔組んでいたユニットなので,どんな音楽を鳴らしていたのか,以前から気にはなっていた。

 

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それが先日,たまたま天神に行く用事があって,時間があったのでタワレコに立ち寄ってみると,フリッパーズのCDが一枚だけ置いていたのだ。

 

それが,彼らのセカンドアルバム「カメラ・トーク」だ。

Amazonでも新品の取り扱いがなかったので,タワレコに置いていたのは幸運だった。

 

それで,この作品を聴いていくと,メタファイヴのようなメカニカルな感じとも,小沢のソロのような哀愁めいた感じとも微妙に趣向が違っていて面白い。

 

90年リリースの作品なので,ストーンローゼズやプライマルスクリームあたりのサイケデリックで浮遊感のある,それでいてポップなテイストの楽曲が多くて,結構好みである。

 

ところで,収録曲の中に「カメラ!カメラ!カメラ!」という曲がある。

この曲のMVを観ていると,私はあることに気づいたのだ。

 

まずは「カメラ!カメラ!カメラ!」のMVを観ていただこう。


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ヴィヴィッドなMVである。

 

青いハイネックを着た小沢と,赤いハイネックを着てハットを被った小山田。

二人ともエレキ・ギターを抱え,ホワイト・ジーンズを履いている。

 

真っ白な背景に,カラフルなドアが配され,真っ黒なワンピースに色とりどりの帽子や手袋を身に付けた踊り子が,カメラを構えつつ踊る。

 

30年以上前のMVとは思えないほど,モダンで洒落ている。

 

でも,観られた方は気づかれたのではないだろうか。

 

このMVのつくり,最近(とはいっても5年以上前だけど)のヒット曲のMVによく似ているのだ。

 

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それが星野源の「恋」である。

 

恋ダンスで一世を風靡したので,よく知られたMVだと思うけど一応貼っておきます。


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こちらのほうがより現代的で洗練されているけど,踊り子のファッションやコミカルな動き,そこにバンドの演奏を絡ませてるあたりのセンスや,簡素な背景も含めて,あのフリッパーズのMVからの影響をそこかしこから感じる。

 

恋ダンスの振り付けはあのMIKIKOということなので,彼女の趣向が反映されている可能性もあるけど,おそらくフリッパーズを通っているのは想像に難くない。

 

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勿論,MVのつくりは似ているが,「カメラ!カメラ!カメラ!」と「恋」は全く音楽性の異なる楽曲だ。

 

前者は先に述べたように,80年代UKロックの影響を色濃く受けているのに対し,後者は日本の伝統的な歌謡曲を現代的にアレンジした印象だ。

 

フリッパーズ・ギターはこのセカンドを含め,3枚のオリジナルアルバムをリリースした後,突然解散したということだが,残る2枚も聴いてみたいと思っている。

 

フリッパーズは所謂「渋谷系」の走りとされているけど,彼らのファッションは当時からかなり洗練されていて,当ブログのコンセプト的にも興味津々である。

 

聴いてみたらまた記事に上げたいと思います。

 

それではまた。

 

ファッションで見るスピッツの”とげ”と”まる”

まずは下の写真を見てもらおう。

言わずもがな,90年代から日本のロック・シーンを最前線で牽引する,スピッツである。

 

これは彼らがブレイクした直後の,90年代半ばの写真だと思われる。

 

前面に立つボーカルの草野マサムネはくたびれたワーキングジャケットにタータン・チェックのシャツ,真っ白オーバーサイズのスラックスを合わせている。爽やかな着こなしだ。

左手にポータブルのレコード・プレーヤーを携えている。

 

ベースの田村明浩は,白のキャップに黄のダウンベスト,ざっくり太いボーダーT。

カーキっぽいワークパンツに,ブーツはレッドウイングか。

 

この二人の装いから,季節は春ではないかと察せられる。

 

後ろの崎山龍男(ドラム)は黒のジャケットにダーク・トーンのインナーで落ち着いたコーディネートだ。

 

この写真だけの印象からすると,スピッツとはカジュアルなファッションで,さぞ軽やかなポップ・ソングを奏でるグループという印象を持たれるだろう。

 

しかし,スピッツのことをよく知っているあなたは,上の写真に違和感を持つだろう。

 

そう。

 

「なんであの男がいないの?」と。

 

 

実はトリミングで見えなくしていたのだが,本当の写真はこちらである。

スピッツにはもう一人,ギターの三輪テツヤがいる。

 

三輪はサングラスに長髪,柄物のシャツにギターを携えている。

お世辞にも,キャッチーな風貌とは言えない。

アコギを抱えているが,パンクでも鳴らしそうな雰囲気だ。

 

三輪も含めた写真を見ると,彼らの音楽を聴いたことがない人は,いったいスピッツはどんな音楽を奏でるのか想像するのが難しいだろう。

 

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もう一枚写真を紹介する。

こちらは,先ほどの写真から20年ほど時間が経過した,2010年代頃の写真である。

メンバーも50歳前後となっている。

 

3人ともやや地味ではあるが,全体的に落ち着いた雰囲気である。

老成した渋い曲を鳴らしそうである。

 

 

しかし,スピッツにはもう一人,欠かせないメンバーがいる。

Spitz CYCLEHIT 1991~2017ブックレットより

そう,三輪テツヤである。

三輪を加えた写真はこの通りである。

 

グレイのジャケットに柄物のシャツ。

髪型はツーブロック(というか半分は坊主)の長髪,髭は金髪とド派手である。

 

これだけメンバーの風貌がアンバランスなグループも,珍しいだろう。

 

実は最近読んだ本に,このスピッツメンバーのファッションのアンバランスさに言及した本があった。

 

これはまったく冗談ではないのだが,スピッツのメンバー4人のルックスは,”とげ”と”まる”に引き裂かれる中途半端さを見事に表象している。

草野マサムネ田村明浩,﨑山龍男の3人のファッションは,一般的な日本人男性の服装コードから外れないものとして整えられている。彼らがまとうシャツにしろ,Tシャツに白,パンツにしろジャケットにしろ,街を歩いていて目を引くものではない。

例外は三輪テツヤで,サングラスに奇抜な髪型(時期によってモヒカンだったりドレッドだったりするが,強い特徴がある点で一貫している)のスタイルは,ほかの3人と並ぶとあからさまに浮いている。

おそらく三輪本人の趣味嗜好に乗っ取ったスタイルだろうが,彼は視覚効果の面で”とげ”の役割を確実に担っている。

スピッツ論」伏見瞬 イースト・プレス

 

筆者は,スピッツの楽曲の特徴は”とげ”と”まる”を内包した,「分裂」にあると主張している。

 

例えば,2019年にリリースされた現時点での最新作「見っけ」に収録されている「ありがとさん」は,いい思い出も切ない思い出もすべてひっくるめても,「ありがとさん」という一言で表現しているラブソングだが,この曲はサウンド面も含めて”まる”の一つの形と言えよう。

 


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一方で,以前当ブログでも紹介した「1987→」は,自分たちが「はぐれもの」であることを自覚したうえで,これからも続けていくことを誓った”とげ”の表現であると言えそうだ。

 


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この”とげ”の視覚的役割を担うのが三輪で,”まる”の役割が他3人であるというのが筆者の主張である。

 

確かに視覚的には,そのような役割になるかもしれない。

 

しかし実際の三輪の人柄ではそうではなさそうだ。

以前のインタビューで,草野がつくる楽曲を全面的にリスペクトしていると語ったり,中学時代には同級生だった田村とバンドを組んでいたそうだが,バンド名は「田村バンド」であったり,決して自分を前に出そうとはしない”まる”の役割を担っているところが非常に微笑ましい。

 

この視覚とのギャップもまた,彼らの魅力の一つなのと思う。

 

周期的に,そろそろニューアルバムの完成が待たれるところです。

楽しみです。

 

 

 

1980年代のザ・クラッシュのファッション

「村上ラヂオ」を初めて聴いた

先日,早朝にニュースサイトを閲覧していたら,1月29日に放送された「村上ラヂオ」についての記事を見つけた。

 

その日の特集が「1980年代ヒット・パレード」で,マイケル・ジャクソンやらヴァン・ヘイレンなどのヒット曲を流していたそうで,サイトの一番下に出ていた「ラジコなら1週間無料視聴」というリンクに心を動かされ,早速ラジコをインストールしてみた。

 

するとまあ,真夜中の仕事部屋に訥々とした村上さんの声が響き渡るわけです。

原稿を棒読みしているような平坦な声で,曲間に感想のような紹介のような一言を入れて後はひたすら曲を流していく。

 

80年代と言えば村上さんは,経営していたジャズバーを閉め,執筆業に専念し始めた頃で,ジャズからは少し離れてポップスやクラシックを多く聴いていたということだ。

自分が愛聴していたポップスや、リクエストのあった曲とのエピソードをぼそりと呟きながら曲をかけておられた。

 

おかげで1時間,私が物心ついた頃(1983年生まれです)に聴いていたと思われるヒット曲たちにどっぷりと浸かることができた。

 

紹介されていた曲がそうだからかもしれないが,何だか煌びやかで華やかな曲が多い印象だ。

 

というわけで,ここ数日私の興味は80年代ポップスに移り,マイケル・ジャクソン「スリラー」やU2「ヨショア・ツリー」などを聴いているのです。

 

 

クラッシュ好きだったよなあ・・・

以前,パンク・ファッションについての記事を書いたことがあり,セックス・ピストルズジョニー・ロットンを取り上げたこともあるが,パンクバンドとしては,実は私はクラッシュの方が好きなのである。

 

 

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クラッシュはピストルズと同時期に活躍したパンクバンドだ。

 

ピストルズが早々に消滅したのに対し,クラッシュのほうは70年代から80年代にかけて,音楽性を多様に変化させながら,息の長い活動を続けた。

 

彼らのアルバムでは,最高傑作と名高い「ロンドン・コーリング」(1979年)も好きだが,今回は1980年代にスポットを当てているので「サンディニスタ!」(1980年)をヘビー・リスニングしている。

The Clash「SANDINISTA!」(1980)

このアルバムは,音楽的にはパンクよりもレゲエの要素の方が多くなっている。

「パンク」と言えば,「速い」イメージだと思うが,このアルバムはテンポもスローな曲が多い。

 

36曲という膨大な情報量が詰め込まれたアルバムで,「取っ散らかっている」と不評を囲うことも少なくなかったようだが,クラッシュというバンドの音楽的多様性やユーモアが詰め込まれていて,私は嫌いではない。

 

ところで私がクラッシュというバンドを支持する理由は,楽曲のよさもあるのだが,その見てくれのよさもある。

 

お洒落なのだ。

 

クラッシュと言えばボーカルのジョー・ストラマーは有名で,フジロックにも何度も出演しており,日本にもファンは多い。

ギターのミック・ジョーンズは,あのリバティーンズの1stのプロデュースをしていたし,ベースのポール・シムノンは2010年代にブラーのデーモンとバンドを組んで一枚アルバムを出していた。

 

しかし私がクラッシュのメンバーで最も(ファッション的に)注目しているのは,ドラマーのトッパー・ヒードン(ジャケ写の左から2人目)だ。

 

写真が小さくて少し見づらいが,コートやスラックスの全体的なシルエットがとても洗練されている。

The Clash「SANDINISTA!」(1980)ブックレットより

こちらはブックレットの写真。

トッパーはやはり左から2人目。

大き目のキャスケットを斜めに被り,こちらもなかなか決まっている。

 

薬物中毒で脱退するまで,在籍期間は5年ほどと短かったが,彼がバンドにいた期間はまさしくバンドの絶頂期と重なる。

 

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最近のファッション・トレンドとの比較

「サンディニスタ!」のジャケ写のトッパーのファッションと,ここ最近のヨーロッパのファッション・トレンドを比較してみる。

まずこちらは,ベレー帽とトレンチ・コート,短めのスラックスというスタイル。

クラシックなスタイルだけど,赤のボーダー・チェックが外しとなっている。

「メンズ・ファッジ」2020.03

「サンディニスタ!」ジャケ写のトッパーもベレー帽っぽい帽子にコートを羽織っている。白黒なので色使いははっきりしないが,ベストが赤なんかだと,いいアクセントになりそう。

 

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「メンズ・ファッジ」2020.03

こちらはニット帽にオーバー・サイズのピー・コート,ハイネック・セーターをタックインしてスラックスは少し大きめのサイジングになっている。

 

全体的に渋めの配色だが,スラックスのサイズ感は,こちらの方がトッパーのスタイルに近いようだ。

 

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こちらは,クラッシュ5作目「コンバット・ロック」(1982年)のブックレット。

 

トッパー(左から2人目)は袖なしのシャツ姿。

 

右端のミックのスタイルはサスペンダー付きのホワイトジーンズに,大きく前をはだけたシャツ姿。

煙草をくわえる姿がたまらなく渋い。

 

流行は繰り返すものなので,現在のトレンドもまた移ろっていくだろうが,トレンドを意識しつつも自分なりのスタイルを持っていたのがクラッシュの面々だったのではないかと思う。

 

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それでは,最後にクラッシュの「サンディニスタ!」から「ポリス・オン・マイ・バック」。

 

カバー曲らしいけど,これ聴いたらワクワクします。

 

土曜日ですしね。


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言い訳にかえて~スマホラマダンと高橋さんの死とチック・コリア~

はじめに,言い訳として 

 

皆さん,お久しぶりです。

 

約三週間ぶりの更新になります。

ブログを始めてから,これだけ長い期間何も書かなかったのは初めてです。

 

何も書かないどころか,スマホ自体をほとんど見なかった三週間。

 

先々週の一日のスクリーンタイムの平均は,45分。

先週の平均は1時間。

 

何をしていたかと言うと,スマホラマダンである。

極力スマホを見ない生活を送るようにしている。

 

もともとスマホを見る時間は長い方ではなかったが,それでも休日はスクリーンタイムが3時間を超え,目の前にいる家族との関わりがついおざなりになってしまったり,仕事のために取っておきたいクリエイティビティがブログのネタ思考に取られていたり,まあいろいろと弊害も出ているなあと思って,ちょっと生活を見つめ直してみようと思ったわけだ。

 

スマホラマダン期間中に起こったこと

スマホを見なくなって三日後くらいに,高橋幸宏さんが亡くなった。

 

脳腫瘍を患っているのは知っていたし,メタファイヴの活動終了も多分体調を考慮してのことだと想像してはいたが,それにしても早過ぎるお別れとなった。

 

追悼記事を書くことも考えたが,高橋さんやYMOに関してはこれまでも結構取り上げてきたし,しばらくブログからも離れようと考えていたので,関連記事を少し見るくらいに留めていた。

 

 

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スマホラマダンを始めて1週間ほどたった頃,久しぶりに自分のブログを再訪してみたら,1月15日周辺にPV数が跳ね上がっていた。

 

これは高橋さんが亡くなった直後なので,その影響だったようだ。

YMOやメタファイヴ関連の記事がよく読まれていた。

 

どうせ一時的な現象だろうし,そのうち落ち着くだろうと思って,またしばらく放っておいた。

 

それから2週間ほど経って,また久しぶりにブログを再訪してみると,一時期よりは落ち着いたものの,PV数は(私のブログの平均値に比べれば)かなりの高水準をキープしている。

 

週に2,3回記事を書いていた頃よりも,書かなくなってからの方が記事を多く見てもらっているという皮肉な現実。

 

 

スマホラマダン期間中に聴いていた音楽

スマホを見なくなっても,音楽は好きなので相変わらず車の中,朝の仕事中などに聴いていた。

 

1月に一番聴いたのは,チック・コリアである。

昨年最後の記事で紹介していたが,「リターン・トゥー・フォーエバー」を何回も繰り返し聴いた。

4曲収録中の4曲目「サムタイムス・アゴー(ラ・ヴィエスタ)」。

20分以上の壮大な組曲だけど,ラスト6分から訪れる3回のピークタイムが本当に心を揺さぶられる。

このラスト6分のクライマックスに酔いしれるために,アルバムのそれまで37分を腰を据えてじっくり聴く必要がある。

 

アルバム・バージョンとは少し違うけど,紹介しておきます。

 


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結論として,スマホラマダンはもう少し続けるだろうし,みなさんの元を訪れる回数も減るとは思いますが,書きたくなったらまた書くと思います。

 

ずいぶんゆっくりとした執筆ペースになると思いますけどね。

 

ゆるゆるとお付き合いしていただければと思います。

 

では,また。

ポール・マッカートニー・アンド・ウイングス〜古くて素敵なクラシック・ロック〜

令和5年に入ってから始めた「古くて素敵なクラシック・ロック」シリーズ。

 

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第3回は,ポール・マッカートニー

 

言わずと知れたザ・ビートルズのメインソングライター,ポール。

 

ビートルズ好きな人とは必ずと言っていいほど,

「ジョン派?ポール派?」

という話をするが,私は間違いなくポール派だ。

 

理由を一つ挙げるとすれば,「ポップだから」。

これに尽きる。

 

ポップ・ソングの引き出しが驚くほど多く,そして深い。

最近の作品を聴いていても,この人の才能は枯渇することを知らないのかと本当に思わせてくれる。

 

まあ,キャリアの長い人だし作品も多いので,良し悪しはあるにせよ,彼がポップミュージックにもたらした功績というのは計り知れないだろう。

 

今回は,そんなサー・ポールの作品の中からウィングス時代の3作品をご紹介。

 

 

ちなみにウィングスとは,ポールがビートルズ解散後に妻のリンダ,デニー・レインらと結成したバンド。

 

活動期間は10年程度だが,ポールのビートルズ解散後のキャリア史上では,最も人気・セールス共に充実していた時期であろう。

 

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「バンド・オン・ザ・ラン」(1973年)

まずは傑作,「バンド・オン・ザ・ラン」から。

 

表題曲でスタートする作品だが,最初から劇的な展開の曲で華々しく幕を開ける。

 

いつか,当ブログでこの曲を自分の結婚式のオープニングにして,

「脱獄の曲を結婚式で使いおって!」

とビートル・マニアの先輩からお叱りを受けた話を書いた記憶がある。

 

でも,この「バンド・オン・ザ・ラン」という曲の痛快な開放感というのはいつ聴いても最高だ(今も聴きながら書いている)。

 

また,このアルバムではポールがビートルズ時代から用いている「リプライズ」(ある曲の一部を,他の曲の合間に挿入する手法)が再び使われており,アルバムの物語性や統一感を高めるのに一役買っている。

 

ちなみに,この手法は,後にオアシスのアルバムでも採用されている。

 

アルバム全体の完成度はかなり高い。

「ジェット」など映えるシングルは今でもポールのライブではセットリストの常連。

 

脇を固める「ブルー・バード」などの佳曲もいい味を出している。

 

ポールのソロキャリアの中では間違いなく,一番にお勧めできる名盤。

 

 

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「ヴィーナス・アンド・マーズ」(1975年)

「ヴィーナス・アンド・マーズ」もなかなかの秀作だ。

 

スタートの「ヴィーナス・アンド・マーズ」から「ロック・ショウ」への流れは,「バンド・オン・ザ・ラン」のスタートをさらにダイナミックにした感じ。

 

アルバム中盤「マグネット・アンド・チタニウムマン」。

おそらくシングルでもない無名の曲だろうが,味があって好きだ。

朗々と歌い上げるポールと,リンダらコーラスの掛け合いが渋い。

 

このような小品のような曲が散りばめられているアルバムというのは,ぴりっと締まる。

 

 

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「スピード・オブ・サウンド」(1976年)

前二作に比べると,全体的に静謐な印象を受ける作品。

 

正直,ロックのダイナミズムを突き詰めた「バンド・オン・ザ・ラン」と「ヴィーナス・アンド・マーズ」に比べると地味な感じがして,そこまで聴き込んではこなかった。

 

しかし,今回久しぶりに聴き返してみると,この「スピード・オブ・サウンド」というアルバムに,これまでとは異なる印象を持った。

 

全体的に抑えめではあるのだけど,アコースティックギターの素朴な調べ,リンダが奏でるピアノの音色,そしてポールの「歌」が沁みてくるのだ。

 

一人で静かに読書をしながら聴く分には,もってこいのアルバムかも知れない。

 

それと,「シリー・ラヴ・ソングス」は必聴です。名曲。

 

 

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私は2015年,ポールが京セラドームでライブをした時には,午後から仕事を休み,新幹線で一路大阪を目指し,会場に乗り込んだ。

 

そのライブの直前の様子を,読書ノートに記録していたので引用する。 

 

にわかに会場全体がざわついてくる。正面に見えるスクリーンに少年が映し出されている。おそらく,ポールの少年時代の写真だろう。童顔と言われるポールだ。人懐こい笑顔は今と変わらない。

その後、ビートルズ時代とウィングス時代と,時を経てポールの姿が次々と映し出される。しかもこのスライド,かなりお洒落につくりこまれている。

最後に現在のポールの写真が現れ,消えたところで,客電が落ちた。

たまらず歓客が叫ぶ。奥の暗幕が動いた。

ポールだ!

軽やかにステージ中央に歩いていくと,一曲目のイントロが響き渡る。

「マジカル・ミステリー・ツアー」だ!!

 

このライブでのポールは圧巻だった。

背に演出用の炎を浴びても,涼しい顔でギターを弾き,歌った。

ステージを所狭しと動き回り,三時間の間一滴の水も飲まなかった。

 

ポップ・スターとしてのプロ根性を見た感じであった。

このライブをやり切るために,普段から相応の努力をしているだろうことは想像できた。

 

しかも,それを微塵にも感じさせない程,このひとは楽しそうに歌うのだ。

 

「オオキニ〜!」

 

と軽やかに手を振って去って行った,サー・ポールの後ろ姿は忘れられない。

 

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最後に,「ヴィーナス・アンド・マーズ」から「マグネット・アンド・チタニウムマン」をご紹介。

 

有名曲ではないけど,こういう味のある曲がアルバム全体のクオリティを引き上げていると思います。

 


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