転がり続けると決めた男たちの勝利宣言
なんじゃこりゃ?
買い求めてから二週間,ずっとカーステレオでかけっぱなしにしてるけど,今日自分の中で何かが弾けた。
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この「二週間」というのは,新しく聴くアルバムの自分なりの評価が定まってくるタイミングだと思っていて,ほとんどはそれくらいのタイミングで「そろそろいいや」と思ってラジオに切り替えたりBluetoothにして聴き慣れた別の楽曲を流したりするものだ。
春に出たブラーや夏のジェイソン・ムラーズ,秋口に出たケミカルブラザーズの新作も残念ながらそっちの仲間だった。
それなのに,このアルバムは何だ。
このアルバム。
バンドの屋台骨であるチャーリー・ワッツを失っても,60年の歴史を経てもなお転がり続けるロックンロール・バンド。
彼らの18年ぶりのオリジナル新作アルバム「Hackney Diamonds」を購入する際は,正直ちょっと躊躇いがあった。
"前作"である05年「a bigger bang」の印象があまりに薄かったのもある。
悪くなかったけど,彼らが音楽シーンの真ん中に燦然と輝いていた70年代(特に前半)の綺羅星の如き名盤群と並べると,どうしても見劣りがするのは仕方がなかった。
だから,昔の馴染みで買ったようなものだ。
馴染みといってもたかだか18年程度の愛聴歴は,彼らの全盛期を知る方たちからすれば,青二才同然であることもわかっている。
しかし,私だってそれなりの熱量で彼らの作品と向き合ってきたのは間違いない。
20代前半の独身一人暮らしの時代には,深夜まで仕事をした後,自転車を飛ばして近くの海まで行った。
砂浜に腰掛けて煙草をふかしながら缶コーヒーを飲みながら,頭の中を空っぽにしてストーンズを聴いた。
あの頃のBGMは大体「メインストリートのならず者」だった。
缶コーヒーは週末には缶ビールに変わることもあった。
対岸には海の中道にあるホテル・ルイガンスの灯りがぼうっと見えて,私は暗い夜空に向かって何度となく白い煙を吐いた。
煙草を2,3本吸うと「ならず者」を聴き終えていた。
私のリアル青二才時代の回想には,必ずストーンズの曲は登場する。
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今回の新作を聴いて最初に思ったのは,
「70年代の雰囲気に似てる」
だった。
焼き直しということではなくて,あくまで雰囲気。
「ホンキー・トンク・ウィメン」の奔放さ。
「ロックス・オフ」のいかがわしさ。
ストーンズが一番ストーンズであった時代の,あの雰囲気に近い。
別に無理してやってるわけではなくて,
「やっぱ俺たちにはこれしかできねえよ」
と開き直ってるような,そんな意思を感じる。
そんな曲の中でも,「Mess it up」は異色作。
ディスコ調のナンバーだが,不思議とミックの声音と合っていて,一度聴いたらなかなか耳から離れない。
車の中でかけていたら,三男が
「メセラ♩メセラ♩」
と口ずさみ始めた。
3歳の子供に即鼻歌を歌わせるなんて,名曲に決まってるじゃねえかと思いつつ,私の脳内でも「メセラ♩メセラ♩」のループが止まらない。
そうして,約8か月ぶりにブログを更新するに至った。
どうです。
名作に決まってるでしょう?