2022年iTunes私的再生回数ベスト5
今年もあと早いもので,残り一週間を切った。
このブログを書くようになってから一年とちょっと。また昔みたいに音楽をよく聴くようになった。
実は昨年まで5年近く,贔屓にしているアーティストの新作を別にすれば,聴いたことのないジャンルやニューカマーの音楽に触れる機会が激減していた。
新しい音楽に触れるのはわりとエネルギーが要るものだし,自分の好みに合わない可能性もある。
それよりは,「いい」と決まっている安全パイを選んだ方が確実だ。
フジロックに毎年参戦していた頃は,「予習」しておくとより楽しめるので,積極的に新しい音楽に触れていた。
そのフジロックにも行かなくなって早5年以上。
私が新しい音楽を追求しなくなった年月とちょうど重なる。
今回の記事を書くに先立って,昨年の今頃投稿した記事を読んでみた。
昨年のiTunes再生回数ベスト5のうち4組は10年以上前から愛聴してきたアーティストたちだった。。
YMO,グレイプバイン,プライマル・スクリーム,ベックという面々だ。
グレイプバインなんて,高校生の頃からずっと追いかけている。
昨年の結果に対して,今年はだいぶ様相の異なるランキングとなった。
結論から言うと,ベスト5のうち3組が今年に入って出会ったアーティストたちだ。
フジロックには相変わらず行けてないが,ブログを書き続けることが,私の音楽的興味を広げることに繋がっているようだ。
これは喜ばしいことだと思う。
幾つになっても,「初」がつくことにはワクワクするものだから。
ところで,昨年のランキングと比べると再生回数が少なくなっていることに気づかれる方もおられるかも知らない。
このランキングは,純粋にiTunesの再生回数を基に集計している。
今年の6月までは電車通勤だったから,毎日電車の中でiPhoneで音楽を聴いていた。
しかし,6月の下旬からレンタカー通勤が約4ヶ月半続いた。
その間は,通勤時間はいつもカーラジオをかけていた。
だからiTunesの再生回数も,この期間はほとんど伸びていない。
音楽は毎朝,自室での仕事中にチボリのオーディオで聴いていたが,当然のことながらその分は集計に入っていない。
そんな事情で,夏ごろよく聴いていたレッチリやジャック・ホワイトの新作はランク外になってしまっている。
ちょっと残念だけど。
11月に新車がきてからは,通勤時はBluetooth機能で聴いているから再びiTunes再生回数が伸びてきた。
いつものことながら,前置きが長くなってしまった。
それでは,今年のiTunes私的再生回数ベスト5の発表です。
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1位 The1975「外国語での言葉遊び」(36回)
1位はThe1975の「外国語での言葉遊び」。
The1975には今年初めて出会った。
と言うか,つい二週間ほど前に初めて彼らの作品を買い,その音楽に触れたばかりだ。
この二週間,ひたすらにヘビーローテーションしまくって,あっという間に今年の再生回数1位になってしまった。
掛け値なしに名盤だ。
UKロック好きなら漏れなく好きになるだろう,「メランコリックで内省的な」部分を持ち合わせるバンドだ。
敢えて「持ち合わせる」という表現にしたのは,まだ彼らがどんなバンドなのか掴みかねているから。
新作を聴いた印象だけなら,「メランコリックで内省的な」側面がある一方で,コールドプレイ的にスタジアム級のアンセムとなり得る曲も作れるスタンダード路線か?と思わせるような側面も併せ持つ。
まあそれも,これからディスコグラフィーを遡って聴いていくことで段々と明瞭になってくるだろう。
それも,来年の大きな楽しみの一つだ。
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2位 The Chainsmokers「So Far So Good」(29回)
年末にThe1975に抜き去られるまで,半年ほど再生回数1位を守り続けてきたチェンスモの最新作。
彼らは2010年代,最も稼いだDJと言われている。
2000年代後半から2010年代半ばにかけて,音楽業界の中心的なムーヴメントであったEDMも過去のものとなり,ダンス・ミュージックを取り巻く状況もだいぶ落ち着いてきた。
チェンスモが頭角を表してきたのは,EDMがムーヴメントとしてのピークを過ぎていた2010年代半ば以降である。
流行りの季節を過ぎても,彼らの音楽がたくさんの人に支持されているのは,そこに何かしら普遍的な魅力を感じてのことだろう。
彼らの鳴らすダンス・ミュージックには,「侘び寂び」がある。
しっかりアゲて盛り上げる部分も勿論あるが,それ一辺倒にはならずに,きちんと引くところはわきまえているところに好感が持てる。
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3位 Kirinji「Crepuscular」(21回)
キリンジの「Crepuscular」のリリースは,実は2021年の12月なのだけど,私が行きつけのCD屋で見つけたのは年明けなので2022年のランキングに入れることにした。
私が初めて買ったキリンジのCDだ。
この作品を皮切りに,「スウィート・ソウルEP」や「11」など,デュオ時代,バンド時代のキリンジの作品を遡って聴いていった。
今年前半は,キリンジの魅力を発見して,アーティストとして様々な形態を経る中で変化してきた音楽性にどっぷり浸かることができた。
キリンジ(堀込高樹)の紡ぎ出す音は,歌謡曲のように親しみのあるメロディーなのだけど,くどくなり過ぎず,スタイリッシュに聴かせてくれる。
アレンジの妙であろうか。自己プロデュース能力がとても高い人のように思える。
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4位 Liam Gallagher「C'mon You Know」(17回)
リアム・ギャラガーがいいアルバムを作ってくれると,やはり嬉しい。
私にとって,リアムは永遠のロックンロール・ヒーローなのだから。
それにしても,このアルバムジャケットは最高である。
オーディエンスの波に入って,一緒に騒ぐロックンロール・スター。
しかも客が皆,若い。
リアムの「歌」を必要とする人は,まだ世界にたくさんいる。
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5位 サカナクション「アダプト」(15回)
久しぶりに,「アダプト」を聴いてみた。
いいアルバムだ。
山口一郎曰く,サカナクションの音楽には「ダンスと文学の融合」というコンセプトがあるそうだ。
前作「834.194」がダンス寄りのアルバムだとしたら,今回の「アダプト」は文学寄りのアルバムと言ってもいいだろう。
以前レビューにも書いたけど,このアルバムを聴いて最初に連想したのは,フランツ・カフカの小説「城」だった。
アルバム全体を通して伝わってくる「閉塞感」が,「城」を読んだ時の感覚に似ていたからではないだろうかと思う。
コロナ禍という社会背景もあるのだろう。
このような形で,作品に昇華できる彼らの仕事に拍手を送りたい。
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2022年iTunes私的再生回数ベスト5でした。
本来なら,ここにレッチリやジャック・ホワイト,アークティック・モンキーズらが絡んでくるはずだっただろう。
そう考えてみると,今年は新旧ともに様々なアーティストがいい作品を多くリリースしてくれた一年だった。
レッチリやジャックはなんと二作も出してくれた。
こんな年はそうそうないだろう。
そして,新しく出会ったアーティストも多かった。
そのきっかけの多くをこのはてなブログでいただき,感謝感謝です。
来年はどんなアーティスト,曲に出会えるのか,今から楽しみです。
最後に一曲。
ランク外(7位)にはなったが,ジャック・ホワイト「Fear Of The Dawn」より「EOSOPHOBIA」。
印象的なリフが炸裂しまっている。
アルバム後半にはこの曲のリプライズがあり,作品全体の緊迫した空気感を象徴する曲となっている。
狭い路地を体勢を低くして駆け抜けていくような,孤独な疾走感。
こういう,隠れた名曲があるからやめられない。