やっぱり服は実店舗で買いたい〜回想より〜
今から10年ほども前だろうか。
私には行きつけの路面店があった。
城下町のお濠のすぐそばの通りに,ひっそりと佇む古ビルの一階にその店はあった。
看板はなく,白い壁にまっさらなウィンドウだけが特徴と言えば特徴で,初めて見つけた時には,洋服屋なのかどうか判別がつかなかったくらいだ。
こういう店に入るのは少し勇気が要る。
意を決して入ってみると,中にいたのは小柄な女性店員だけだった。
ニット帽に白いカーディガンを羽織った店員は,こちらににこりと笑いかけて,
「いらっしゃいませ」
と一言声をかけてくれた。
店内を見回すと,壁掛けの棚にスウェットやニットなどが並んでいる。
床に平置きにされたボトムスもあった。
全体的に品数が多い訳ではないが,それらが整然と特に主張せずに展示してあり,清潔な印象を受けた。
どの服も無地でシンプルなデザインだったが,量販店の服にはない品の良さを感じる。
値札をめくってみると,予想通りなかなかいい値段がした。
店員に話を聞いてみると,この店はそもそも,インターネット販売が主で,店内にあるのはその在庫なのだそう。
ものが良いのに,やけにこざっぱりした店内の印象はそのためかと思った。
時期的に暖かくなってきた折でもあったので,薄手のニットを購入した。
しわが目立ちますが,今でもたまに着る服です。
胸ポケットぽいデザインが特徴。
これ,実はよくコメントをくださるYMさんのブログで紹介されていたブランド「ニュアンス」のもの。
細身すぎない計算されたシルエットで,重宝している。
このお店で購入した「ニュアンス」の服は他にもあって,このパーカーも同じ頃買った物だ。
とにかく羽織ったときのシルエットがきれい。
下にセント・ジェームスのボーダーバスクシャツあたりを合わせると,ほどよいカジュアル感が出る。
他にも名品がいろいろあった。
実店舗ではなかなか見かけない「チマラ」の服も結構買った。
「チマラ」のカーディガン。
シンプルなつくりだが,当時から着丈が少し長くて,今のトレンドにちょうど合ったデザイン。
10年前の服なんですけどね。
この肘当てが好きなんです。
こちらの「チマラ」のアウターは高かった。
ワーカウェアっぽい雰囲気も出てますが,結構汎用性の高いアイテムです。
どのアイテムも20代半ばで買い求めたモノだけど,35を過ぎてからようやく似合うようになってきたかなと思う。
そういう意味で,間違いのない買い物だったと思う。
このお店で買った服で,捨てるもしくは手放したものはまだ一つもない。
どの服も大切に着ている。
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この店では,当時付き合っていた女性(今の妻)にプレゼントするための服を買ったこともある。
どれにしようか迷っていた私に,彼女と似た背格好だった女性店員がわざわざ代わりに試着して見せてくれたこともあった。
妻は今でも,冬になるとその時にプレゼントしたカーディガンを着てくれている。
そういうもろもろの思い出って,実店舗に通ったからこそできるものだと思う。
もう今ではそのお店はなくなってしまっているけど,そこで買った服はまだまだ私のコーディネートを助けてくれている。
最後に。
YMさん,勝手にお名前を出してしまい申し訳ありませんでした。
でも,おかげで大切な思い出を振り返ることができました。
感謝しています。