プライベート・アイズ
今はどうか知らないが,私の学生時代にはやたらと洋楽のオムニバスCDが売れていた。
「ダンス・ヒッツ」や「70sロック・ヒッツ」など,大衆受けするようなロックやダンス・ナンバーなどを集めた企画物がよく出ていた。
私はそういったCDにはほとんど手を出したことがないが,唯一持っているのが「FINE」というオムニバスCD。
テレビでタイアップされた洋楽ヒット・チューンを集めたオムニバス盤で,CMでもよくかかっていた。
確か夏前に発売され,ベイ・シティ・ローラーズやシルヴィ・バルタンあたりのヒット・ソングが収録されている。
ヒット・ソングの寄せ集めではあるが,なかなか聴き応えのあるナンバーが数多く入っていて,洋楽の入り口としてはお薦めできる内容だ。
この「FINE」のスタートを飾る曲が,ホール&オーツの「プライベート・アイズ」だ。
キャッチーなメロディと小粋な歌詞に,高校生だった私もしっかりはまった。
ホール&オーツのベスト盤も買い,過去のディスコグラフィーを遡った。
そういえば,昔読んだ村上春樹の小説にも,80年代前半の世の中の空気として
「ヒット・チャートはマイケル・ジャクソンとホール&オーツの曲ばかり」
みたいな記述があった。
私が生まれた頃,ハード・ロックとパンクの季節が過ぎ去り,時代の本流はR&Bだったのだ。
ただ,初期のホール&オーツのアルバムを聴いていくと,明らかにアースウインド&ファイヤーなどダンス・ミュージックの影響を受けたと思しき楽曲もあり,さらに80年代になるとそのポップ感覚に磨きをかけ,「キッス・オン・マイ・リスト」などの名曲を立て続けに生み出していく。
彼らの音楽は,R&Bをベースにしながらも,ダンスやロックの要素をうまく取り入れたものだ。
時代の空気を鋭敏に感じ取っているが,その楽曲には今聴いても引き込まれる確かな普遍性がある。
私が持っているホール&オーツのベスト盤の帯には,こんなキャッチコピーが書かれている。
昔聴いてた人も,新しく知った人も,みんなだ〜い好き!ホール&オーツ!
「I see you...」
で始まるその曲は,秋の気配とやがて燃え盛る恋の始まりを厳かに告げるよう。
肌寒さが増してきたこの季節に,なんだかぴったり合うような曲だと思います。
やっぱり好きだな,ホール&オーツ。