その名を叫ぶとき
今週のお題「叫びたい!」
「叫ぶ」という行為は,普通に生活してたらなかなかしないわけで。
つまり,「叫ぶ」行為が行われるとしたら,それは非日常の中で行われるわけで。
私が「叫ぶ」のは,ライブに行ったときくらいだろうか。
でも思い返してみると,叫んでいたのも20代まで。
30を過ぎてからは,フジロックではモッシュピットに寄り付かなくなり,後方エリアから折り畳み椅子に腰掛けて,ビールをちびちびやりながら…。
完全にオジサンですね。
それでも,たまに
「ひょー!」 とか
「いえー!」 とか
意味不明なかけ声は出すのだけども。
これも酔っ払ってね。
一時期,共にフェスやライブハウスに足繁く通っていたKとの間で流行ったのが,バンドの後方メンバーの名前を叫ぶという試みだ。
例えばオアシスなら,普通
「リアムー!」 とか
「ノエルー!」 とか声がよく上がるんです。
「お兄ちゃーん!」とかね。
そこで,
「ゲムー!」とやる。
いや。
ゲム・アーチャーだって,歴としたロックンロール・スターですよ。
オアシス加入前には,ハリケーン#1というバンドでフロントマンだったらしいし。
オアシス加入直後のライブ(「Famillier To Millions」2000年に収録)では,上下デニムにサングラスという超いかつい格好で登場しておきながら,1曲目の「Go let it out」のギターソロを弾き終わると,傍目にも分かるほどほっとした様子を見せてくれたゲム。
ノエルとリアムの兄弟が喧嘩別れした後も,リアムのバンドに所属しながらノエルのソロライブのサポートを頼まれると,快く引き受けていたゲム。
そんなゲムの名を叫んで何が悪い。
「ゲム―!」
何度も叫びましたよ。
ゲムは一顧だにしてくれませんでしたがね。
代わりに,周りのオーディエンスが,「何なんだこいつは?」という顔でこちらをチラチラ見るのです。
誰もゲムの名を呼ぶ奴なんていやしない。
ゲムだって,たまには名前呼ばれたいと思うんだけどな…。
こうしてふり返ってみると,オアシスのライブの時には野太い声しか聞こえなかった。
圧倒的に野郎人気が高いバンドなのだろう。
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学生の頃,アリーナでのライブでセキュリティのバイトをしたことがある。
一度オレンジレンジのライブで会場に入った時には9割5分女子だった。
黄色い声援しか聞こえなかった。
一番多かったのは「ヤマトー!」だったかな。
チューリップのライブで警備を担当したこともある。
この時には壮年の熱気がもう,ほんとに。
一応全部席があるんだけど,全員ずっと立ってました。
男女比は半々なんですよね。
「わーがまーまはー!おとこのーつみー!」
が一番の盛り上がりだったかな。
個人的には,「青春の影」がベストでした。
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オレンジレンジの話の後日談。
警備のバイトをしていた当時は若かったし尖ってたので,「アイドルだろ。」くらいにしか思ってなかった。
ところが最近テレビで久しぶりにオレンジレンジを見たら,とてもいい感じに丸くなっていて,「こいつらも頑張ってきたんだよな…。」と同世代の妙な親近感みたいなものが湧いてきた。
オレンジレンジさんからしたら,「お前が頑張れよ。」という感じだろうけど。
そういえば,GLAYとかラルクとか、昔はどちらかというとアンチだったのだけど、最近テレビで見かけると「まだ頑張ってるな」と逆に励まされてしまう。
何だかんだ言っても思春期に流行った楽曲はずっと耳に残ってるものだ。
20年経ったら変わるものですね。
ライブで,また腹の底から叫ぶことができる日は,きっとそう遠くない未来に待っていると信じて。