だからこそ,星野源はポップなのだ
ここのところ仕事が立て込んでいて,ゆっくりテレビを観る暇がなかったがようやく少し落ち着き,11月に録画していた番組を観ることができた。
林修先生の「初耳学」。
ゲストは星野源だった。
彼が10年ほど前にくも膜下出血で倒れ,九死に一生を得た話は有名だけど,彼の死生観みたいなものを聞くことができるインタビューだった。
「あの頃の自分みたいに病気と闘ってる人に,『ああ,こいつ(星野源)は楽しそうにやってるな』と伝わればいいかなと」
自身の活動についてこんなことを語っていた。
希望を与えたい,とか大仰な話ではなく,かつて生死を彷徨う病に倒れながらも生還した男が,今では心の底から楽しんで仕事をしている。
その様子を見ていると,何だか勇気をもらえる。
だからこの人はこんなに楽しそうに仕事をするんだと思った。
もうひとつ,深く納得したことが幼少期の音楽体験。
幼少期には家の中で,ずっとジャズがかかっていたそうだ。
彼のつくる音楽の要所で入るジャズテイストのピアノはその影響かと思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以前の記事で星野源がマイケル・ジャクソンの影響を受けているのではないかと書いた。
「イエロー・ダンサー」収録の「ウィークエンド」という曲には,特にその影響が顕著だ。
どうでしょうか。
曲調が,とかではなく単純にファルセットの使い方なんかがよく似てるなあと思うのです。
それにしても,動画で観ると若い頃のマイケルってやっぱり格好いいですね。
マイケルだけではない。
私は星野源の「Same Thing」という曲もすごく好きなのだが,この曲の歌い出しのアレンジがファットボーイスリムっぽいのだ。
比べてみよう。
こっちはアレンジの話なのだけど。
「Same Thing」冒頭の「テ・テ・テ・テ・テ・テ・テ…」と
「Rockafeller~」冒頭の「ワ・ワ・ワ・ワ・ワ・ワ・ワ…」
世代的に多分ファットボーイの影響と思うのは考え過ぎだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
星野源の音楽が老若男女問わず,子どもにも若者にも洋楽好きのオジサンにも支持されるのは,きっとその雑多な音楽体験が曲作りに生かされているからだろう。
批判を恐れずに言うなら,星野源は天才的なミュージシャンではない。
甲本ヒロト,忌野清志郎…その人しか持たない個性と才能をもつタイプのミュージシャンではない。
彼は,多様な音楽的素養を組み合わせ,大衆的なポップに仕上げる力に長けている。
また,ジャズの素養もあるから,お洒落な音作りへの感度も非常に高い。
きっと,アレンジ能力がすごく高いのだろう。
音楽の師匠は細野晴臣だというので,もともとは結構マニアックな音作りをするタイプだったのだろう。
ソロの前にハマケン達と組んでいたのがわりとシリアスめのインストバンド(SAKEROCK)だったことも,彼のもともとの音楽的嗜好を窺わせている。
そんな彼が病気の後,ポップな音作りに舵切ったというのは,「聴いている人,観ている人が楽しめる音楽をつくりたい」という強い思いに裏打ちされていると言えそう。
とまあ,星野源についてのあれこれに思いを巡らせていたら,聴き覚えのあるイントロが。
昨日,三男のために買ってきたピアノ絵本(様々な童謡が歌付きで入っている絵本)に「どんぐりころころ」「となりのトトロ」など定番の曲とともに,星野源の「ドラえもん」も入っていたのだ。
童謡のスタンダードの仲間入りか。
そのうち,「おかあさんといっしょ」の曲作りとか担当しそうですね。
一度,ライブで観てみたいアーティストの一人です。