音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

ある聖なる夜の戦い

※ R10指定…10歳未満のよい子は読まないでね!

 

 

 

 

「わたし,失敗しないので。」

 

あの大門未知子のセリフが頭の中でリフレインする。

 

そうだ。

俺は失敗するわけにはいかない。

これは100%成功させないといけない仕事だ。

 

時刻は深夜1時を回ったばかり。

我が家では,冬場には窓がない中央の六畳の座敷に家族が集まり,雑魚寝をしている。

理由は簡単。

この部屋が一番あったかいからだ。

 

私の視線の先には布団にくるまった長男。

さっきからずっと視線を走らせているが,微動だにしない。

一見,眠りこけているようにも見えるが,おかしい。

寝息が聞こえない。

 

こいつ。。

起きているな。

 

私はそう確信していた。

息を殺して,待っている。

 

 

そう,サンタが現れるのを。

 

いつものクリスマスイブなら,寝る前も興奮して

「サンタさんくるかなサンタさんくるかな??」

と私や妻を問い詰めまくっていたのに,昨夜はやけに大人しく布団に入ったので,怪しいと思っていた。

 

長男は,私や妻には内緒で,虎視眈々と機会を伺っていたのだ。

 

サンタが現れる瞬間を。

 

私が起きているのを知ってか知らずか,視線の先の長男は相変わらず動かない。

 

これは長期戦になるな。

私は小さく息を吐いた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

30分が経過した。

顔を近づけて,寝息を確認。

微かに呼吸音が聞こえる。

口を開けて,寝ているように思える。

 

私は,忍び足で座敷の襖を開けた。

キッチンの灯りが長男の顔を照らす。

確かに寝ている。

 

私は,プレゼントが保管してある仕事部屋に行き,タンスの上段に隠していたプレゼントたちを降ろす。

 

長男には小学館の図鑑と,カメラ。

次男には仮面ライダーのベルトと,子ども用カメラ。

三男には,積み木。

 

甘いサンタさんだ。

全部で5袋もある。

 

これらを,座敷の部屋の前に運び,襖を小さく開けて音を立てずに素早く部屋の中に滑り込ませる。

 

ミッション・コンプリート!

 

ようやく肩の荷が降りた。

 

「わたし,失敗しないので。」

 

大門未知子の高らかな勝利宣言が聞こえる。

失敗しなかった。

しかし今年は少し危なかった。

 

そう胸を撫で下ろしていた時,異変は起きた。

「パパ,プレゼントがきてる!」

長男が小さく囁いたのだ。

 

起きてたか・・・!?

 

「あら,いつのまに。」

 

私も白々しく応じる。

 

「でもね,ちゃんと朝まで寝てないと,サンタさんプレゼントまた持って行くってよ。」

 

そう返すと,長男は大人しく目を閉じた。

しかし,まあ当然眠れない。

プレゼントが目の前にあるのだから,心がざわついて寝るどころではなかろう。

 

しかし,まだ深夜2時だ。

起こしとくわけにはいかない。

 

仕方なく妻が隣の寝室に連れて行き,二人で寝せることに。

長男と妻が去り,やや人口密度が減った六畳の座敷で,眠りこけている次男三男と一緒にようやく眠りに就けると思った瞬間,また襖が開いた。

 

顔を上げると,襖の間から妻が顔を出していた。

彼女が言うには

「あの子,この部屋を出る時にプレゼントの袋の数を数えたみたいだけど,二つしかなかったと言ってるの。だから,きっと夜なのに起きてる自分の分をサンタさん持ってきてくれなかったって,しくしく泣いてるんだけど。。」

 

やれやれ。

もう寝せてくれるつもりはないな。

私は寝室へ行き,ちゃんと袋の数を数えたら人数分あったから心配するんじゃない。だから,ちゃんと寝るんだぞと声をかけた。

 

そして,仕事部屋に行くと,それから5時まで仕事をすることにした。

 

3時くらいに,寝室で寝ていたはずの長男が枕を持って仕事部屋へやって来た。 

 

「眠れない。。」

 

わかった。

でも,パパは仕事をしないといけないんだよ。

わかってるだろ?

この時間しかないんだよ。

昼間に君達が起きている時には何もできないからね。

 

そう言い聞かせて,座敷の部屋へ連れて行く。 

 

「6時までは寝ておくんだ。」

 

長男は素直に布団に入った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

5時になった。

私も1時から起きているので,疲れを感じ,座敷部屋に戻って休むことにした。

 

襖を開けると,なんと。

長男も次男も起きていて,ゴロゴロしてるではないか!

 

まあ,想定内ではあったが。

 

「6時までは寝てなさい。でないと,サンタさんプレゼント持ってくぞ。」

 

二人にそう言い聞かせ(今夜何度目だろうか。。),寝かしつける。

それでも眠るわけない。

でも我慢,我慢。

 

 

ようやく6時になった瞬間,長男次男は襖を勢いよく開け,プレゼントの包みをビリビリと破り始めた。

その音で三男も起き,早朝からいきなりクライマックスのテンションだ。

 

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メリー,クリスマス。

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So this is Xmas.

日本,いや世界中のサンタ,お疲れ様。