音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

「歌うたいのバラッド」を練習することになった息子の話

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我が家では,放送されれば必ず皆で観るテレビ番組がある。

テレビ東京で月イチくらいで放送される,「ザ・カラオケバトル」だ。

 

昨年3月。

ある一人の出演者のパフォーマンスにより,我が家に激震が走った。

 

その出演者の名は,久保はるき君。

当時まだ14歳。

 

透き通っていて,無垢。

それでいて,芯が通っていて「思い」がこもった歌声。

 

彼が歌った斉藤和義の「歌うたいのバラッド」に完全にハートを持って行かれたのは,音楽プロデューサーの松尾さんだけではない。

 

松尾潔さんのツイッター(番組HPより)

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誰よりもハートを鷲掴みされたのが,うちの妻だった。

 

「感動した!」

貴乃花関を称えた小泉首相ばりに褒めちぎり(古い話ですね,ごめんなさい),

 

「あー久保くんの声が凄くいい。なんか…沁みるね。」

と14歳の少年の歌声に,取り憑かれたたようにハマってしまった。

 

松尾氏がツイッターでも述べているように,久保君のパフォーマンスへの反響は大きかったようで,放送直後にYahoo検索をかけてみると,「カラオケバトル」の後すぐに「久保はるき」というワードが急浮上してきていた。

 

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何はともあれ,久保君の熱唱に感激してしまった妻は,その後も久保君の動向を逐一チェックするようになる。

 

数か月後の放送では,変声期に入り試行錯誤する中でも一生懸命に歌う彼に対し,

「声は変わってきてるけど,それでも心打たれるね。」

と感動を隠し切れない様子だった。

 

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久保君に入れあげる妻の影響(とばっちりか)をモロに喰らったのがうちの長男だ。

 

うちには息子が三人もいるので,便宜上長男である彼のことはS1(sisoaの長男だから)と呼ぶことにする。

言わずもがなだが,次男はS2。三男はS3である。

 

妻は何を思ったか,

「私の誕生日,S1に『歌うたいのバラッド』歌ってほしいなー」

懇願するようになった。

 

小2になる長男は,物心がつく前から歌を歌うことは好きだ。

 

過去記事でも少し紹介したが,私が子守歌にOasisの「モーニング・グローリー」をチョイスしていたので,3歳ころまでは,ステレオから「Roll with it」が流れてきたら空で歌うことができていた(勿論歌詞は無茶苦茶だけど)。

sisoa.hatenablog.com

今となってはすっかり忘れてしまっているようだが。

 

この子は音楽が好きだなと分かっていたので,小学校に入るまでヤマハ音楽教室に通わせてもいた。

 

最近はずーっと仮面ライダーの主題歌メドレー(浅倉大介が編集したやつ)を4歳の次男と一緒に歌っている。

 

歌うことは好きなのだ。

 

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そんな長男は今,健気にも斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を練習している。

 

ブツブツ言いながらも母親のために練習する姿に,親として感動すら覚える。

 

ただ,改めて歌詞を読み返すと,8歳の子が理解するのは難しいなーと思った。

 

嗚呼 歌うことは 難しいことじゃない

ただ 声に身をまかせ 頭の中をからっぽにするだけ

嗚呼 目を閉じれば 胸の中に映る

懐かしい思い出や あなたとの毎日

 

本当のことは歌の中にある

いつもなら照れくさくて言えないことも

 

歌うたいのバラッド」より

 

長男がこの歌詞の意味を自分なりに咀嚼し,自分の言葉で歌えるようになるまでは少なくともあと10年はかかるだろう。

 

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ところで,斉藤和義という人は,口下手なのだとアルバムのライナーノーツに書いてあった。

ただ,不器用というわけではなくて,感情を歌にして伝えることにはすごく長けていると。

だからこそ表現者なのだろうけど。

 

ちょうど10年前に,フジロックで彼のステージを観た。

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フジロック2011 ホワイトステージにて

MCもそこそこに,ヒット曲「ずっと好きだった」のサビ部分の歌詞を

「全部 嘘だったんだぜ!」

と変えて歌い,会場も一体となって大合唱した。

 

東日本大震災直後で,国が「安全」と言い続けてきた原発で事故が起こり,犠牲者が出たことに対する抗議の意を込めていたようだ。

 

彼はMCで語るより遥に雄弁に,歌の中で自身の主張を表現したのだ。

そしておそらく,その方法が一番伝わりやすいと分かっていた。

 

先に紹介した「歌うたいのバラッド」でも,

 

「本当のことは 歌の中にある」

 

と歌っている。

斉藤自身の,偽らざる本音なのだろう。

 

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そんな斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を,長男は今日も練習する。

 

妻の誕生日まであと1週間。

 

たまには私も一緒に歌おうと思う。

 

だってほら,

「いつもなら照れくさくて言えないことも」

言えそうな気がしますからね。