音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

ジャズへの憧憬

妻の胃検診があると言うことで,朝から子ども達を起こして準備をさせ,小学生の長男は斜向かいの義父母のマンションに預け,次男三男を保育園へ送り届けた後,車を東へ走らせた。

 

つけっぱなしにしているカーラジオからは,ボーカル付きのジャズナンバー。

眠くなりそうだったので,音量を上げようとすると,妻が

「これ,ジャズなん?シャンソンじゃん。」

と言い出したので,確かに歌が入ってしまったら,ジャズとシャンソンって,線引きが難しいなと思った。

 

そもそもボーカル付きのジャズナンバーって,普段からあんまり聴かない。

 

ナット・キング・コールのアルバムなんか持っているが,ジャズというよりは,何だか耳障りのいいポップスに聴こえた。

何というか,きれいすぎるというか。

 

ジャズと思って聴かなければいいのかも。

 

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10年以上前に務めた職場の近くに,古いレコード屋があった。

狭い店内に年代物のCDやらレコードやらが所狭しとディスプレイしてあった。

私はよくそこに立ち寄っては,古いCDを漁っていた。

 

このレコード屋で見つけたのが,マイルズ・デイヴィスの「いつか王子様が」だ。

 

マイルズの儚げなトランペットの音色が,曲中の主人公の心象風景を映し出す。

 

この時期は,ジャズの虜になったというよりは,ジャズへの憧れから,じんわりとその雰囲気に慣れようとしていたというほうが正解かも知らない。

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何だろう。

ジャズという音楽自体が,即効性のある音楽ジャンルではない気がする。

その分,「もっとその魅力を知りたい」と感じさせてくれる何かがある。

 

魅力と呼ぶには陳腐過ぎる。

魔力とでも呼ぶべきか。

 

その魔力を探し続けることで,何か見えてくるものがあると思っていた。

 

ともかく,このマイルズの「いつか王子様が」が私のジャズ原体験である。

この曲はいろんな場所でよくかかっていて,先日も息子たちの習い事(水泳)の送り迎えの合間に入った純喫茶で流れていた。

 

私の中で,この曲を聴くたびに,「これがジャズなんだ。」と深く納得してしまう何かがある。

 

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そんなこんなで,マイルズやらクルセイダースやら,どはまりするわけでもなく,たまに思い出すように聴いていたジャズなのだけど,あるアルバムとの出会いが,私のジャズ観を大きく変える。

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テナーサックス奏者であるジョン・コルトレーンの「ブルー・トレイン」だ。

 

このアルバムの二曲目「モーメンツ・ノーティス」のスリリングな展開に,

「ジャズとは,大人がカフェで聴くような高尚な音楽なのだ。」

という先入観が180°覆された。

 

この「モーメンツ・ノーティス」では,最初に曲を象徴する印象的な旋律が演奏され,その後はトランペット、サックス,ピアノが競うようにソロを繰り広げ,ベースとドラムががっちりその演奏を支える。

 

そして8分20秒過ぎに,再び最初に演奏された象徴的旋律が繰り返されて曲はピークを迎える。

そのまま,あっという間にクライマックスに行き着くのだ。

 

この8分20秒過ぎのカタルシスは本当に凄い。

何度聴いても凄い。

 

このカタルシスは,ひょっとするとロックを超えるのではないか?とすら思った。

 

うん。

 

そこらへんのロックよりもよっぽどロックだ。

キース・リチャーズ

「最近のバンドは,ロックなのかも知れないけど,ロール(転がっては)ではないんだよ。」

という言葉が思い出される。

 

この「モーメンツ・ノーティス」は,ロックしてて,そんで転がりまくっている。

 

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昨年あたりから,一発撮り動画「ザ・ファースト・テイク」が流行っている。

  

コルトレーンの「ブルー・トレイン」はスタジオ録音だが,ジャズの名盤には,人々のざわめき,拍手,グラスの触れる音などがそのまま収録されているライブ盤も少なくない。


そういったライブ盤には,一発撮りでしか感じられない,ヒリヒリするような緊迫感と熱量が凝縮されている。

 

時代が巡っても,人々が「一発撮り」を求めるのは,そういう「ライブ感」みたいなものに感じるところが大きいからだろうなと思う。

 

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ジャズに関する知識なんて,ほとんど素人なのに厚かましくも語ってしまいました。

でも,これからもジャズの名盤,探していきたいと思います。

 

あ,この漫画すごいおすすめですよ。

年末年始にぜひ。

 

 

追記:

読んでいただいた方からのご指摘を受け,誤りがあった記事の内容を一部修正しています。

ご指摘ありがとうございました。

今後ともよろしくお願い致します。