僕らがスピッツを聴き続ける理由
長いこと揺られた電車が,ようやく自宅最寄り駅に到着した。
人波と共に,重い足取りで改札をくぐる。
自宅マンションの仄かな明かりが見えてくる。
少し風が出てきた。ようやく秋らしい風だ。
そろそろジャケットを着ていけそうな季節だ。
少し疲れている。
三男が熱を出したため,昨日は昼から年休を取っていたが,年休明けの残業はちとつらい。もう少し寝ないとな…。
偶然だったよツンツンは
時々見せる笑顔がいい
逆転ゲームでいっちゃいたいのさ
ぼうっと考えるでもなく歩いている時に,iPhoneから流れてきたのがこの曲。
思わず笑ってしまった。
本当に色んなことがどうでもよくなるくらい,よく分からない歌詞だけど,何だろう。
この気持ちよさは。
齋藤孝が自著の中で「私はいつも一日の終わりに収支決算をするんですけど,マイナスになるのはいやなので,必ずプラスになるような何かを組み込むようにしています。」と述べていた。
マイナスに傾きかけていた一日の終わりに,思いがけず笑顔をくれたスピッツナンバーのシャッフルに切り替えることにした。
大いなるプラス転換である。
スピッツ。いつから好きだろう。
ふと考えてみた。
小学生の頃に「空も飛べるはず」「チェリー」が流行った。
「チェリー」はレンタルしてきてカセットテープに録音して何度も聴いたけど,当時「スピッツが好き」なんて打ち明ければ「このミーハーめ。」と言われそうで,そこまで深入りはしなかった。
高校生の頃には「8823」が出た。
「放浪カモメ」はよくカラオケで歌った。
サビはほとんど声がでなかったけど。
そこからしばらく離れたけど,長男が生まれた頃出た「小さな生き物」を買って,これがよかったので,2000年代にリリースされた作品群を買い足した。
「とげまる」とか秀逸な作品だと思う。
冒頭に述べてるように,マサムネ氏が書く歌詞に,そこまで深い意味があるようには思えない。
ただ・・・聴いていて気持ちいいのだ。
抜け感というのだろうか。
スコーンと抜けていく感じがする。
感覚でしか語れないのだけど,音楽ってそもそもあんまり深く考えて聴くものじゃないと思っている。
うん,「気持ちいい」が一番しっくりくる気がする。
もう一つ。
スピッツはアルバムのラストは,大抵アップテンポなナンバーで締める。
これも好きな理由。
「三日月ロック」では「けもの道」。
「とげまる」は「君は太陽」
「見っけ」の「ヤマブキ」は本当に白眉。
ラスト曲をしっとり締めるアーティストも多いけど,最後にアッパーのきいた曲(しかも歌詞も超前向き)がくると,「よっしゃ!」と気持ちよくイヤホンを置ける。
数年前,NHKの「Songs」に出演していたスピッツのマサムネ氏は,大泉洋との対談の中でこんなことを語っていた。
「音楽が好きだからバンドやってるんじゃないんですよ。
バンドがやりたいから音楽をやっているんですよ。」
少し照れくさそうに言ったマサムネの横で,大真面目に頷いた三輪さんの姿にもぐっときた。
よっしゃ。
これからも聴き続けるぜ。