世紀末のダンスミュージックはいまも未来を照らし続けている
昨日は長男の小学校で個人懇談があったので,車で出勤し,昼過ぎに早退した。
私の職場から息子の小学校からは下道で40分ほどの距離があるが,海沿いを通るルートと都市高速下のバイパスを通るルートがある。
どちらも距離的にはそう変わらないので,眺めのよい海沿いルートを選択したが,これが失敗だった。
まだ夕方のラッシュにかからない時間帯なのに,途中から渋滞で全く動かなくなってしまったのだ。
まずい。
このままでは遅れる。
私はやむなく,渋滞している海沿いルートから伸びる松林の中の道を抜け,バイパスルートのほうに切り替えることにした。
気ははやるが,細い道なので注意しなければならない。
前のめりに運転していると,ラジオから聴き覚えのある曲が流れてきた。
なんだっけ?
絶対に聴いたことがある曲だ。カバーでボサノバっぽくアレンジしてあるけど,耳馴染みのあるナンバー。
そうだ,ジャミロクワイだ。
ただただ,懐かしい。
曲に合わせてハミングしていると,はやる気持ちも次第に落ち着いていた。
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ジャミロクワイは,確かアルバムも持っていたはずだ。
そう思い家に帰ってCD棚を漁ったら,2枚出てきた。
ラジオでかかっていた曲は,ベスト盤(左のCD)に入っていた。
「Virtual Insanity」。
当時,変な帽子をかぶったJKが変な踊りをするMVに衝撃を受けたことを思い出した。
そして,これがポップの未来の姿なのかと変に納得もした。
メロディアスな曲に,流れるようなJKのボーカルで聴かせるこの曲は,今聴いても色あせない。
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過去記事で,初めて買ったCDは小沢健二だと紹介したことがある。
ちなみに初めて買ったアルバムはB’zのベスト「Treasure」だ。
では,初めて買った洋楽CDは?
これがジャミロクワイの「シンクロナイズド」なのである。
当時中学三年で受験生だった私は,受験勉強のときずっとラジオをつけていた。
おかげで,その頃流行っていた海外のアーティストの曲もよく覚えた。
90年代後半。
デズリーの「ライフ」やカーディガンズのアルバムなどが流行っていた。
その中で一際パワープレイされていたのが,ジャミロクワイの「キャンド・ヒート」だった。
ドラマ仕立てのイントロから,軽やかなJKのボーカルと弾むようなビート。
一回聴いたら忘れないキャッチーで,ほどよく緊迫感のあるメロディライン。
何度か聴いて,この曲の虜になった。
その年の年末,友人と買い物に行った時に立ち寄ったタワーレコードに平積みされていたCDを見つけた。
ジャケットには,見覚えのあるロゴとデザイン。
このツノの生えた人物の,印象的なデザインを「バッファローマン」というらしい。
このようなアイコンデザインも含め,ジャミロクワイというアーティストは変わり種ながらも,非常に洗練された印象であった。
ダンスチューンが中心だが,勿体ぶらずに軽やかでポップ。
そして何よりJKの声がいい。
ベタベタしてなくて,爽やかな風のような「抜け感」のある声質は,そのスタイリッシュな印象を更に増幅させる。
ただ変な帽子を被っているだけのおじさんじゃないんだな。
今回久しぶりに聴いてみた印象は,アースウインド&ファイヤーあたりの影響も感じるのだけど,全然古臭くなく,でも当時のダンスホールの熱気を内包しつつ,現代風にスタイリッシュにアレンジしている感じ。
振り返れば90年代後半って,洋楽に限らずラブサイケデリコとか,バードとか,邦楽でも非常にお洒落で洗練されたサウンドやビジュアルのトータルイメージで売り出すアーティストが結構多かったように思う。
私は,そっち系のアーティスト,結構好きでした。
だって,なんか本当に「アーティスト」って感じがするじゃないですか。
ジャミロクワイの曲は,既に流行った時期から20年以上が経つにも関わらず,今聴いても,これが「未来の音」だと感じる。
逆に先日紹介したザ・チェインスモーカーズは,新曲なのになぜか懐かしい印象を覚える。
これもアーティストのもつ「業」のようなものでしょうか。
いずれにせよ,ジャミロクワイを聴いていると,先行きが不透明な時代に見据えた一筋の未来が見える。
だからこそ,今響くのかもしれないな。