音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

演歌と西洋音楽について

先日紹介した本「小澤征爾さんと,音楽について話をする」という本の続きを読んでいたら,小澤さんが興味深いことを語っていた。

 

sisoa.hatenablog.com

 

小澤:山本直純さんが持っていた「オーケストラがやってきた」っていうレギュラー番組がありまして,それにゲストに出ろって言われて,「森進一さんが出るなら」って言ったら,ほんとに森進一さんが来てくれたんです。で,僕がオーケストラで彼の歌に伴奏をつけたんです。一曲だけで,出来はあんまりよくなかったかもしれないけど。そしたらね,なんたっけなあ,有名な小説家がね,それに文句をつけた。とにかくくそみそに言われちゃった(笑)。

村上:いったいどこがいけなかったんですか?

小澤:つまり,クラシック音楽がわかるからといって,それで演歌もわかるというわけじゃないと。

村上:はあ。

小澤:僕はもちろんそれに対して何も言わなかったけど,僕なりの反論みたいなのはいちおうあります。みんなは演歌っていうのは,日本の独特のものだってよく言いますよね。日本人だけに歌えて,日本人だけにわかる音楽だと。でも僕はそうは思わない。演歌というのは基本的に西洋音楽から出てきているし,五線譜で全部説明できると思うんです。

村上:はあ。

小澤:こぶしみたいなものも,ビブラートで表記できます。

 

小澤征爾さんと,音楽について話をする」小澤征爾×村上春樹

 

この記事を読んで,はたと思い当たることがあった。

私の脳裏をよぎったのは,日本の演歌歌手ではなく,今や世界を代表する音楽家の一人となったノエル・ギャラガーだ。

 

ノエル・ギャラガーと言えば,オアシスを長年率い,その楽曲のほとんどを作曲し,時に(弟リアムの気が向かない時には笑)自ら歌い,数々のヒット曲を生み出してきた男だ。

 

私は以前から,ノエルがつくる曲は「演歌っぽいなあ」と思っていたのだ。

 

特にノエルが歌う曲で顕著なのだけど,彼の曲はコブシが効いているのだ。

 

リアム・ギャラガーという不世出のシンガーの陰に隠れてあまり語られてこなかったが,ノエルは実は結構歌が上手い。

 

高音部まできちんと出るし,自分が歌う曲は,いつもしっかり歌い上げている。

ノエルが歌う曲としては,この曲がいちばん有名でしょう。

 


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このモッシュピットのどこかに私がいるはず(笑)。

 

サビ部分はいつも,オーディエンスに歌わせてくれるノエル兄。

 

みんなで一緒に歌うことができる曲,というのは日本の演歌や歌謡曲にも共通しているし,もはや歌に国境はないと感じさせてくれる名曲だ。

 

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ノエルがつくった曲で面白い曲がある。

05年に発表された6作目のアルバムに収録されていた「The Importance of Being Idle」という曲だ。

 


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このイントロを聴いていただきたい。

 

日本人なら,

「あれ,どこかで聴いたことが・・・?」

と思う人が多いのではなかろうか。

 

そう。

 

水戸黄門の「ああ人生に涙あり」のイントロにそっくりなのである。

 


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いかがでしょう。

 

ノエル,まさか水戸黄門のファンだった?

と勘繰りたくもなるが,本人は全く知らなかったよう。

 

ちなみに,当時のインタビューでは

 

「ファッ○ン最高の曲ができたぜ!間違いなくこれまで俺がつくった曲の中で一番だと思う。」

 

みたいなことを語っていた。

事実,この曲はシングルカットもされている。

 

お国は違えど,日本人で言うところの演歌「的」なリズムを,ノエルが好ましく思っていることは間違いなさそうだ。

 

彼はラテン音楽やジャズにも興味を持って自分の曲に取り入れてもいる。

演歌については多分知らないのだろうけど,気質として近いものはもっているのではないか…と感じていたのだけど,今回小澤さんの語りで何となく合点がいった。

 

仮説でしかないけど,演歌が西洋音楽の影響を受けているという推論が確かなら,ノエルがつくる曲に演歌っぽい要素が入っていたとしても不思議ではない。

 

だからこそ,音楽で世界はつながるのでしょうね。