ノエル・ギャラガーの発言から読み解く,オアシス再結成の可能性
ノエル・ギャラガーと言えば,言わずと知れたオアシスのメイン・ソングライターで,数々の名曲を生み出してきた稀代のメロディ・メイカーである。
これまで当ブログでは,ハンドルネームの元ネタであるオアシスの音楽,ファッションや,そのフロントマン,リアム・ギャラガーの動向などを逐一追ってきた。
しかしバンドの中心人物である,ノエルについての記事を書いたことは一度もなかった。
理由ははっきりしている。
ノエルという人は,ファッションにはほとんど無頓着なのだ。
最近ではだいぶ垢抜けてきた印象だが,セレブっぽい無難な着こなしが多く,際立った個性は感じられない。
これは,
「音楽とファッションの相関性からアーティストについて深く掘り下げていく」
という当ブログのコンセプトからすると,かなり扱いづらい存在であることを意味する。
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当ブログからすると難しい存在ではあるものの,ノエルのインタビュー記事というのは,非常に機知に富んでおり読んでいてとても面白い。
弟のリアムはというと,"感性"の人なだけに,破天荒発言も多く行き当たりばったりという印象だ。
逆に兄のノエルは冷静かつ客観的には自分や周りを見ながら発言している様子が伺える。
下のインタビュー記事は,オアシスの解散から三年ほどが経ったタイミングでのもの。
自身が思う,「持っている」バンドについて語っている。
「ビッグなバンドってのは,音楽以外にも”なにか”を持っているからアイコンになれるんだよ。それが”Xファクター”だとは言わないけど,とにかく”なにか”がいるんだ。ボビー・ギレスピーやリアムのようなフロントマン,あるいはジョン・スクワイアとイアン・ブラウンのようなパートナーシップ。そういう”なにか”が必要なんだよ。曲が最高なら,それは家でも聴いてもらえる。でも,たとえ雨が降っててもライブに行く気にさせるには,”なにか”が大切なんだ。それをどうしても観に行かなきゃいけない,って思わせるものがね。
Interview by Yukiko Kojima 「rockin'on」2012.12
彼の真意は図りかねるが,フロントマン・リアムを擁したバンド,オアシスは"なにか"を持っていたと解釈できそうだ。
ところで,ギャラガー兄弟はオアシスの解散後,ソロや新バンドで何枚かアルバムを作った。
リアムはビーディー・アイで2枚,ソロで3枚。
ノエルはソロで3枚。
この中で,私がオアシス期の名盤と肩を並べるくらいのクオリティーをもつであろうと考える作品が一枚だけある。
それが,ノエルのソロ第二作,「チェイシング・イエスタデイ」だ。
この作品について語るとき,「スーパー・ソニック」や「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」など,ライブで大合唱が起きる所謂"オアシス・クラシック"のイメージでは,その本当の価値が伝わらないであろう。
「チェイシング・イエスタデイ」はダンス・ミュージックあり,正統的なギター・ロックあり,ノエルお得意の歌物あり。
彼の音楽的趣味が結集し,尚且つそれが自己満足で終わらず,聴衆に歌わせ,踊らせる普遍性を併せ持っている点が秀逸だ。
ノエルの高いプロデュース能力が発揮された傑作といえよう。
その二年後の2017年には,ソロ三作目「フー・ビルト・ザ・ムーン?」をリリースした。
この作品もビート重視の路線をさらにマニアックに昇華させたなかなかの秀作。
さらにノエルは昨年,「ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ」名義での初のベスト盤をリリースして,自身のソロ活動をいったん総括した。。
ノエルに関して言えば,ソロとしてやりたいことはこの十年で一通りやり尽くした感があるのではないだろうか。
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以下に引用するのは,2016年のノエルへのインタビュー記事。
リアムがオアシス解散後に,ノエルを除く旧オアシスメンバーで結成していたバンド,ビーディー・アイが解散した直後に取られたものだ。
このインタビューで,ノエルはポール・ウェラーから教えられた格言についてコメントしている。
「これは,1994年にウェラーが教えてくれたことだけどー。
”それが自分の手から離れてしまっても,後を追うな”
ということなんだ。」
ノエルの言うところの,”それ”とは,つまり曲作りの能力のことだ。
「”それが自分の手から離れてしまったら,そのままにしておけば,また戻ってくる”と言われたんだ。実際,俺もそう思っている。でも,これから先、1曲も書けなくなったとしても,そうなったらそういうことなんだよ」
Interview by Mark Blake 「rockin'on」2016.01
ここでは,「それ」とは曲作りの能力と解釈しているが,本当にそれだけだろうか?と邪推してしまう。
ノエルのことだから,「それ」=「リアム」という意味を含ませていないだろうか。
いちファンの願いでしかないが。
ちなみにこの時のインタビューで,ノエルはビーディー・アイの解散を聞いて心底残念そうにしていた。
「いいバンドだったのにな。見てくれは悪くないし。でもいいソングライターがいなかったんだな。」
と語っていた。
ソロとして満足のいく作品をつくり上げ,一定の評価を得た。
もともとオアシスの脱退~解散は兄弟喧嘩(ツアー中にリアムがノエルのギターを叩き壊したことに端を発する)がきっかけだが,リアムのほうはずっとオアシスに未練を残していた。
旧メンバーを集めてのバンド活動継続も,オアシスでの夢を追い続けていたと見れなくもない。
一方のノエルは,解散後は腰を据えて戦略を練り,満を辞してソロ活動をスタートさせた。
「オアシスのノエル」という先入観に囚われない創造力溢れるソングライティングは絶賛され,世界中のフェスでヘッドライナーを務めるほどの成功を収めた。
ソロとしてベスト盤もリリースし,自身の活動にも区切りをつけた。
最初に紹介した2012年のインタビューでは,
「ビッグなバンドには,音楽以外の"なにか"が必要だ。」
と語っていた。
ノエル自身は,音楽をつくることはできるが,特別な"なにか"にはなれないことは自覚しているのではないか。
そして,その"なにか"になり得るのは,弟のリアムにおいて他はないことも,おそらく分かっているだろう。
音楽性の幅を広げたノエルのソングライティングに,ビーディー・アイの解散後に始動したソロで三作連続全英一位を記録している無双状態のリアムのボーカルが乗れば…。
いちオアシスファンの妄想は広がるばかりだ。
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最後にノエルのソロ三作目から,「ホーリー・マウンテン」。
エレキ・ビートに迫力あるドラミングが最高な曲だが,サビではフルートが印象的な旋律を奏でる。
オアシス時代含め,ノエル作の曲でもトップクラスの楽曲だと断言できます。
是非ご一聴ください。
ぶっ飛びますよ。