音楽と服

音楽と服について好き勝手に語ります

アーティストとスニーカー

昨日,無性にスタン・スミスが欲しくなって,買いに行ってきた。

 

私は39年間生きてきて,実はまだ一度もスタン・スミスを履いたことがなかった。

それどころか,ここ10年くらいスニーカーというものを買ってすらいなかった。

 

一番最後に買ったのは2010年頃,当時行きつけの路面店に限定で出ていたアディダス「MATCH PLAY」だ。

レトロなフォルムだけど,なかなか気に入っていて頻度は高くないが年に数回は必ず履いている。

 

アディダスのスニーカーで最初に買ったのは,「Rod Laver」だった。

90年代後半だっただろうか。

当時は高校生で,アディダスのスニーカーなら,それこそスタン・スミスはかなり流行っていた。

紐タイプもマジックテープタイプも周りで履いている者が多かったので,人と違うモノが欲しいと思い,「Rod Laver」を購入した。

最初は体育館シューズみたいだと思っていたけど,シンプルなデザインだったから様々なスタイルに合わせやすく,これも10年くらいは履いた。

 

アディダスのスニーカーの購入遍歴を振り返ると,全て白のローテクシューズである。

 

そして,今回購入したのも,やはり白だった。

正確には,真っ白ではなくクリーム色と言った方がいいかもしれない。

これ以上引くところがないような,シンプルなデザイン。

私はこういうスニーカーに惹かれる性分なのだろう。

 

白のスニーカーをさらっと合わせられる大人にずっと憧れてきた。

カジュアルでもきれい目でも,足元が白のスニーカーだと,さりげなく気品を纏うことができるような気がする。

 

長年欲しいと思っていた物を購入でき,物欲が満たされたので,次はこういうローテクスニーカーを履いているお洒落なアーティストはいなかったかな?と思い,「ロッキング・オン」のバックナンバーを探してみた。

 

すると,結構,いました。

 

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1 The Beatlesジョージ・ハリスンジョン・レノン

「rockin'on」2010.02より引用

まず目に留まったのが,ザ・ビートルズ

写真を見てお分かりの通り,ジョージ(中央右)とジョン(右端)は白のスニーカーを履いている。

 

ジョージはジャックパーセルがお気に入りだった

ジョージ・ハリスンジャックパーセルがお気に入りだったそうだ。

 

コンバースの代表的なモデルの一つであるジャックパーセル

 

ニルヴァーナカート・コバーンが愛用していたことでも有名だが,その20年以上前にジョージはファッションに取り入れていたのだ。

 

私は,コンバースと言えばオールスターの白ハイカットをずっと履いていた。

履きつぶしては新しいのを購入してのくり返しで,計5足くらいは同じ物を履いたと記憶している。

 

しかしジャックパーセルはまだ未経験だ。

人生で一度は履いてみたいスニーカーだ。

 

 

ジョンはG2クラシックを愛用していた

「rockin'on」2010.02より引用

ジョン・レノンはスプリングコートのG2クラシックを愛用していたようだ。

スプリングコートは1936年にフランスで誕生した老舗メーカー。

靴底にラバーソウルを使った画期的なテニスシューズがそもそもの発祥ということだが,その後キャンバスシューズの代表的なメーカーに成長。

 

多くのセレブに愛用されているそうだ。

 

ジョンの着こなしを見ていても,ジャケパンスタイルやきれい目なセットアップに,このG2を合わせてアクセントにしている。

 

粋で,洗練されたスタイルだと思う。

 

 

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2 The Who(ロジャー・ダルトリ―)

「rockin'on」2007.03より引用

ザ・フーのボーカル,ロジャー・ダルトリーのこの写真は,以前当ブログで紹介したことがある。

 

ラングラーのデニムシャツ,ボトムスにオニツカタイガーを合わせたコーディネート。

 

先述のジョン・レノンの着こなしがきれい目だったのに対し,こちらはかなりカジュアルに寄っているが,私はこの写真を見るたびに,「かっこいいなあ」と思ってしまう。

 

足元のスニーカーは,フォルム等から推察するに,おそらくMEXICO66というモデルではないか。

 

このMEXICO66は海外のセレブにもファンが多く,イギリス王室のウィリアム王子も愛用しているという記事がネットにも出ていた。

 

友人にも,「スニーカーはオニツカ一択」という者がいる。

私自身はまだ一度も履いたことがないが,MEXICO66は購入してみてもいいと思っている。

 

 

3 Oasisノエル・ギャラガー

「Be Here Now」20周年記念スペシャル・エディションブック・レットより引用

オアシスのメンバーはスニーカーを履いているというイメージはあまりなかったが,調べてみると初期は結構履いていたみたいだ。 

 

特にノエルはアディダスのスニーカーを履いている写真がわりと多く残っている。

そんな時は大抵,サッカーシャツを着ている。

ギャラガー兄弟がプレミアリーグマンチェスター・シティーの大ファンだというのは有名な話だ。

 

写真でノエルが履いているのは,フォルム等から検討をつけるに,スーパースターではないかと推察されるが,どうだろう。

現行モデルには黄色ラインのものはないようだけど,ネイビー地に黄ライン,なかなか味わい深い配色だ。

 

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学生時代まではスニーカー一択だったのが,社会人になってからはローファーやブーツばかり履くようになり,一周回ってスニーカーのよさを再発見している。

 

だからと言って,学生の頃と今でスニーカーの好みが変わったかと言うと,そんなこともなく,相変わらず好きなのは,ローテクで白のスニーカーということ。

 

スニーカーをうまくコーディネートに落とし込んでる大人って,男性も女性もかっこいいですよね。

 

来年はこれまでの好みに拘らず,ファッション系ブロガーさんたちが紹介してくださっているナイキやNBに挑戦してみるのもいいかも知れないとも思っている。

 

いくつになっても,「初」がつくことはわくわくするものです。

 

 

2022年iTunes私的再生回数ベスト5

今年もあと早いもので,残り一週間を切った。

 

このブログを書くようになってから一年とちょっと。また昔みたいに音楽をよく聴くようになった。

 

実は昨年まで5年近く,贔屓にしているアーティストの新作を別にすれば,聴いたことのないジャンルやニューカマーの音楽に触れる機会が激減していた。

 

新しい音楽に触れるのはわりとエネルギーが要るものだし,自分の好みに合わない可能性もある。

それよりは,「いい」と決まっている安全パイを選んだ方が確実だ。

 

フジロックに毎年参戦していた頃は,「予習」しておくとより楽しめるので,積極的に新しい音楽に触れていた。

そのフジロックにも行かなくなって早5年以上。

 

私が新しい音楽を追求しなくなった年月とちょうど重なる。

 

今回の記事を書くに先立って,昨年の今頃投稿した記事を読んでみた。

 

昨年のiTunes再生回数ベスト5のうち4組は10年以上前から愛聴してきたアーティストたちだった。。

 

YMOグレイプバインプライマル・スクリーム,ベックという面々だ。

グレイプバインなんて,高校生の頃からずっと追いかけている。

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昨年の結果に対して,今年はだいぶ様相の異なるランキングとなった。

 

結論から言うと,ベスト5のうち3組が今年に入って出会ったアーティストたちだ。

 

フジロックには相変わらず行けてないが,ブログを書き続けることが,私の音楽的興味を広げることに繋がっているようだ。

 

これは喜ばしいことだと思う。

幾つになっても,「初」がつくことにはワクワクするものだから。

 

ところで,昨年のランキングと比べると再生回数が少なくなっていることに気づかれる方もおられるかも知らない。

 

このランキングは,純粋にiTunesの再生回数を基に集計している。

今年の6月までは電車通勤だったから,毎日電車の中でiPhoneで音楽を聴いていた。

しかし,6月の下旬からレンタカー通勤が約4ヶ月半続いた。

その間は,通勤時間はいつもカーラジオをかけていた。

 

だからiTunesの再生回数も,この期間はほとんど伸びていない。

音楽は毎朝,自室での仕事中にチボリのオーディオで聴いていたが,当然のことながらその分は集計に入っていない。

 

そんな事情で,夏ごろよく聴いていたレッチリやジャック・ホワイトの新作はランク外になってしまっている。

ちょっと残念だけど。

 

11月に新車がきてからは,通勤時はBluetooth機能で聴いているから再びiTunes再生回数が伸びてきた。

 

いつものことながら,前置きが長くなってしまった。

それでは,今年のiTunes私的再生回数ベスト5の発表です。

 

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1位 The1975「外国語での言葉遊び」(36回)

1位はThe1975の「外国語での言葉遊び」。

 

The1975には今年初めて出会った。

と言うか,つい二週間ほど前に初めて彼らの作品を買い,その音楽に触れたばかりだ。

 

この二週間,ひたすらにヘビーローテーションしまくって,あっという間に今年の再生回数1位になってしまった。

 

掛け値なしに名盤だ。

UKロック好きなら漏れなく好きになるだろう,「メランコリックで内省的な」部分を持ち合わせるバンドだ。

 

敢えて「持ち合わせる」という表現にしたのは,まだ彼らがどんなバンドなのか掴みかねているから。

 

新作を聴いた印象だけなら,「メランコリックで内省的な」側面がある一方で,コールドプレイ的にスタジアム級のアンセムとなり得る曲も作れるスタンダード路線か?と思わせるような側面も併せ持つ。

 

まあそれも,これからディスコグラフィーを遡って聴いていくことで段々と明瞭になってくるだろう。

 

それも,来年の大きな楽しみの一つだ。

 

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2位 The Chainsmokers「So Far So Good」(29回)

年末にThe1975に抜き去られるまで,半年ほど再生回数1位を守り続けてきたチェンスモの最新作。

 

彼らは2010年代,最も稼いだDJと言われている。

 

2000年代後半から2010年代半ばにかけて,音楽業界の中心的なムーヴメントであったEDMも過去のものとなり,ダンス・ミュージックを取り巻く状況もだいぶ落ち着いてきた。

 

チェンスモが頭角を表してきたのは,EDMがムーヴメントとしてのピークを過ぎていた2010年代半ば以降である。

流行りの季節を過ぎても,彼らの音楽がたくさんの人に支持されているのは,そこに何かしら普遍的な魅力を感じてのことだろう。

 

彼らの鳴らすダンス・ミュージックには,「侘び寂び」がある。

しっかりアゲて盛り上げる部分も勿論あるが,それ一辺倒にはならずに,きちんと引くところはわきまえているところに好感が持てる。

 

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3位 Kirinji「Crepuscular」(21回)

キリンジの「Crepuscular」のリリースは,実は2021年の12月なのだけど,私が行きつけのCD屋で見つけたのは年明けなので2022年のランキングに入れることにした。

 

私が初めて買ったキリンジのCDだ。

この作品を皮切りに,「スウィート・ソウルEP」や「11」など,デュオ時代,バンド時代のキリンジの作品を遡って聴いていった。

 

今年前半は,キリンジの魅力を発見して,アーティストとして様々な形態を経る中で変化してきた音楽性にどっぷり浸かることができた。

 

キリンジ堀込高樹)の紡ぎ出す音は,歌謡曲のように親しみのあるメロディーなのだけど,くどくなり過ぎず,スタイリッシュに聴かせてくれる。

 

アレンジの妙であろうか。自己プロデュース能力がとても高い人のように思える。

 

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4位 Liam Gallagher「C'mon You Know」(17回)

リアム・ギャラガーがいいアルバムを作ってくれると,やはり嬉しい。

 

私にとって,リアムは永遠のロックンロール・ヒーローなのだから。

 

それにしても,このアルバムジャケットは最高である。

オーディエンスの波に入って,一緒に騒ぐロックンロール・スター。

 

しかも客が皆,若い。

 

リアムの「歌」を必要とする人は,まだ世界にたくさんいる。

 

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5位 サカナクション「アダプト」(15回)

久しぶりに,「アダプト」を聴いてみた。

 

いいアルバムだ。

山口一郎曰く,サカナクションの音楽には「ダンスと文学の融合」というコンセプトがあるそうだ。

 

前作「834.194」がダンス寄りのアルバムだとしたら,今回の「アダプト」は文学寄りのアルバムと言ってもいいだろう。

 

以前レビューにも書いたけど,このアルバムを聴いて最初に連想したのは,フランツ・カフカの小説「城」だった。

 

アルバム全体を通して伝わってくる「閉塞感」が,「城」を読んだ時の感覚に似ていたからではないだろうかと思う。

 

コロナ禍という社会背景もあるのだろう。

このような形で,作品に昇華できる彼らの仕事に拍手を送りたい。

 

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2022年iTunes私的再生回数ベスト5でした。

 

本来なら,ここにレッチリやジャック・ホワイト,アークティック・モンキーズらが絡んでくるはずだっただろう。

 

そう考えてみると,今年は新旧ともに様々なアーティストがいい作品を多くリリースしてくれた一年だった。

 

レッチリやジャックはなんと二作も出してくれた。

こんな年はそうそうないだろう。

 

そして,新しく出会ったアーティストも多かった。

そのきっかけの多くをこのはてなブログでいただき,感謝感謝です。

 

来年はどんなアーティスト,曲に出会えるのか,今から楽しみです。

 

 

最後に一曲。

ランク外(7位)にはなったが,ジャック・ホワイト「Fear Of The Dawn」より「EOSOPHOBIA」。

 

印象的なリフが炸裂しまっている。

アルバム後半にはこの曲のリプライズがあり,作品全体の緊迫した空気感を象徴する曲となっている。

 

狭い路地を体勢を低くして駆け抜けていくような,孤独な疾走感。

 

こういう,隠れた名曲があるからやめられない。


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私がビートルズの「Revolver」スペシャル・エディションを勧める二つの理由

「ブルータス」が特別号として出していた村上春樹特集を読んでいたら,面白いインタビューが載っていた。

 

好きなビートルズのアルバムに関するやり取りである。

 

ーアルバムは何がお好きですか?

村上 個人的にはやっぱり,「Rubber Soul」ですね。この間,Netflixで映画観てたら,マフィアの親分が,子分に「お前はビートルズのアルバムの中で何がベストだと思うか?」って聞いていて。「Sgt. Pepper~」と子分が言ったらすぐに撃ち殺されてた

ー親分は何が好きだったんですか?(笑)

村上 最後には明らかにしたと思うんだけど何だっけな?変なのが好きだったんだよな,「ホワイト・アルバム」だったっけな?いや,「Let it be」だ。

ーわかりやすい好みですね。「ホワイト・アルバム」好きの親分だったら逆にこわいです。

村上 「Sgt. Pepper~」って言ったらすぐ殺される(笑)。

BRUTUS 特別編集 村上春樹(合本)」より引用

 

「Sgt.Peppers Lonely Hearts Club band」はロック史上初のコンセプト・アルバムとして,今や歴史的名盤の地位を確立している。

 

しかし私個人的にも,このアルバムをビートルズのベストには選ばないだろう(勿論嫌いではないが)。

 

じゃあ,どの作品がベストか?

 

村上さんが挙げる「Rubber Soul」か。

 

多くのビートル・マニアがベストに推すAbbey Roadか。

 

確かに,この二つも捨てがたいが,私がベストに挙げたいのは,「Revolver」だ。

 

雑誌を読みながらそんなことを考えていた時,そういえば,「Revolver」は再発盤が出ていたことを思い出した。

そして,その再発盤は家の隣にあるイオンに入っているCD屋にも置いてあったこともついでに思い出し,善は急げと早速買いに出かけた。

 

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今回購入したのは,「Revolver 2CD Edition」。

 

ビートルズの楽曲の編曲を手掛けていたジョージ・マーティンの息子,ジャイルズ・マーティンらがミックスを担当したDisc1に,収録曲の別テイク等が集められたDisc2。

「Revolver 2CD Edition」

安くはなかったが,こういうスペシャル・エディションを購入してみて嬉しいのは,詳細な曲紹介や背景が記してあるライナー・ノーツや当時の貴重な写真が収録されたブック・レットが付いていることだ。

ブック・レットから,当時のメンバーの写真を数枚紹介。

John Lennon「Revolver 2CD Edition」ブックレットより

George Harrison「Revolver 2CD Edition」ブックレットより

Paul McCartney「Revolver 2CD Edition」ブックレットより

Ringo Star「Revolver 2CD Edition」ブックレットより

私は音楽好きの端くれとして,お節介ながら,もっと多くの人にビートルズのオリジナルアルバムを聴いてもらいたいという思いを持っている。

 

彼らの作品はシングルとしては大変有名で,「Hey Jude]や「Let it be」等は世界中の誰もが口ずさめる名曲だ。

 

ベスト盤としても,「1」や赤盤・青盤などが出ている。

 

しかし,それらはビートルズの本当の魅力を5%も伝えていないのだ。

 

彼らの本当の凄さは,8年間にわたってリリースした13枚のオリジナルアルバムを聴いてみて,初めて体感できる。

 

13枚が無理なら,せめて「Rubber SouL」「Revolver」White AlbumAbbey Road」の4枚だけでもいい。

 

この4枚のアルバムを聴けば,ビートルズがどれだけ先進的で,クリエイティビティに溢れていて,クールなバンドだったかを感じることができると思う。

 

その中でも,彼らがバンドとして最も脂が乗っていた時期に制作した「Revolver」スペシャル・エディションは是非ともお勧めしたい。

 

その二つの理由について述べていきたいと思う。

 

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勧める理由其の一:名盤の法則がある

今回久しぶりに,この「Revolver」を聴き返してみて,改めて気付いたことがある。

 

それは,私が個人的にビートルズの二大名作と考える「Abbey Road」との共通点が意外に多いということだ。

 

何が似ているかというと,アルバムの構造だ。

 

これらは60年代の作品なので,当然レコードでリリースされている。

レコードというのは,A面とB面があり,A面を聴き終わると盤を返すという作業を挟んで,B面を聴かなければならない。

つまり,そこで流れが変わってしまう場合が多いのだ。

 

Abbey Road」も「Revolver」も,A面はクールでいかした曲,スウィートなラブ・ソング,リンゴの牧歌的な曲やジョージの癖強めのインド音楽などが散りばめられ,多様なつくりになっている。

ところがB面になると,アルバムのクライマックスに向けた予兆というか,緊張感を感じさせる流れの中で一気にラストへなだれ込んでいくという様相になる。

 

Abbey Road」のB面後半には有名な「ポールによるメドレー」がある。

これは,メンバー間の不和により,完成させられなかった楽曲を短く編集してつなぎ,メドレーとして収録したものだ。

ポールは逆境をチャンスに変え,クリエイティブで本当に素晴らしい仕事をしている。

 

「Revolver」のB面後半というと,#11「Dr.Robert」から始まる。これはジョンの曲だ。#12「I want to tell you」はジョージ,#13「Got to get you into my life」はポール,そしてラストの「Tomorrow never knows」はジョンの曲だ。

 

つまり,3人のソングライターが書いていることになる。

別の人間が書いたとは思えないほどに,このラストへ向けた4曲の一体感には凄まじいものがある。

 

ポップな曲も派手な曲も有名曲もないが,しっかりと腰が据わっていて,緊張感がバリバリに漲っている。

クライマックスへ向けて,完璧な助走(#11~13)とテイク・オフ(#14)を聴かせてくれる。

 

こんな完璧過ぎる構成を3人によるソングライターでつくってしまうのだから,当時のビートルズのポテンシャルとチームワークは,キャリアを通じて最も充実していたのではないか。

 

 

勧める理由其の二:別テイクの内容が素晴らしい

このスペシャル・エディションは何がスペシャルかと言うと,音質の向上とともに,別テイクの秘蔵収録曲の存在がある。

 

こういう,別テイクものとかデモ音源って,結構再発盤を買えばボーナス・トラックなどに付いてくるのだが,大体がアコースティックバージョンになっていて,今一つなパッとしないイメージが強い。

 

特にオアシスなんかはそうで,リアムに歌わせる前にノエルがアコギでとりあえず歌ってみました的なテイクが非常に多い。

 

それはそれで素朴な感じがして悪くは無いのだけど,「やっつけ感」が強くなるのは否めない。

 

ところが,この「Revolver」のスペシャル・エディションが面白いのは,本当にあれこれ試行錯誤して録った中で,アルバムに収録するバージョンを選んできた過程が見えるようなリアルさがあるところだ。

 

例えば,アルバムのラストを飾る名曲「Tomorrow never knows」。

 

ポップな要素はゼロだが,渦に巻き込まれるように,聴けば聴くほどその世界に惹き込まれていくような曲だ。

 

ドラッグをやったことはないけど,その影響下にあったことを想像してしまうような,中毒性のある曲。

 

今回の「スペシャル・エディション」ではディスク2にこの「Tomorrow never knows」のテイク1が収録されていたので聴いてみたが,オリジナルと全く異なるテンポに面食らった。

 

テイク1バージョンは,アルバム「Magical Mystery Tour」に収録された「The fool on the hill」に雰囲気が似ている。

ジョンが作った,幽霊が出てきそうで不気味な曲だ。

 

そんな,幽霊が出そうで不気味な「The fool on the hill」的な「Tomorrow never knows」は,幾度ものテイクを重ねた結果,不穏で中毒的なクライマックス・ソングに生まれ変わった。

 

そうした名曲へ向けた試行錯誤の変遷が立体的に掴めるというのは,スペシャル・エディションならではの楽しみでもある。

 


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終わりに

ここまで散々「Revolver」愛について語ってきました。

 

この作品は,私がビートルズにのめり込むきっかけになった作品なのでつい興に乗って,筆が進んでしまいました。

 

20代前半で出会ってから,iPodに入れて100回以上は再生して聴きました。

今回のスペシャル・エディションでも既に10回以上聴いています。

 

名盤というのは,何回聴いてもいいものです。

 

私はどちらかと言えば,後期(66年以降)の作品が好きだが,

「いやいやビートルズの真の魅力は前期にこそあり!」

と言われる方もおられるだろう。

 

勿論,私だって「With the Beatles」や「Beatles for sale」は大好きだ。

 

あなたが好きな,ビートルズのアルバム,曲は何ですか?

 

よかったら教えてください。

 

George and John「Revolver 2CD Edition」ブックレットより

 

 

 

もしもロック・フェスを主催するなら

前回の記事を書いたとき,いつもブログを通して交流させてもらっている服地パイセンさんから,

「もしもsisoaロックフェスを主催するなら,どんなラインナップにしますか?」

という面白いお題をいただいていた。

 

それで,ここ数日自分が主催するロックフェスのラインナップや会場などについて,あれこれ思いを巡らしていた。

 

こういう空想をするのは実に楽しい。

しかし,実際にやってみて思うのは,フェスのラインナップを決めるというのは実に難しいということだ。

 

というのも,好きなアーティストばかり呼んでいると,ヘッドライナー級ばかりを並べることになり,非常にバランスが悪くなってしまうのだ。

洋邦,若手ベテランをバランスよく配置し,更にジャンルにも配慮していく必要がある。

 

そのようなあれこれを考えながら,決定したのが以下のラインナップだ。

空想のSisoa Rock Festival'23タイムテーブル

詳細についてはこの後詳しく解説していこうと思う。

 

ところで,会場には全国的にも有名になりつつある福岡の観光地,糸島に程近い今津運動公園を選んだ。

ここは私の家の近くにあり,よく子どもたちを連れて遊びに行く場所なのだが,非常に広大な敷地面積を誇る公園だ。

 

それもそのはず,この場所は公園として利用される前はゴミの埋め立て場だった。

臭気や有害物質を取り除く埋立方法である「福岡方式」で埋め立てられ,跡地が運動公園となったのだ。

 

Sisoa Rock Festival’23会場図(今津運動公園HPより引用)

もとがゴミの埋め立て地であったとは思えないほど,緑に溢れていて清潔な公園だ。

 

この公園には広い野球場や芝生広場があるので,そちらをライブ会場にして,さらに野球コートを四面取れる広大な多目的広場をキャンプサイトに見立てる。

 

駐車場にもかなりの台数を収容可能だ。

 

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メインステージ:BaseballFieldラインナップ

BaseballField(今津運動公園HPより引用)

メインステージとなる野球場は,フィールドに加えスタンドにも収容可能なので,大規模な人出にも対応ができるはずだ。

 

このメイン,ベースボールフィールドのヘッドライナーに選んだのが,アークティック・モンキーズ

 

デビュー時から破格のロック・バンドだった彼らは,2007年のサマソニでは10代にして初のヘッドライナーを務めた。

その後,全米・全英一位に輝くなど,ロックバンドとして頂点を極めた彼らは,その音楽性をさらに広げた新作でもその充実ぶりを存分に見せつけてくれた。

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トリ前には,The1975をチョイス。

私が,いまヘビロテにしているのが彼らの最新作「外国語での言葉遊び」だ。

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今年最後になって,おそらく今年最多再生回数を更新するアルバムになりそうだ。

彼らのもうエバーグリーンな王道UKサウンドは,是非野外の満天の星空の下聴いてみたい。

 

 

そして,世界的なフェスではヘッドライナーでの出演も当たり前で,この日本での知名度も抜群なリアム・ギャラガーは,トリの二つ前。

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新作ではジャンルにとらわれない幅広い音楽性を開拓し,新境地を見せたリアム。

今年はネバワースの単独公演を大成功させるなど,復活を遂げたリアムの勇姿を是非見てみたい。

 

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ダンスステージ:AthleticFieldラインナップ

AthleticField(今津運動公園HPより引用)

ダンスステージは,アスレチック・フィールドと命名

ここには子供用アスレチック広場と,広大な芝生広場がある。

野外の広場でダンスミュージックを聴きたい!というのは積年の念願。

 

ここアスレチック・フィールドのヘッドライナーは,ベースメント・ジャックス

私は若い頃参戦したフジロックの最後,クロージング・アクトとして出てきた彼らのステージが強く印象に残っている。

 

即効性のあるキラー・チューンの数々。

初めて聴く曲ばかりなのに,体を動かさずにはいられなかった。 

 

当ブログではまだ触れたことがなかったが,実は最も愛聴するダンス・アクトの一つ。

 

 

そして,トリ前がザ・チェインスモーカーズ

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チェンスモが今年春にリリースした新作は,ほどよく枯れた侘び寂びのダンス・チューン連発で,個人的には前期のベストアルバム。

 

トリ二つ前には,大ベテランのプライマル・スクリームをブッキング!

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プライマル・スクリームは大好きなバンドだ。

ロック,ソウル,ダンス。

カメレオンのように様々な音楽性を変化させながら,エキサイティングな作品をつくり続けるレジェンドだ。

 

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屋内ステージ:GymStageラインナップ

GymStage(今津運動公園HPより引用)

唯一の屋内ステージ,ジムステージのヘッドライナーは,ゴリラズ

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ブラーのフロントマン,デーモンが中心となって結成された覆面バンドだ。

ヒップホップを基盤にしながら,デーモンの本職であるロックのテイストも絶妙にブレンドし,ハイセンスな楽曲とプロモーションを展開し続ける。

 

 

トリ前には,ニュー・オーダー

80年代から活動している大ベテラン。

英国らしく,曇り空を連想する知的なダンス・サウンドは,後進に与えた影響も計り知れない。

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そして,トリ二つ前に満を持してのスピッツ

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スピッツ愛については当ブログで何度も語ってきた。

実はまだスピッツのライブは観たことがない。

一度は観ておきたいバンドの一つだ。

 

それにしても,スピッツクラスがこの位置,この時間帯なのだから,贅沢極まりないフェスだ。

もし本当に実現したら,裏のリアムにすべきか,プライマルにすべきか,真剣に悩むだろう。

 

でも,まだ観たことないのはスピッツなので,スピッツを選ぶだろうな。

 

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ということで,空想ロックフェスを主催してみました。

想像以上に楽しめました。

 

でも,こんなラインナップが実現するとしたら,どれも観たくて困ってしまうだろう。

 

やはり,フェスは行ってナンボ。

来年こそは,フェスとは言わないけど,久しぶりにライブくらいは行きたいものです。

 

最後まで妄想にお付き合いいただき,ありがとうございました。

 

 


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「音楽と服」が勝手に選ぶ2022年アーティスト・ベストドレッサー

年の瀬も押し迫ってきました。

 

今年はここ数年になくベテランや若手アーティストの新作に多く触れた一年になった。

 

その中から,勝手にベストドレッサーを選出してみた。

 

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1位 藤井風

若干ミーハーな気もしないでもないけど,1位は藤井風くん。

 

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勿論音楽も好きなんだけど,彼のファッションに関しては昨年の紅白のときから気になっていた。

 

部屋着のようにリラックスした雰囲気のグレイ上下に,足元はファーのようにもっこりボリュームあるスリッパ。

その格好で実家の倉庫でピアノを弾きまくっていたかと思えば,そのまんまの格好でNHKホールに登場するというサプライズ。

 

実家での映像は実は録画だったというオチですね。

 

このブックレットの写真も,つきはぎのセットアップのところどころにアクセントカラーの赤や紫を散りばめ,目の上にペイントを施して差し色にするという芸の細やかさ!

 

アルバムも普通によかったです。

節回しとか歌詞なんかに一癖あって(しかも言葉選びのセンスが素晴らしい),それでも一級のポップアルバムに仕上がってるから不思議。

 

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2位 アークティック・モンキーズ

2位はアークティック・モンキーズ

こちらは王道なロッカー・ファッションか。

 

でも,デビュー当初から彼らの活動を追っている身としては,その音楽的成長とともに変化してきたファッションに注目してしまう。

 

10代でデビューした頃のアレックス・ターナー(フロントマン)は,ポロシャツにジーンズのどこにでもいる学生のような風貌だった。

それが2013年「AM」の頃(20代後半)にはロカビリースタイルになり,現在は腕まくりをしたシャツを大きくはだけて大人の色気を醸し出すイケオジになった。

 

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新作でも才気が爆発している。

静謐さと熱量がぶつかり合うような作品だ。

 

年明けには来日も決定しているアークティック・モンキーズ

 

コロナ禍以降初めての日本のステージで,アレックスらがどのようなステージを見せてくれるのか,楽しみだ。

 

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3位 ハリー・スタイルズ

絶賛爆売れ中のハリー・スタイルズ

 

私も年末に「ロッキング・オン」の年間ベストを読んでから「ハリーズ・ハウス」を購入した。

 

頭の中を空っぽにして聴ける軽やかなポップ・ソングの連打で,タイトル通りに一人で部屋に聴くのにちょうどいい。

 

ジャケットに写るハリーの格好は目を引く。

トップスは,襟の形やシルエットが中性的な雰囲気を醸し出すフレア調のシャツ。

 

この特徴的なトップスに合わせているボトムスのシルエットが秀逸。

70年代に流行ったベルボトムっぽいけど太腿部分もゆったりした造りになっていて,実は今っぽいデザインだ。

 

自分では絶対に着れないアイテムだけど,スーパースターならではですね。

 

シングル「アズ・イット・ワズ」はなかなか爽快な一曲です。

 


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ハリー・スタイルズのPVは初めて観たけど,印象としてデヴィッド・ボウイっぽいなあと感じた。

 

似せているというより,色使いとかファッションの感覚が似ているというか。

中性的なところなんかだと思うけど。

 

まあ,ハリー・スタイルズのほうがだいぶ男臭いですけどね。

 

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ということで,「音楽と服」が勝手に選ぶ2022年アーティスト・ベストドレッサーでした。

 

本当は他にも取り上げたいアーティストはたくさんいました。

 

飾り気のないブラウンのスウェット上下姿でアルバムのアートワークを飾っていた宇多田ヒカル

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ハットにサングラス,上半身裸に手袋,ボクシングパンツにブーツという(いつも通り)奇抜な姿でアルバムジャケットに収まっていたアンソニーレッチリ)など。

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もし,皆さんが

「このアーティストのファッション,気になってるんだけど…」というものがありましたら,ぜひ教えてください。

 

さ,年末ですね。

早く仕事を片付けて,年越しモードに突入したいところです。

 

ロックの「思春期性」が凝縮されたTHE 1975「外国語での言葉遊び」

師走の週末,博多駅は人で溢れ返っていた。

 

今年の3月までは3年間毎日のように通った駅構内に,足を踏み入れた。

まだ一年経っていないが,ここを通っていた日々が遠い過去のことのように思える。

 

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腕時計を確認すると,17時45分。

時間まではまだ30分ある。

大学の部活の同期と飲む約束をしていた。

 

外での飲み会は約一年振り。

そして,場所が博多駅横のビルだったので,予め予定より少し早く行き,阪急に入っているタワレコに寄ろうと決めていた。

 

こういう機会がないと,タワレコに行くこともない。

家の横のイオンに入っているCD屋には,洋楽のCDと言えばイーグルスストーンズなど所謂「大人のロック」がほとんど。

Amazonでだいたいの物は買えるが,やはり自分の目で作品を見て,視聴して選ぶという体験に勝るものはない。

 

ということで,短い滞在時間ではあったが,タワレコにてTHE 1975の「外国語での言葉遊び」を購入。

 

この作品は「ロッキング・オン」が選ぶ2022年年間ベストアルバムにも選出されていた。

ところで,タワレコの袋が少し薄くなっている気がした。

昔はこんなに避けてなかったような。

 

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早朝5時,二日酔いの脳天を衝く極上メロディー

久しぶりの集合で思い出話からこれからの話まで四方山話は尽きず,結局終電近く,日付が変わる頃に帰宅。

 

シャワーを浴びたあと,いつもは3時にセットするアラームを5時にセットして就寝。

 

翌朝,予定通り5時に起きる。

頭が少し痛むが,二日酔いだろう。

寝ぼけ眼で米をとぎ,炊飯器にセットする。

 

昨日のバッグに入れていたタワレコの袋から買ってきたCDを取り出し,仕事部屋にあるチボリのオーディオにセットする。

 

二曲目の「Happiness」があまりにキャッチーで,親密で,まさに私が好きな「UKのメランコリックなバンド」ど真ん中路線だったので,思わず仕事の手を止めて

「なんだよこれすげーな。」

と呟いていた。

 

曲の後半鳴り響くサックスの音色は,高らかにアルバムの始まりを告げる。

デヴィッド・ボウイが自身のラストアルバムで,サックスを終末的雰囲気に生かしたことは全く逆の方法論。

 

続く三曲目,「Looking For Somebody」はまさしく80年代ネオアコの現代版。

わかりやすいダンスサウンドを疾走感たっぷりに聴かせる。

 

これは久しぶりに出会った,直球どストライクの作品だ。

 

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イギリスの伝統的なバンドへのリスペクトが根底にあった

 

83年生まれの私には,物心がつくかつかないかの頃にラジオから流れてきていた,ひたすらに明るい80年代ポップソングのリズムが染み付いていて,たまにこういう曲(「H appiness」のような)聴くと無性に懐かしさを覚える。

 

私はTHE 1975というバンドのアルバムを初めて聴いたのだけど,彼らは「外国語での言葉遊び」(今作)「仮定形に関する注釈」(前作)という邦題が示すように,社会に対してシニカルなメッセージを内包された作品を提示し続けているイメージが強い。

 

ただ,その音楽に初めて触れて思うのは,彼らがザ・スミススタイル・カウンシルなどイギリスの伝説的なバンドに対して敬意をもち,自らの音楽的ルーツを自分たちなりに解釈し,咀嚼した上で「自分の言葉」で語っているという点だ。

 

ここで重要なのは「解釈し,咀嚼した上で」という点。

ただ雰囲気を真似ただけでは単なるギミックとなってしまい,そこには空虚な音しか生まれない。

 

THE 1975のフロントマン,マシュー・ヒーリーは冒頭のバンド名を冠した曲「THE 1975」で,自らのキャリアを自虐的に振り返っている。

 

自分の20代が情けない 仕事のコツを覚えながら

考えるより先に口に出してしまいがちだった

"ポストモダンなレンズを通して僕らは人生を経験している"

ああ,はっきり言おう!!調子の悪さを美学に仕立て上げ

ファンが乗り気な間に自分の売れると思う部分を利用し尽くしているんだよ

 

アーティストとしてのエゴをこれでもかというくらい真っ正直に歌詞にしていて痛々しくもある。

不器用だが,非常に真摯だ。

 

こういうバンドは信用に足る。

 

この「外国語での言葉遊び」は5作目ということ。

過去のディスコグラフィーを遡って聴いてみるだけの価値は大いにある。

 

ということで,最後に紹介するのは「Happiness」。

ロックのもつ「思春期性」をたっぷりと詰め込んだ,ポップソングの極地です。

 


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電気が走る職場

「電気が走る。」

 

これは比喩ではない。

 

言葉通りの意味である。

 

私の職場の話だ。

 



春から,

「うちの職場は静電気がヤバい」

と噂には聞いていた。

 

春から夏にかけては,湿気のおかげかさほどではなかったが,寒さが厳しくなるにつれ,その「ヤバさ」の全貌が露わになってきた。

 

まず朝。

 

タイムカードを処理するPCに触れた途端,パチっとなる。

 

自分のデスクに座り,引き出しに手をかけた途端パチっとなる。

 

コピー機の上蓋に手をかけた途端バチっとなる。

 

水道の蛇口をひねろうとした途端にバチっとなる。

 

同僚に書類を渡そうと,手を触れた途端パチっとなる。

 

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ともかく,金属系のもの(たまに人)に触れるだけで,高い頻度で静電気が走るのだ。

 

指先に少し弾けた感覚だけの時もあれば,骨まで響く感電レベルの時もある。

 

最近では,毎日

「パチッ」

「痛っ!」

と誰かが声を上げるのが日常茶飯事になってしまっている。

 

見ていると,程度の差こそあれ皆一様に被害には遭っているようだ。

 

何でも,フロアの床部分の素材がこの静電気の原因らしい。

 

事実,板張りになっている隣のスペースでは静電気は起こらず,オフィススペースだけが静電気の巣になっているのだ。

 

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だから最近では私も,不用意に何かに触れることは避け,その前に必ず絶縁体(木の机など)を触った後,まずはグーで軽く触れてからボタンを押したり物をつかんだりするようにしている。

 

ここまで念を入れても,グーにしている手にバチっとくることもある。

 

オフィスのあちこちに貼ってある,「静電気除去シート」に手を触れてからコピー機などに触れても,たまにパチっとくるのだ。

 

それならばと,コンビニで「グリップ」を購入してみた。

「グリップ」とは,軍手の指部分がゴムで覆われている,作業用手袋だ。

さすがにゴムで覆われた物を付けていれば,電気を通すことはなかろう。

 

グリップをつけて作業着姿で仕事をする私を見て,数人の同僚が笑いながら,

コピー機の修理業者かと思った。」

と声をかけて行った。

 

こちとらふざけてるわけではない。

感電しないための必死の抗戦なのだ。

 

手袋をしているので多少手先の器用さには欠けるが,これで静電気を防げるなら安いものだ。

 

ところが,コピーを取っている最中に何となく横にあった鉄製のデスクの縁に触れると,残念なことにバチっときてしまった。

 

ここの静電気は絶縁体すら通すらしい。

 

実際,どういう原理で電気がゴムを通り抜けてくるだろうか。

昔,ゴムは電気通さないと習った覚えがあるのだが,あれは何だったのだろう。

 

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こんなオフィスで働くストレスは思ったより大きい。 

 

いっそのこと床板を全部張り替えて欲しいと上にお願いしているのだが,莫大な費用がかかるため厳しいとのこと。

 

莫大な費用をかけてくれても全然いいので,早急に何とかしてほしいものなのだけど。

 

しかも,昨年度から在籍している同僚が言うには,ピークはまだ先で,二月くらいに最盛期を迎えるそうだ。

 

今より感電しやすいって,最早恐ろしさを通り越して,絶望しかないんですけど。

 

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そういえば,以前乗っていた車の乗り降りをするとき(特に降りる時)に,よくバチっとやられていた。

 

で,それは先輩からのアドバイスでドアを内側から開けて降りる際に,ドア縁を持ったまま降りたらいいということで試してみたら,静電気にやられることもなくなり,問題は解決した。

 

多分,絶縁体(ドア縁のプラスチック部分)に触れながら乗り降りをすることで,静電気を防ぐことができたのだろう。

 

それと同じ原理で,絶縁体に常に触れた状態であるならば,今の職場でも静電気を防ぐことができるのかもしれない。

 

先述の「グリップ」着用時にバチっとやられた時には,確かにグリップのゴム部分と指先の部分にわずかな隙間ができていた。

 

そうなると,木の棒かなんかを常に持ち歩くか…。

 

いや,でも両手に木の棒を持った人がウロウロしている職場なんて,怖いか。

それに木の棒を持ったまま細かな作業はできない。

 

うーむ。

 

何か,よい解決方法を知っている方はアドバイスをいただけたら有難いです。

 


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